第14話 ネクロマンサーがいっぱい
俺達は、石の螺旋らせん階段かいだんを登った。
後から『あの男』が追いかけて来る。
階段を上りつめた先にも扉がある。
運良くというべきか、こっちの鍵はあっさり開いた。
眩しい。
日差しは傾いていたが、まだ明るい。
出口は廃墟の一角に通じていた。
ザッ、ザッ!
『あの男』が、階段を登る足音が聞こえてくる。
「逃げるよ、走るよ!」
ジルが言う。
俺達はとりあえず、走り出した。
ふと俺は思う。
『あの男』は1人で、こちらは3人だ。
俺は雷の攻撃魔術が使える。
ジルも、たぶん何か攻撃魔術が使える。
ヤトスは、幼いけど才能のある死霊術師ネクロマンサーだ。
これ、俺達の方が強くないか?
後ろを向いて戦うか?
前を走っているジルとヤトスを見る。
やっぱりダメだ。
ジルもヤトスも幼い。
2人とも、ついでに俺も、戦いには慣れてない。
まず逃げて、アイラやヴィオラとの合流を目指そう。
長い影が伸びる死霊街の廃墟を、俺達は走った。
「ジル、どこに向かってるんだ?」
「知らないよ!」
おいおい。
迷子かよ!!
えーと、ここはどこなんだ?
俺は辺りを見回す。
「あそこ、白いチョークの線がある。
アイラさんのしるしだ!」
ジルが叫んだ。
ジルが指さす先に、白いチョークの線が見えた。
昨日の晩に来た場所だろう。
「アイラさん、アイラさん!」
ジルは白い線を足で、ふみふみした。
「アイラ、俺達はここだ!」
俺も白線を踏みつける。
これで、本当にアイラに通じるのか?
ヤトスも線の上でぴょんぴょんとはねているけど。
しばらく俺達は、白線の上を踏んだり跳ねたりした。
が、アイラは現れない。
そして、『あの男』も現れない。
「なんとか撒けたのかな?」
俺は左右を見回しながら言った。
「そういや、来ないね、『あの男』」
ジルが虚脱したように言う。
「チョークの線があるし、ここは昨日来た場所のはずだ。
セバスチャンの屋敷まで、ジルは道を覚えてる?」
「分からないよ。
昨日は暗かったし」
まあ、俺も分からないんだよな。
今思えば、聞き込みもマッピングも、ヴィオラとアイラに任せっきりだった。
反省だ。
そしてどうするか、だ。
死霊街は、そんなに広くない。
歩きまわればいずれ……、いやまずは石垣を見つけて正門を探して。
俺はそんな事を考えていた。
「ぎゃあアア!」
後ろの方から、ヤトスの悲鳴が聞こえた。
伸び過ぎた生け垣の側で。
「動くな。この小僧の命が惜しいなら」
ヤトスは、見知らぬ男に身体を抱え込まれ、首にナイフを突きつけられていた。
薄茶の髪で、薄い色の目の男だった。
北国の男だろう。
俺よりがっしりした体格だ。歳は三十前だろうか。
そして、俺と同じぐらいの身長である。
「『ゾンビ殺人事件』の犯人か?」
俺は尋ねた。
「さあな。そんな事はどうでも良い」
ヤトスの顔は真っ青で、ガクガク震えている。
「震えるんじゃねーよ、クソガキが!」
「ヒッ」
ナイフを突きつけられて、ヤトスはさらに震えた。
目から涙がこぼれている。
「ヤトスに手荒なことはしないでくれ」
「さあどうかな」
「子供にむごいことはするな
人質が必要なら、俺が変わる」
「けっ!
雷の攻撃魔術使いを人質にするほど、俺はバカじゃない」
「……そういうものなのか?」
「そういうモノなんだよ!
ったく、これだから素人はよぉ!」
俺と男、おそらく『あの男』だ、の間に一瞬ビミョーな空気が流れた。
「みんな! 危ないからどいて!」
突然、ジルが声をあげる。
「聖光弾ホーリーブリット!」
ジルは聖属性魔術を空に打ち上げた。
ザワザワっと周囲の空気がざわめく。
ニブチンの俺にも分かった。
幽霊ゴースト達が、ここの住人が、聖属性魔術に怒っている。
やっ、、やっ、、やっ、、。
ヒュお、、ヒュお、、ヒュお、、。
ヤトスの震えがさらに大きくなる。
「ちっとはじっとしてろ、このクソガキ!」
『あの男』は、ナイフをヤトスの顔に近づけた。
でも、『あの男』の額にも脂汗がにじんでいる。
『あの男』も死霊属性持ちらしいからな。
俺より敏感に感じているんだろう。
「今ので伝わったはず。
これからボク達の仲間が来るよ。
その前に投降するんだね」
「あぁ? 冗談じゃないね。
ああチクショウ、腹が立つ。
この糞ガキの顔に傷をつけてやるぜっ!」
「やめろ!」
『あの男』は、俺の言うことも聞かないし、人質を不必要に傷付けようとしている。
まともな判断力をなくしてたのか?
「お前達、孫を助けておくれ。
精神攻撃メンタルアタック」
聞き慣れない、しわがれた声がした。
誰だ?
ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ。
俺の目の前で、幽霊ゴースト達が男に群がっていく。
俺にも見えるぞ。
「やめろ、近寄るな!」
「ウチの孫に何するんだい!」
「お祖母ちゃん!」
そこにいたのは、しわ深い老婆だ。
腰が曲がり、髪はほとんど白髪だが少し赤毛が混じっている。
目の色は緑だった。
「このババァ!」
男は、ナイフを持って、老婆につかみかかろうとする。
危ないっ!
「氷の刃アイスブレイド」
老婆が呪文を唱えた。
男の背中から、氷の刃が生える。
そして、真っ赤な血が勢いよく噴き出した。
男は、そのままどうと倒れる。
流れる血が、池を作っていく。
血の流れ方から見て、氷の刃が貫いたのは心臓だろう。
男は血だまりの中に倒れ伏した。
上級治癒術ハイヒールでも、手の施しようのない状態はある。
男は死んだ。
【オマケ企画】
死霊術師ネクロマンサーを探せ
4人目
ヤトスのお祖母ちゃん(上級)




