第4話 沙羅の幼少期
それから沙羅とルナはすくすくと育っていった。
ルナは多くの時間を沙羅の横で寝るようになった。
「また今日も一緒に寝ているね?」
紗理奈は蒼一の言葉に微笑んで答えた。
「たまに鳴き声でびっくりして逃げてるけどね。」
「明日から仕事復帰だよ……。もっと休んで2人を見ていたいな。」
蒼一は率直に言った。
「仕方ないよ、退院して土日挟んでたから余計にね。助かったよ!」
と慰め半分と、お礼を言った。
次の日、蒼一は会社に復帰すると出産祝いと仕事量を調整してもらい、なるべく早く家へ帰れるようにしてもらった。
(これも部長様様だ!)
と部長のサポートに、蒼一は喜んでいた。
もう沙羅とルナに溺愛の蒼一は帰ることを一番に考えていた。
(紗理奈が写真とか録画してくれるけど、少しの事でも自分の目で見ていたい……。)
平日でも早い時間に家へ帰ることが出来、2人の様子を晩酌しながら眺めていた。
「ほんとに飽きないね。」
紗理奈は茶目っ気たっぷりに文句を言った。
「愛娘と兄弟だと思っている可愛い猫だぞ?一生見ていた居たいよ。」
蒼一は真剣な顔で答えた。
「おぎゃあ!」
沙羅が鳴きだすとルナは飛び起きて、沙羅の横に向かった。
「そういえば、ルナって沙羅の横にいないときって……沙羅が鳴くとすぐ行ってくれるよな?」
また不思議に思った。
「たまに泣き止んでくれるから助かってるんだよね!ルナはお兄ちゃんだから。」
紗理奈は微笑みながら答えた。
蒼一は帰りの電車の日課は日中紗理奈がとった写真と録画を見返すことになっていた。
(あれ?そういえば、これも、これもだ。帰ったら紗理奈に聞いてみよう。)
帰宅後、晩御飯を待っている間に、帰り道に気付いたことを聞いた。
「そういえばさ、今日帰りの電車で写真を見返していたんだけど。ルナって何故かいっつも沙羅の左側に移ってるんだよな。」
そんなある日の日中、沙羅が初めてちゃんとした言葉をしゃべった。
「ル、ナッ!」
紗理奈は記念に、左側にいるルナと一緒に写真を撮った。
写真を撮ることはよくあるが、時々複雑な目で2人を見ることがあったのだ。
メッセージと共に先程の写真とベビーカメラで録画された箇所を送った。
もちろん帰り道の電車で蒼一は悶えていた。
(天使!可愛すぎる……。)
傍から見たらただの変人だっただろう。
◆◇
ある夜、沙羅はお腹が空いて夜泣きをした。
横にいた、ルナが慰めて大泣きすることは無かった。
そのままベビーベッドを下りて、紗奈里の顔を舐めて起こした。
「ありがとう、ルナ。」
ルナはすぐにトイレトレーニングを終えて、この状態が当たり前になっていた。
(くすっ、蒼一はルナのおかげで今日もぐっすり寝ているね。)
紗奈里は思いながら笑った。
沙羅にミルクをあげ終わり、ベビーベッドに戻すとルナも当たり前のように沙羅の横に寝っ転がった。
沙羅は左側に寝返りを打った。
沙羅からはルナの耳と紗奈里が見える。
紗奈里が2人の、その様子を見て来ていた。
(この時何となく母は、私よりルナを見ている気がしたんだ。)
その紗奈里の目は大きく、冷静に見えた。
すると紗奈里はそっとささやいた。
「ねぇ、あなたはどこまで覚えているの?」
沙羅はそのささやきを聞いた後、ルナの温もりで眠りについた。
翌日、蒼一は夜に一度も起きることなく目を覚ました。
「おはよ、どの赤ちゃんの父親よりも幸せな朝ね。」
紗奈里は嫌味をこめて、でも微笑みながら言った。
「いや、ルナが優秀すぎる!」
蒼一は自分が買って来たこともあり、どや顔で答えた。
「ね、とてもいい子だよ……。」
ルナのゲージはもう開けっぱなしだ。
たまに中のキャットタワーで遊んだり、寝るのに使うくらいだ。
「今日の夜は御母さんが来てくれるみたいだよ?」
紗奈里はメッセージを見ながら言った。
「ほんとだね、最近よく来るよね。」
「だって初めての孫が可愛いんでしょ?毎回おもちゃとか買ってきてくれて助かるよ。」
と他愛もない会話をしていた。
蒼一が会社に行く準備が出来て、紗奈里は玄関へ見送りに来た。
「行ってらっしゃい。昨日の夜、沙羅が寝返りしていたよ?」
蒼一はドアに手を掛けて固まった。
「えっ、えぇ?なんで今言う?」
喜びたいのにいつも家を出る時間だ。
「後で時間のある時にベビーカメラの動画送っておくよ!」
蒼一は複雑な顔のまま「いってきます。」とだけ呟き家を出た。
(ふふっ、ちょっと意地悪しすぎたかな?)
紗奈里は蒼一の慌て、拗ねた状態で家を出た所を思い返して笑ってしまった。
振り返るとルナが不思議そうにリビングの扉から顔を覗かせていた。
◆◇◆◇
時は戻り、蒼一と紗理奈交互に見ながら、桜の花道を歩きながら思い返していた。
(私の記憶だけじゃなく聞いた話とか、写真とか動画を見せてもらったことある。だけど、思い返してみるとなんか不思議だな……。)
そして、歩きながら沙羅はこう思ってたのだ。
(わたしは、ルナと同じ日に生まれた。)
ずっと、そうだと信じていた……。




