第4話 証言
「俺は冒険者やってたが、どうにも運が悪くてさ。
俺がさ、よけいな事をしたのはさ、そのせいなんだよ」
男は話し始めた。
俺は、男の運が悪い原因は、酒じゃないかと思う。
しかし、何も言わないでおこう。
「くすぶってた所にそのまぁ、『あの男』がやって来たわけさ」
『あの男』というのは、逃げた主犯だろう。
「『あの男』はホント口がうまくて、つい乗せられちまったんだ。
そういうことってあるだろ? な?」
「言い訳は良いから本題に入りな」
オリーブさんが低い声で言った。
「ったくよォ。
ともかく『あの男』は、うまいことダンジョンの中を混乱させられれば、稼げるって言うんだよ。
その時は、うまく行くと思っちまったんだ」
「それでどうなったんだ?」
「『あの男』は言ったんだよ、『マッドハウスが稼ぐのを邪魔してる』ってさ。
マッドハウスができると、ダンジョンで殺人が起きたのがバレるからな。
で、マッドハウスを壊してやろうぜってことになったんだ。
お前ら、マッドハウスを壊すってどういうことだと思う?」
男は俺達に問いかける。
「ダンジョンの中で殺人事件が起こったように見えることだ。
マッドハウスが絶対じゃないと世間が思えば目的は達成できる」
俺は答えた。
「その通りだよ!」
男は嬉しそうに言う。
「どうやれば良いか仲間で考えた。
それで、『ゾンビを冒険者に見せかけてダンジョンに連れて行って、そのゾンビがダンジョンで殺されたように見せよう』ってなったわけだ。
そのためには、死霊術師ネクロマンサーが必要だ。
だから探したんだ、もぐりの死霊術師ネクロマンサーをな。
そんなのいるのかなって思うだろ?
俺も思った。
でも、『あの男』は『死霊術師ネクロマンサーは案外身近にいる』って言うのさ」
俺達は、死んだオヤジの霊を呼び出したいって名目で、あちこち話をまわした」
降霊術の噂は聞いたことがある。
ホンモノの死霊術師ネクロマンサーがやってるかどうかは知らないが。
「そしたら、なんとびっくり。
死霊術師ネクロマンサーの使いだってヤツが現れた」
「死霊術師ネクロマンサーの使いって、どんなヤツなの?」
「子供だよ。十と少しってところかな。
そのガキが死霊術師ネクロマンサー本人との仲立ちをするっていうのさ」
「どんな子供なの?
男?女?
背はどれぐらい?
太ってる?痩せてる?
髪の色や目の色は?」
アイラが矢継ぎ早に質問する。
「うっせえ。一気に答えられねーよ!」
男は言い返す。
ここは、一つずつ聞く方が良さそうだ。
「男か?女か?」
「男だよ」
「体格はどんな感じだ?」
「痩せてるよ。背はこれぐらいだ」
男は手で示した。
もし、その子供が十歳なら平均ぐらいだ。
もうちょっと年上なら、小柄な方だ。
「髪の色や目の色は?」
「髪の色は赤だ。目立つ赤毛だ。
そこの女より派手な色だ」
男はアイラの頭を指さした。
アイラより派手な赤毛なら、そうとう目立つ。
「肌の色は白かったな。
目の色は、普通っぽくて、えーとたしか濃い茶色だったと思う」
子供の容姿がイメージできた。
派手な赤毛なら、街でも目立つだろう。
あっさり見つかるんじゃないか?
「その子供とどんな話をしたの?」
アイラが質問する。
「ガキと話をしたのは『あの男』だ。
『あの男』は十かそこらのガキに、随分下手に出ていた。
メシを食わせたりしてな。
ガキもメシ目当てか、何回もやって来た。
最終的に金の話になったみたいだ」
「それでどうなったんだ?」
「ガキは、死霊術師ネクロマンサーに話を通した。
ゾンビを作る術を使わせるとさ」
「それで?」
「でさ、ゾンビを作るには死体が必要だ。
エエとさ、誓って言うけど、死体を作ったのは『あの男』だ。
俺じゃない」
「ほんとにそうですかー?」
ヴィオラがあおる。
「本当だ! 殺したのは『あの男』だ。
俺は死体を運ぶのを手伝っただけだ。信じてくれ。
俺は後悔してる。
でも乗った舟で、抜けるとは言えなかった。
ウソついてないぞ!」
困ったな。話が進まない。
「死体の話は後だ。
死霊術師ネクロマンサーの話だよ!
どんなヤツなんだい?」
オリーブさんが、ピシッと言う。
「エエとだ、約束通りに死霊術師ネクロマンサーはやって来たんだよ。
真っ黒なフード付きマントに仮面を被っていた。
顔は見えなかった」
真っ黒なマントに仮面の死霊術師ネクロマンサー。
いささかでき過ぎな気もする。
「死霊術師ネクロマンサーの術で、死体はゾンビになって、動き出した。
ありゃ気持ち悪いな。
ダンジョンでゾンビは見たことがあるけど、目の前で死体が動き出すのは、また別だ。
俺はホントに後悔してる」
その後、悪党グループは、ゾンビをダンジョンの中に連れて行き、殺人事件に偽装した、と。
「死霊術師ネクロマンサーの顔は見てないんだね?」
「ああ、そうだ。仮面しか見ていない」
「背の高さはどれぐらいだ?」
「高かった。見上げたのを覚えている」
「指定の時刻って言ったわね。何時ごろ?」
「夜だ。真夜中の12時だ。真夜中の鐘が鳴っていた」
「死霊術師ネクロマンサーと会った場所はどこだい?」
「デリーメの北東の森の入り口だ。
死霊術師ネクロマンサーは、森の奥から来た」
デリーメの北東の森。
その向こうに『死霊街』がある。




