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第5話 現場

 最後の角を曲がると、明かりの魔術(ライト)に照らされて人影が見えた。



 通路の途中に紐が張ってある。

 紐の側に戦斧バトルアックスを持ったドワーフの男が立っている。


「殺人事件の現場を見たいなら、申請書の控えを出せ。

 ふむ、通っていいぞ」


 灰色の髭のドワーフは、アイラが書類を見せると通してくれた。


 事件現場にも受付はいるらしい。


 まあ、冒険者は物見高いもんな。

 俺もそうだけど。




 通路の最後は行き止まりになっていた。

 血の匂いがする。

 

「死体には許可なく触るな」

 眼鏡をかけた、やせた人間族の男が言う。

 

 彼も冒険者組合の職員のようだ。

 事件現場には、受付が以下略。




 そして、いよいよ死体との対面である。


 仰向けに横たわった人間族の男の死体だ。

 心臓にナイフが刺さっていて、大きな血だまりができている。


 中背で痩せ型。

 濃い茶色の短めの髪。

 厚手の布地でできた服を着ている。



「ダンジョンの入り口からここまで9分35秒。

 殺人現場は、中央の広場から南東の方角の通路で、行き止まり。

 床の石畳はきれいで、休憩に向いた地形。


 推測だけど、この場所を知っている冒険者はいると思う」


 俺はアイラの言葉をメモに書いていく。



「身長は169cmってとこかな。

 顔にも目につく所にも、目立つ傷はない」

 アイラがメジャーで身長を測った。


 俺は、アイラの言葉をメモする。

 顔にも体型にも、これと言った特徴がない。

 強いて言うなら特徴がないのが特徴か?



「ダンジョンにしては軽装じゃないか?」

 俺は言った。


「入り口近くだし、この程度の装備の奴もいるわ。

 でも舐めた装備よね。

 武器もろくに持ってないし」

 アイラが言う。


「武器は犯人が持ち去ったと推測している。金目の物も持ってない」

 眼鏡の組合の職員と思われる男が言った。



「そうね。

 服は血まみれだけど、武器は売ればすぐにお金になるものね。

 でも、ナイフは持ち去ってないのよね」

 

「返り血を浴びないためだと思うが」

 眼鏡の職員が言い添えた。



 まあ、確かに。

 でもさ。

 

 メイド探偵シャルロットなら、ナイフは手がかりになるんだよな。


 俺は、ナイフの形状もメモしておく。



「……争った形跡は、一見してない。

 エドモンから見てどう?」


 俺は死体を真上から見下ろす。


 服に乱れた様子はない。


「ナイフがきれいに心臓一撃だね。

 人体に詳しいヒトがやったと思う」 



 ヴィオラが胸を刺された事件でも、心臓は外れていた。

 素人がやれば、普通そうなる。



「確かにそうね。プロの仕事かもね」

 アイラが言う。


 殺しのプロか、俺のように医学を学んだ者か。



「質問なんだけど、第一発見者はどんな奴だったの?」

 アイラが眼鏡をかけた男に聞いた。


「新参の冒険者三人組だ。

 彼らは犯人ではないはずだ。

 犯行時間が合わない」


「組合の名にかけて、間違いないと?」


「彼らが死体が見つけた時に、死体は既に冷たくなっていた。

 でも、三人組はダンジョンに入った直後だ。記録されている。

 

 犯行時間に、三人組はダンジョンに入っていなかった」

 眼鏡の男は答えた。



「他殺体を見つけて、あわてずに組合に通報する。

 随分、優良な新人冒険者ね」

 アイラが言う。


「そうだな。

 彼らも、参考人扱いにはなっている。

 しかし、拘束はできない」


「それはそうね」



 できすぎな気もするが、善意の通報者でもある。 

 拘束はできない。


 俺は今の会話もメモを取る。



「組合としては、この男が殺されたのは何時ごろだと思いますか?」

 俺も質問してみる。

 答えてくれるかな?


「正確な時間は分からない。

 どうも矛盾があってね。

 でも、今朝早くじゃないかと推測している」

 眼鏡の男は言った。


 割と親切かもしれない。



 その時、ヴィオラが一歩踏み出した。

 現場に来てからヴィオラはずっと静かだったんだが。


 ヴィオラは散乱する血だまりに指で触れると、ペロリと舐めた。

 あっと。


「ヴィオラ、待って!」

 アイラが大声を出す。



 ヴィオラは、盛大に眉をしかめると、ペッと吐き出した。


 そして、しゃがみ込むと、死体に触れる。


「おいっ!」

 眼鏡をかけた男が声をあげる。


「ヴィオラ、死体は触ってはだめだ」

 俺も注意する。



 ヴィオラは吸血鬼ヴァンパイアだ。

 血の匂いに酔って、暴れたりしないよな?



「……分かりましたよ、エド様、そしてアイラさん」

 ヴィオラが静かに言った。


 ?


「何が?」


「この死体を、現場をどうやって作ったか分かったと言ったんです。

 もー、ヴィオラお手柄ですよ!

 コップに半分血をもらいますからね!」






 次回以降、解決編になります。


 ちょっと不十分ですが、ヒントはだいたい出ました。

 冒険者組合の職員を含めて、登場したキャラクターで、事件について意図的に嘘をついたキャラクターはいません。(勝手な予想をしているキャラクターはいます)


『マッドハウス』が鍵になります。


 よければ、コメントに予想をお寄せください!



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