第3話 新しい家族
蒼一は帰ってくるなり、べビーベッドへ案内した。
リビングの隣部屋、二人の寝室だ。
「こちら苦労して組み立てた沙羅様のベッドになります。」
蒼一は自慢げに説明をした。
そんなふざけた蒼一を見て、紗理奈はにやけながら沙羅を寝かせた。
絵里奈は寝室の引き戸を開け放してキッチンに立ち、寝室を見るとベビーベッドがよく見えた。
「場所言ってなかったけどいい位置だね!」
蒼一は絵里奈の横に行き、ダイニングキッチンの前にある背の高い壁へ手を伸ばした。
「これ、よくない?」
又もやどや顔でタブレットの電源を入れ、アプリを開いた。
「ベビーカメラじゃん!」
ベビーカメラのアプリにべビーベッド全体が見えるようになっていた。
「母さんに欲しいって言ったら機能持ってきてくれたんだ!機能設置して、ほら!携帯からでも見れるんだ。」
終始はしゃぐ蒼一に絵里奈は聞いた。
「で?誤魔化してるけどその手の内にいる子の名前は?」
「目の色が印象的でアッシュブラウン?黄色っぽくて月みたいだから”ルナ”って名前にしようかなって……。どうかな?」
「無難な気がするけどいいんじゃない?この子も家族ね!」
蒼一はホッと胸を撫でおろした。
そのままベビーベッドへ戻り、沙羅にルナを見せた。
「ほらっ、ルナは沙羅と同い年だぞぉ!」
スヤスヤと寝ている沙羅に小声で伝えていた。
「……そう、偶然ね。」
紗理奈はそんな蒼一を微笑みながら小声で呟いた。だが、その目は何故か笑っていなかった。
「蒼一、ルナの健康診断は?そもそも動物病院の場所は?」
蒼一は核心を突かれて戸惑った。
『やばっ。トイレトレーニングと家の準備とゲームで忘れてた……。』
と、思いながら引きつった顔で振り返った。
「ちょっと見せて!」
と言い、ルナを細かく確認する。
すると沙羅が泣き出した。
「あ、俺は沙羅をみるよ!」
ルナを確認しながら蒼一に伝えた。
「ルナ触ったんだから手を洗ってからね?たぶんおむつ交換だと思うけど出来る?」
蒼一は手を見てキッチンに手を洗いに行きながら答えた。
「やってみる、動画で見たから何とかなる。」
手を洗ってたどたどしくおむつを替えた。紗奈里はルナを見ながら近くに持ってきていたタブレットで様子を見ていた。
『大丈夫そうね!』
◆◇
「ねぇ、これってペットカメラにもなる?」
紗理奈は自分の携帯にアプリをダウンロードしていると、ふと気になった。
「あぁ、ルナのやつは注文しているから今日届くよ?」
蒼一の謎の行動力に苦笑いをしながら思った。
(浮かれてはいるけど喜んでくれて、ちゃんとパパしてくれそうだな……。)
携帯でアプリの設定が終わり、小さな画面からでも沙羅が見れるようになった。
(画面越しでも可愛いな……。)
「ピンポーン。」
急なことに驚き、蒼一が出た。
「配達でーす。」
「はーい、玄関前に置いてもらっていいですか?」
オートロックを解除しながら答えると、インターホン越しに宅配のお兄さんが答えた。
「分かりました。サインは大丈夫なので用紙だけポストに入れておきます。」
インターホンが切れた。
「噂をすればなんとやら。ペットカメラが届いたみたいだよ?」
何故か蒼一がどや顔で絵里奈に伝えた。
「丁度セット終わるところだから、ついでにセットしちゃおう!」
蒼一は玄関へ行き、覗き穴をずっと見つめていた。
(傍から見たらただの不審者じゃん……。)
玄関の様子を見てから沙羅を覗きに行って問いかけた。
「おうちのベッドにはもう慣れたかな?」
すると玄関を勢いよく開け閉めし、ルンルンで蒼一が帰ってきた。
「ちょっと!沙羅が寝てるんだから静かにしてよ!」
小声で叱った。
「あ、ごめん……」
しょぼんとした蒼一を見て、元気付けるために伝えた。
「ほら!手元に届いたものをセットするんじゃないの?どこにする?」
蒼一は一転、ぱぁーっと笑顔になり、一直線にある場所へ向かった。
食卓テーブルの上だ。
「ここならきっと全部見えるよ?」
「まぁ、セットしてダメだったら場所変えたらいいか……。」
絵里奈もあまり考えず、二人の携帯とタブレットに追加した。
「蒼一、マイクロSDカードが入ってませんだって?」
一瞬固まり、はっと我に返った。
(ベビーカメラは親が一緒に買ってくれてたんだ……。)
思い返して失態に気付いた。
「忘れた!明日階に行く……。」
すると外に出していたルナが、ルナがベビーベッドに近付いた。
「あっ、ダメだよ。ルナ!」
ルナの行動に気付いた蒼一が慌てる。
「大丈夫。この子は傷つけないわ!」
蒼一の裾を掴み、ルナではなく蒼一を止めた。
蒼一は一度絵里奈を見て、不安そうにルナへ視線を戻した。
不安の視線などつゆ知らず、ルナはベビーベッドを登り、赤ん坊の沙羅の指を舐めた。
静かな空気が漂った。
一部始終をホッと安堵した蒼一はべビーベッドへ近づき、可愛らしい写真を撮った。
そんな状況をこっそりベビーカメラで録画をしていた紗理奈はぽそっと呟いた。
「やっぱり……。」




