世界の末端と白の魚
いなりくんは、謎なことにウルフさんを稲荷神社へ連れてきた。
8月に入って、とてつもなく暑い!
溶けちゃいそう。
すると、螺旋が現れて・・・。
気づいた時には海の底!?
「んああ、暑いいいい」
私はギラギラと照りつける太陽に目を細める。
「なんで俺を連れてきた・・・。」
8月に入り、夏本番だ。
あれからアチカーニャとマツリは現れなかった。
それからは、平和に各々やっているようだけど・・・。
「しょーがないじゃん!たまには紫外線浴びなよ〜〜!」
願いと恨みを持って守護霊になったいなりくんが言う。
秘密を教えてもらった日から、大きく変わったことはない。
いつも通りに放課後、稲荷神社に来て。
影を倒して。
「ね!桜!」
「う、うん・・・。ウルフさん、暑くないんですか?」
いなりくんは何故かウルフさんを稲荷神社へ連れてきた。
年がら年中、長袖パーカーのウルフさんはとてつもなく暑そうだ。
「なんで俺なんだよ・・・。うるるか蓮華でよかっただろ。」
暑い。無理。帰りたい。と言いたげなウルフさん。
「え〜〜。だって、蓮華は幽霊警察の本部だし。うるるは仕事でしょ?」
「たくっあいつ逃げやがって・・・。」
時々、こういうとてつもなく謎行為をするいなりくん。
平和だな〜〜。
フォン
「・・・?なんの音?」
電子音のような音がした。
「あっっっ!」
立ち上がったいなりくんが、呆然と何かを指差している。
「・・・螺旋だ!」
ウルフさんも『それ』を目にした。
時雨くんが祭りを呼び寄せるために使ったもの、『螺旋』
暴風が吹いて、吸い込まれそうになる。
「なんで、ここに!?時雨くんが出したの!?」
「いや、誰かが出したとは限らない。勝手に発生することもある。」
ウルフさんが答えてくれる。
声は冷静。
だけど、表情は焦りを浮かべている。
ジリジリ、と私たちの足は螺旋に向かって引っ張られ始める。
「いなりくん!!これどこ行くの!」
「わかんない!この世のどこかか冥界か、裏世界か世界の末端!!」
「世界の末端て!?」
その間にも、螺旋に引っ張られる。
巨大な掃除機のようだ。
・・・って、私たちはゴミじゃありません!
「・・・やべっ」
隣を見ると、ウルフさんの体が浮き始めている。
すぐさまいなりくんが手を掴んで引き寄せる。
ウルフさんの体は宙を舞い、その勢いでいなりくんも近づいていく。
ギュイイイインン
螺旋はそんな不気味な音を立てながら吸い込む力を強めてくる。
「いなりくん!!」
いなりくんのしっぽが風に煽られてブンブンと動いている。
私の髪の毛もあっちこっちを舞う。
「抜け出す方法は!?」
「今のところない!!」
ウルフさんは空中で答える。
フワリ
いなりくんの足が浮き始める。
ウルフさんの体重分まで支えているのは無理だったみたいだ。
そのまま、二人は螺旋の中へ吸い込まれてしまう。
「ちょっと、待って!!」
螺旋は小さくなり始める。
・・・ここから先はどうなってるの?安全なの?
そう思ったけど、あの二人の命の方が大事だ!
いざという時は、いざという時は・・・いなりくんが守ってくれるはず!!
「い、行くからね!」
誰もいないのに、一人でそう言って私は螺旋に飛び込んだ。
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ザザーン ザザーン
「桜!桜!」
「・・・ん?」
いなりくんの声と、淡い太陽の光、そして海の波の音で私は目を覚ました。
・・・海!?
「えっ!?なんで、海!?え!?へ!?溺れます!」
「落ち着いて、桜!」
下を見ると、地面がない。
「え!?なんで立ててんのこっわ!!地面ないのなんで!?」
ほんとなんで!?やばいこわい!!
待て、自分・・・。冷静に考えよう!
今、騒いだけど苦しくない。
濡れた感じもしない。
立てているのは謎。
でも、しっかりと安定しているだけましだ!!
「まさか、桜も螺旋に飛び込んでくるとはな。」
落ち着いたところで、ウルフさんは腕を組みながらそう言った。
海の中・・・だからなのか、暑くはない。
ひんやりと涼しい。
「ここは?どこ、なの?」
「世界の末端だね。」
いなりくんは足を浮かせて見せる。
水の中みたいに、重力も少ない。
私も、足を浮かせてみる。
立たなくっても、浮いていられる。
ゆっくりと沈んでいく。
そう言うとこまで完全に海だ。
「世界の末端ってだからどこなの!?」
「どこまでも続く、不思議な世界って覚えといて。上下左右、どこに行っても終わりがない。」
「じゃあ、抜け出せられないの!?」
「抜け出せられないってことはないな。」
ウルフさんはヘッドホンを外す。
「天界に繋がる“出口“がある。」
「それを見つけたら、帰れるんですか・・・!」
「時間が経ったら死ぬけどな。」
「・・・・やばくないですかそれ!?」
ウルフさんはしれっと怖いことを言う。
・・・生命の気配がしない。
裏世界より静か。
裏世界には影がいるからね・・・。
「どうにか、タイムリミットまでにってことだね。」
いなりくんは一歩踏み出す。
「行こう。」
「うん!」
それから、しばらく歩いたけれど景色は何一つ変わらない。
「飽きた〜〜〜!!」
学園祭準備に行った時と全く同じことを言ういなりくん。
「飽き性だな!!まだ30分も歩いてないぞ!」
「まぁ、同じ景色ですもんね・・・。」
歩いても歩いても、見えるのは同じ景色。
正直言って、私も退屈だ。
慣れてきた頃、私はふと思った。
一応、ここは海の『世界の末端』。
なら・・・。
「桜!?何してんの!」
「いや、潜れるか試してる!!」
私は足をバタバタさせ、二人より少し上までくる。
そして、一気に頭を下に下げて潜る!!
するとなんと、潜れたのだ。
二人より少ししたくらいで潜るのをやめ、頭の位置を上まで戻す。
不思議と、そこにも地面の感触はあった。
二人の靴の裏が見える。
太陽の光が、ちょっと遠くなった感じ。
そして、また足をバタバタとさせて浮かんでくる。
「潜れた・・・。」
「自由にしてもいいが、あまり遠くまで行くなよ。」
はぁ〜〜〜っとため息をつくウルフさん。
・・・なんだかんだ、仲間思いだ。
「ねぇ桜。」
「何?」
「あんまり深くは行かないでね。」
「なんで?」
「死ぬよ?」
「・・・死ぬ!?」
「うん・・・だから、行かないでね。」
潜るの、楽しいのにな。
ちょっぴり残念だ。
でも、命が消えるなら・・・絶対にやりたくない!!
すると、今までとは違う方向に水が流れ始めた。
追い風ならぬ、追い波だったのが向かい波になる。
「・・・なんで?」
ポツリ、と言ったその瞬間。
ゴゴゴゴゴ
向かい波が一気に強くなった。
風のように、波が押し寄せてくる。
螺旋が出てきた時とそっくり。
「螺旋!?」
いなりくんが顔の前に手をやる。
「いや、違う。」
ウルフさんが流れの方を見る。
「なんだ、あれ・・・。」
いなりくんがポツリ、と言った。
なんと、流れの方から白い魚が大量に来たのだ。
「生命は、ここには存在しないはずだ!」
ウルフさんのパーカーが波に煽られて、大きく膨らむ。
「だから、静かだったんですね・・・。」
「ねぇ、俺たちと話し合う気はない?」
剣をいつの間にか出していたいなりくんは、その白い魚たちに尋ねる。
すると、その白い魚は大口を開けていなりくんをパクリ、と口の中へ。
「いなりくん!?」
「いなり!」
キキキン
硬いものがぶつかり合う音がした。
「話し合う気は・・・ないみたいだね?」
魚の体がバラバラに砕け散り、中からいなりくんが飛び出してくる。
助かったはいいものの、激しい流れにいなりくんは数メートル吹っ飛ばされ、ウルフさんの右斜め後ろに飛ばされた。
「いなり・・・ヒヤヒヤさせんなよ。」
ホッと安堵するウルフさん。
「それにしても、かったいね〜。あの魚の体。」
水中のおかげで、いなりくんは飛ばされても無傷だった。
いなりくんは剣を構え直して。数匹倒す。
剣が魚の体にあたるたびに、キンキンと金属音が鳴る。
「俺は戦えない。」
ウルフさんは両手を上に上げる。
私は、運のいいことに銃を持っていた。
「私も、できる限り戦います!」
ウルフさん中心に、いなりくんの援護に回ることにした。
魚たちが起こす、激しい海の流れの中。
なんとか銃を構える。
バン
一匹の魚に、命中。
やっぱり『キン』と、高い音が鳴る。
そして、銃弾が当たったところを中心に、魚の体はひび割れた。
「陶器・・・?」
ウルフさんは大きく目を見開く。
「あのひび割れ方、この魚は作り物。陶器の人形だ!」
「えなんて?」
「ちゃんと聞いとけいなり!魚は作り物だ!」
大きな水の渦に入ったまま戦っているいなりくんには、私たちの声が聞こえづらい!
「冥獣か何かですかね・・・。」
「冥獣ではないね。ただ単に、霊力を吹き込まれて動いているだけ。」
あと、4匹!
剣の先に、一匹串刺ししたまま、渦からいなりくんが出てくる。
あと3匹。
・・・私も!
バン、バン
陶器の魚が砕け散る。
あと1匹!!
「よし!」
ピシ
何かが凍るような音がした。
「いなり・・・!」
いなりくんの剣に串刺しにされていた、あの魚。
割れていないのに、動かない。
「・・・凍ってるの?」
「まぁ、ね。食いつかれそうになったからさ。」
凍った魚の口は、いなりくんの体スレスレだ。
「ま、助かった助かった・・・桜!後ろ!」
「後ろ・・・?」
後ろを振り向くと、巨大な魚の口!!
残り、1匹の魚の口!
「あっ・・・!」
避けようとする。けど、服の襟を・・・咥えられちゃう!!
「待って・・・!」
「桜!」
渦の勢いも弱まり、ウルフさんのパーカーも普通の形に戻る。
魚は、頭を下に下げる。
・・・もしかして、潜る気!?
いなりくんの目が大きく見開かられる。
待って!沈んだら、死ぬ・・・!
毎日投稿18日目!!
明日から投稿頻度下がっちゃうかもです・・・。
最低でも、2日に1回は更新できるように頑張ります!
バトルシーン、書いてて楽しかったです〜♪
ここまで読んでくれてありがとうございます!
面白い、と思っていただけたらブクマ・評価よろしくお願いします!
次話もお読みください!
今回から海中編です〜




