連れ去られた桜。いなりとウルフの争い。
魚に連れ去られ、海の深い部分まで来てしまった桜。
そこで出会ったのは・・・?
そして、桜が連れ去られた後のいなりとウルフ。
二人の間を、険悪な雰囲気が包む。
「桜っ!!」
いなりくんが剣で攻撃しようとするけど。
慌てている、いなりくんの剣は魚にかすりもしない。
いなりくんが潜ろうとするけど、ウルフさんに引き止められる。
・・・だよね、そうだよね。
死んじゃうもん。
ウルフさんが止めて正解。
「・・・嫌だ。」
太陽の光が遠ざかって、あたりは青と黒が混ざり出す。
どうにか、抜け出せないかな。
そう思ったけど、できることがない。
この魚を撃ったところで、戻れるかどうかすらわからない。
右も左も、上も下もわからない。
自分がいた場所なんて、どこにあったかもわからない。
ぐるぐる回されて、目が回る。
襟が首にかかって、息苦しい。
・・・なのに、苦しくない。
もしかして、死なない?
いなりくん、嘘ついた・・・?
・・・なんで嘘?
嘘なら、死なないはず!
その考えにハッとして、私は魚を銃で撃つ。
陶器でできたその体は、バラバラに砕けた。
「死なない・・・?」
暗い。とにかく、暗い。
上に戻ったところで、いなりくんたちがいる場所に出られるわけじゃない。
まだ、安心できない。
死ぬ可能性はまだまだあるから、死ぬ前にできることをやろう。
・・・でも、『できること』って?
「いや!探すんだ!自分!」
自分の声ばかりが、海の中に響く。
・・・ちょっと寂しい。
いなりくん、きっと助けてくれる・・・よね?
すると、少し遠くにボウッと光が灯った。
「いなりくん・・・?」
でも、返事はない。
・・・白い魚かもしれない。
銃を構え、光に近づいていく。
「どうして・・・?」
うっすらと声が聞こえる。
「・・・誰?」
私は、そう問いかける。
そしてゆっくりと近づいていく。
だんだんと輪郭がはっきりして、うっすらとだけど霊力も感じられる。
「僕以外にも、ここにいる人っているんですね・・・。」
この声。聞いたことある。
光が薄れ、顔が見えてくる。
って、え・・・!
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「桜っ」
いなりは、海の中に手を伸ばした。
暗闇の中に飲み込まれていく桜。
しかし、手を伸ばそうとももちろん届かない。
「いなり、諦めろ。」
ウルフは落ち込む様子もなく、いなりを見た。
「だって!桜が!」
「俺は別に『悲しくない』と言ったわけではない。」
それより、とウルフがいなりに指を指す。
「いなり・・・。」
「何??」
いなりの目に涙が浮かぶ。
「お前、さっき使った氷の技。」
「使ったよ?それは何?」
「禁止された技、だよな。昔、それで地球を丸ごと氷で包んだやつがいた。だから禁止された。なぜ使ってる?」
ウルフはその青い目でいなりのことを睨む。
「さぁね。『必要』ってことかな。」
涙が波に流される。
ウルフは一層、いなりのことを睨む。
いなりも負けじと睨み返す。
「四葉。」
ウルフが放った一言に、いなりの耳がピクリと動いた。
水の流れる音だけが二人の間を流れた。
「ふん。あたり、ということか。」
「・・・なんのことか俺は知らないね。」
冷静にいなりは振る舞おうとするが、動揺が丸見えだ。
「深く潜っても死ぬことはない。なぜ嘘をついた?」
「・・・見られたらまずいことがあるからね。」
「桜に嘘がバレたらどうするつもりだ?」
「桜は・・・きっと、許してくれると思うよ!」
「許してくれないかもだがな。」
ウルフは挑発的に言う。
「・・・やる気なの?」
「うん。とでも言うと思うか?」
ウルフはパーカーのフードを被り直す。
「俺は戦うなんて真っ平。そっちが仕掛けてくるなら、こっちには『うるる』がいる。」
「平和に行こう。ウルフ?」
怒りを込めた笑みを見せながら、手を差し出すいなり。
しかし、その手をウルフは払いのける。
バシン、
と手と手が当たる音がなる。
「お前と仲良くする気はない。ただ、覚えとけ。俺はお前の過去も、秘密も、罪も知っている。」
「・・・特定されたらしょうがないね。」
いなりは払い除けられて、赤くなった手を撫でる。
「おっけ〜。そっちがそうなら。」
いなりはより一層、笑った。
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「いなり、くん・・・?いなりくんなの!?」
薄れた光の中には、いなりくんがいた。
・・・でも。
耳も、尻尾もない。
ガリガリに痩せている。
顔はやつれている。
あの、元気はつらつ!
という感じでは全くない。
・・・本当にいなりくん?
いなりくんに変装した敵、ではないよね・・・。
警戒は緩めない。
「あの・・・?」
その子は、じっと私の方を見ている。
「いなりくん?でも、耳も尻尾もないし・・・。」
「いなり・・・?誰、それ?」
声も少し違う。
その子は首を傾げて言った。
「本当に、知らないの?」
「知らないよ!僕は『いなり』ではない!」
・・・僕?
いなりくんの一人称は、『俺』だ。
僕・・・。
胸がざわつく。
「もしかして、あなたは時雨くん?」
「なんで知ってんの!?僕の名前!」
やっぱり、時雨くん。
でも、なんでこんなところに・・・。
時雨くんは、霊力がたくさんあって。穏やかな目で。そしてもっと背が高い、お兄ちゃん大好きな時雨くん。
私が知っている時雨くんと、顔は同じなのに・・・まるで別人。
こんなに痩せては・・・いないはず。
いなりくんより、少し低いぐらいの背の高さ。
というか、なんでこんな世界の末端に・・・。
「なんでここにいるの??どうして、そんなに痩せてるの??」
その子は、自分の体を眺める。
「・・・病気なんです。多分、僕は夢を見ているんでしょうね。」
すると、時雨くんは急に俯いて泣き出した。
「!?どうしたの!?私、何か悪いこと言った!?言ったなら謝る!ごめん!」
「ち、違うんです・・・!」
「・・・何かあったの?」
「あ、あなたは。あなたは世界で一番、大切なものを失ったらどう思います?」
急な質問。
「え・・・?悲しいかな。」
時雨くんからの質問に、頭の中をいろんな人が浮かんだ。
家族。友達。先生。親戚。そして、いなりくんやウルフさん。
「失っちゃったんです、よね・・・。つい、昨日。」
「何を・・・・?」
大体、予想はついている。
いなりくんの方が先に死んだ。時雨くんは遅く死んだ。
だから、身長に差がある。
「お兄ちゃん。」
時雨くんは、上を向く。
その目には涙が溜まっている。
「時雨くん、あなたがいるのはいつ?」
「1月、7日です。・・・こんな夢、初めてです。」
この場所は、夢を見る場所ということなのかな・・・。
「わかった・・・。」
すると、急に時雨くんの体が薄く、ぼやけ始めた。
「時雨くん!?」
「あ・・・。目覚める時が、来たみたいですね。」
時雨くんは悲しそうな顔をする。
「時雨くん・・・!お兄ちゃんの名前は??」
どんどん体が透けていく時雨くん。
「お兄ちゃんの名前は・・・。」
そこで、完全に時雨くんの姿は消えてしまった。
「・・・教えてよ。」
人の秘密を探るのは、よくないことかもしれない。
なのに、知られずにはいられないのは・・・・どうして、だろう?
「桜っ!」
上を向くと、いなりくんが潜ってきていた。
「意外と早く見つかるもんだな。」
ウルフさんも上から降りてくる。
「いなりくん!ウルフさん!」
「よかった・・・!見つかって。」
いなりくんはにいっと笑う。
「ごめんな。」
すると、急に服を引っ張られた。
「ちょっと・・・いなりくん?」
すると、ぎゅっと抱きしめられた。
その体は、ほんのわずかだけどふるふると震えてた。
「い、いや・・・そんな。大丈夫だって。見つかったし!」
「・・・怖かった。あと、嘘ついてごめん。」
いなりくんは、背中に手を回したまま聞いてくる。
「・・・いいよ?別に。」
「何もみてない?」
「・・・・・・・何も見てない。」
本当のことを言うかどうか、悩んだ。
すると、口から飛び出たのは『嘘』。
心が痛い。
ほんとのこと、言ってもいいんじゃないかな。
そう思ったけど。
心の中で『やめろ』と言ってくる自分がいる。
「・・・いちゃつくのは構わないが、一ついいか?
ハッとしてウルフさんの方を見る。
・・・抱きしめられている!?
今更だけど、鼓動が早くなっているのを感じる。
・・・こんなの、初めてだよ。
一旦、いなりくんから離れる。
「向こうの方向から霊力を感じる。」
ウルフさんが、私たちの目の前に歩いてくる。
「おそらく、あの魚だ。」
「謎なのは、なんでここに『生命』が存在するか。だよね。」
静かな声で、いなりくんは告げる。
「桜は知っているのか?ここに生命が存在する理由。
「知りません!」
「ここは、本来生命が存在する場所ではない。眠る人間の魂のみが漂う場所。」
・・・やっぱり。
あの時雨くんは、『生きている』時の時雨くん。
いなりくんが死んだ日は・・・1月7日。
ちょっとだけ。ちょっとだけ詳しくなれた。
いなりくんは、若くして亡くなってしまった子。
恨みと願いを持って守護霊になった子。
「螺旋で連れてこられる分にはしょうがないけど・・・・あの魚は、一体どうやってきた?」
いなりくんは首を傾げて考え込む。
「それは後でいいな。」
ウルフさんがそう言った途端、水の流れがゆらりと変わった。
・・・魚が現れる前兆!!
思った通り、数秒もしないうちに大きく流れが変わって渦ができた。
さっきの倍の数の魚が見える。
「さて・・・。今度は、守るから。」
いつの間にか剣を構えているいなりくん。
ウルフさんも、警戒している。
私も銃を構える。
「・・・気をつけるから。今度こそ。」
「さ、始まりだ。」
いなりくんは、一番最初に襲いかかってきた魚の頭を切り落とした。
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