恨みと願い
「〜〜〜この世に恨み、または強い願いがある死者しかなれないもの。」
夕日が見守っている中。
いなりくんは、自分について一つだけ語ってくれた。
「マツリは・・・守護霊だったんだ。」
時雨くんは、『仕事があるから』と冥界へと帰っていった。
そして古民家に戻った後。
いなりくんはそうポツリと言った。
怪我を負った人は包帯を巻いたり、消毒液をつけたりしている。
傷を負っていない私は、ソファーに座っていた。
「守護霊だったって?何神社?」
1番傷が深くて、1番早く包帯を巻き終えたうるるさんが言う。
「久遠杜神社。」
「皮肉だな。平和を祈る神社だってのに。」
帰るなり、ずっとパソコンに張り付いているウルフさんが言う。
「じゃ、元々久遠と言う名前だったんだな。マツリという名前はどこで?」
背中に傷を負った先輩が言う。
けど、私は先輩の方を向けない。
なんでかって?
背中に傷があるから、今上半身が丸見えなんだよ!!
どうにか、包帯を早く巻いてくれ。
見ちゃだめだ・・・。
ここにはファンクラブの人はいない。
のに、なんだかいる気がしてならない。
いなりくんが先輩の体に包帯を巻いている。
「・・・マツリは、お賽銭を実験費に使ったから。」
「お賽銭って・・・いなりくんたちが使ってるの?」
「うん。神社が持っている霊力は、お賽銭から成るもの。その霊力で、人の願いを叶えてる。」
いなりくんが静かだと、部屋の中の空気もなんだか重い。
ガサガサ、と服を着る音がする。
包帯を巻き終えたのか、いなりくんが私の隣に座ってくる。
「それが基本の使い方。でも、マツリは霊力に変化させなかった。」
いなりくんが悔しそうに言う。
「で、お前が解雇したってわけなのね。」
うるるさんはカバーに銃弾を詰め込んでいる。
あれだけ乱射したんだ。
弾切れを起こしていないわけがない。
「とんでもない逆恨みだな。で、守護霊を辞めさせられたら霊力はなくなるはず。」
ウルフさんが椅子を回転させている。
「だから、それがわからないんだよ。」
「本来なら、どうなるの?守護霊じゃなくなったら。」
「冥界に移って普通の幽霊として暮らすはず。それか、幽霊警察に捕まる。」
「なのに、マツリとやらはこの世界に居着いているんだな。亜冥獣を生み出せるほどの霊力を持って。」
みんなは、うーんと考え込む。
・・・・だけど。
忘れているのか、遠慮しているのかはわからないけど。
禍麟という人の名前。
誰?
うるるさん、先輩はまだしも。
ウルフさんが忘れているはずがない。
きっと、みんな遠慮している。
遠慮というか・・・気遣っている。
『禍麟』
と聞いた瞬間、いなりくんの体が震えた。
いなりくんが怯える相手。
いなりくんの過去は、ウルフさんでも突き止められていないのかな・・・。
部屋を沈黙が包む。
その後、ウルフさんの調べた結果で、マツリはしっかりと冥界へと戻っていたことがわかった。
でも、その後の足取りはわからない。
いなりくんは、終始静かだった。
ムードメーカーとはこういう人なんだな。
『ムードメーカー』が話さなくなった瞬間、空気が重くなる。
そして帰り道。
赤い夕日が村全体を照らしている。
その夕日すらも謎を背負っているように見える。
そして、私はいなりくんに聞いてみた。
「いなりくん・・・禍麟って、誰?」
ピタリ、と足を止めるいなりくん。
いつも、無茶をするいなりくん。
戦っては怪我を負って。その分だけ、誰かが救われて。
最初、私はいなりくんに影から救ってもらった。
嬉しかったし、かっこよかった。
仲良くなれて嬉しかった。
・・・でも、いつ失うかわからない。
失う前に、知りたい。
いなりくんのことをわかりたい。
「いなりくん、気絶した時手が震えてたよ!禍麟って誰?教えて!」
「・・・まだわからない方がいいよ?」
「いいの!教えて!」
いなりくんと出会ってから2ヶ月は経っているのに。
・・・まだ、何も知れていない。
「じゃあ。一つだけね。」
いなりくんは、言った。
「守護霊ってのはね。この世に恨み、または強い願いがある死者しかなれないもの。」
「いなりくんは、どっち?」
「俺は・・・。」
いなりくんは、空を見てくるくると回った。
「どっちも、かな?」
そう言って、いなりくんは早足で神社へと戻っていった。
「いなりくん!」
名前を呼んでも、足を止めてくれない。
・・・・恨み?願い?
どっちも、って言ってた。
『恨み』
その言葉、その声が頭から離れない。
「教えてよ・・・。」
言うけれど、返事は返ってこない。
毎日投稿17日目!
これにて、
『亜冥獣と謎の幽霊 編』
は終わりです!
編の最終話なので短めにしました・・・。
次の編は
『海』
です!
ここまで呼んでくれてありがとうございます!!
ほんと感謝しています!!
次話もぜひぜひお読みください!
面白い、と思っていただけたら、ブクマ・評価、是非お願いしたいです!




