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俺はムスケル、不幸を纏う漢  作者: 黒みゆき


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いざ帝国へ(2)

 竜王という神の様な存在が居る事自体信じられないことなのだが、更に信じられねー事によ、その竜王の野郎が俺達を守る為に結界を張っているというじゃねーか。

 その結界が破れると、その中に閉じ込めている化け物が出て来るのだそうだ。そもそもよお、化け物なんて居なきゃいい話しなんじゃねーのかって思うのだが、居るもんはしゃーねー。

 愚かにもその自分達を守ってくれるはずの結界を破ったのが、同じ人族って事が情けねーじゃねーかよ。

 俺達はその竜王の子分から結界の回復を頼まれたんだが、その結界を司っている像を持ち去ったって言うのがお隣の国であるパンゲア帝国の軍隊だっていうから驚きだ。

 だが、もっと驚いたのは、その軍隊の正体を教えてくれたのが、同じ帝国を代表する大将軍ハイデン・ハイン将軍だって言う事だ。

 奴が言うには、この帝国軍は奴の失脚を狙って居る政敵である帝国ナンバー2であるハーマン・ロング将軍の私兵だそうだ。

 奴とは古い知り合いで、こんな嘘を吐く野郎ではないのは知ってはいたんだが、にわかには信じられん事だった。

 今は同じ帝国人としての責任からか、一緒に結界の回復を手伝ってくれているので行動を共にしている。


 結界の像はなんとか奪回したのだが、この像を元の位置に戻した後、結界を再起動する為の儀式が必要だって言うじゃねーか。

 それを出来るのが、あの跳ねっ返りで、【歩く疫病神】のシャルロッテだと言う。なんでも竜王の血を引いてるとか眉唾もんなんだがな。

 その疫病神は今何してるのかって言うと、何故か石になって帝国兵に持ち去られたって言うじゃねーか。

 なんで、こうも面倒ばっかり起こすんだよあいつはよお。

 そんなこんなで、あの娘っ子を取り戻す為に、俺達は圧倒的に少数であるのにも拘らず帝国の大軍に襲い掛かっているって訳だ。

 その帝国兵達はって言うと、今何故か総崩れになって自国に逃げ帰ろうと乗って来た船に向かって敗走中だ。

 せこい事に、娘っ子の石像はしっかり持って行きやがった。本当に面倒ばかり起こしやがるぜ。

 向こうは五千人を超えるであろう大所帯。こっちは散らばってしまった仲間が再集結しつつあるものの、せいぜい二百人程度しかいない。

 圧倒的に劣勢ではあるのだが、幸いにも敵は敗走中、おまけに兵の練度はこっちの方が圧倒的に上だ。


 先頭を走る軽歩兵達は周囲に落ちている敵兵の兜やら旗やらを拾いながら走っている。

 訝しみながらその様子を見ながら走っていると、隣を走っていた軍師殿が解説をしてくれた。

「ああやって敵兵に偽装するのですよ。敵兵が混乱している今こそ有効だとは思いませんか?」

 こいつ、良く走りながらしゃべれるなあ。おまけに俺と同じ速度で走っているじゃねーかよ。どーなってんだ?

「彼らはもっとも敵兵が乗り組んで居ない船に取り付きますから、間違えずに乗り込んで下さいね」

 取り付くだって?憑りつくじゃねーのか?

「盗り付くかもしれへんでぇww」

 ポーリンの奴まで、俺を抜いて行きやがった。おかしい、俺の足はそんなに遅くはねーはずなんだが。


 しばらく走ると、波打ち際に達した。

 周囲を見ると、まだ何隻もの船が取り残されていた。

「おっほー、選び放題じゃねーかよww」

 俺は、比較的大型の船の方に走って行こうとしたんだが、別の方角から声を掛けられた。

「おかしらー、そっちとちゃいますやん、こっちやでぇ」

 振り向くとみすぼらしい小型船の前でポーリンが手を振りながら叫んでいる。

「急ぎますよ!」軍師も乗り込もうとしている。

「おいおいおい、待てよ、こっちの方がでかくてかっこいいじゃねーかよ!なんでそんな貧相な船にのるんだよー」

 立ち止まって憤慨していると、貧相な船の甲板上からハンスの奴が笑っていやがる。

「貴殿は相変わらず周りが見えていないのだな」

「なんだとーっ!!」

「考えても見ろ、人力で漕ぐんだぞ。我々は何人居ると思っているのだ?大きな船を漕げるほどの人数が居ると思っているのか?」

「そやでー、早よー上がって来て船漕いでやあ」

 ポーリンまで煽ってきやがるぜ。ちっ、癪だがあいつらの方が正しい様だ。

 悔しいが俺も、その貧相な船に向かって走って行った。

 甲板に上がると、アウラが下に続く階段を指差して居る。

「男性陣は下で櫓を漕いでくださいねーww」

 ちっ、わかったよ。漕ぎゃあいーんだろう、漕きゃあよ。


 それからの時間の進むのが遅い事、遅い事、永遠に暗くて蒸し暑い室内で櫓を漕いでなきゃならねーのかとうんざりしていた。

 櫓を漕ぐ部屋は薄暗くて、とにかく暑い。更に汗の臭いでむせりそうだった。

 そりゃあそうだろう。大勢の男が汗だくになって櫓を漕いでいるのだから、まさに生き地獄のようだった。

 幸いにも、先にこの船に乗っていた帝国兵が皆揃って寝返ってくれた為、早々に漕ぎ手を交代して貰えて上甲板で一休みする事が出来た。

 前方を見ると、先に逃げ出した帝国の船達が海一面に広がって航行している。

 船団とはお世辞にも言えない陣容だった。まったく統制の取れていない、ただの逃亡船の集まりと言っても良いだろう。

 こんな練度で、よくもまあ海を越えてやって来たもんだと感心してしまった。


 やがて、後方に太陽が沈む時刻となった。だが、まだ前方には陸地は見えなかった。見渡す限り大海原だ。

 今日は天気は上々の為、後方にはそれはそれは綺麗な夕焼けが広がっていた。

 次第にあたりは薄暗くなってきたが、あえて船団からは距離を置いて居るのか、まったく追い付く気配はなかった。

 船団の一番後ろをのんびりと、そんな感じの航海だった。


 夜通しの航海も終わり、やがて陽が昇ってきた。右舷方向にはベルクヴェルク山脈と思われる山々が朝霧の中に浮かんで見えて来た。

 この山脈のどこかに、あのお騒がせな竜王が寝ているんだそうだ。誰もが恐ろしくて足を踏み入れる事の無い聖域となっているんだとか。俺も入った事はねーな。


 ベルクヴェルクの山々が後方に消えて行くと、今度は正面から右舷側にかけて大きな大陸のようなものが見えて来た。

 恐らく、あれが沈没から免れたパンゲア帝国なのだろうか。

 帝国の船団は、大陸の西の外れの方に向かって航海しているようだった。つまり・・・真正面だ。

 まるで吸い込まれるように大陸の西の端に向かって進んで行く。そこには、帝国の帝都ルルティアがあるはずだ。


 だが、ふと気が付くと、我々の船の進路が少しずつ東にずれているような気がした。

「おい、コースずれてねーか?」

 船の舳先で奴、帝国の将軍ハンスと話をしている軍師に声をかけた。

 返事は、ハンスの奴から来た。

「貴殿は帝国に兵がどれほど居るのか知っているのか?」

「なんだと?」

「練度はピンキリだが、数だけでいうのなら、大陸一と言ってもいいだろう。そんな中にこんな少人数で乗り込んで行ってどうするつもりだ?」

「うっ、それは・・・」

 確かに、それを言われたら二の句が継げねーじゃないかよ。

「櫓を漕いで、疲労困憊の状況で敵の真っただ中に突入してどうするつもりだ?」

「じ じゃあ、どこにむかってるんだよ」

「帝都から南に三百五十キロにある田舎の港町、エムスデンだ」

「なんで、そんな田舎町になんて・・・」

「我々が休養をとる為だ。それと国内の様子を探らないと動きようがないからな」

 こいつが言うと、なんかみょーに説得力があって気に喰わねーな。

「敵の本拠地だからね、じっくり作戦ねらないといけませんね」

 アウラが言うと、納得できちゃうから不思議だ。


 そんなやり取りをしつつ、船は翌日の深夜に港町エムスデンに入港した。


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