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第2話 懸賞金案件

「ダンジョンで死体ってそんなに珍しいものなのか?」

 俺は頭に浮かんだ疑問を口にする。


「けっこう転がってるんじゃないですかァ?

 魔物モンスターにやられた出来立てのホヤホヤの死体ですねェ。

 ゾンビも死体に入れれば、ダンジョンは、もー死体だらけですよ!」

 ヴィオラが笑顔で答える。



 そうだよなあ。



「死体そのものは珍しくないわ。

 でも今回は、特殊な条件を満たす珍しい死体なのよ。

 死体の謎の解明に、『冒険者組合』から懸賞金が出てる。


 店員さーん、芋団子ちょうだい。三串よろしく」



 それは、いわゆる謎解き(ミステリー)というヤツか?

 悪趣味だと思うが、ちょっとワクワクしてきた。


 なお、アイラの団子は俺より早く出てきた。



「じゃあアイラさん、どういう風に珍しい死体なんですか?」

 ヴィオラが質問する。


「んー、ここの団子は美味しい。

 ……死体はね、他殺体なの」

 アイラは団子一つを口に収めてから答えた。



「他殺体に見える死体ってことか?」

 俺は確認する。


「エドモンの言うとおりね。

『他殺体に見える死体』が、ダンジョンで見つかった。


 死体の性別は男。

 中背で痩せ型。

 年齢は、一見して二十代半ばほど。

 種族は人間で、冒険者登録をしている。

 今朝、ダンジョンに潜ったのを確認されている。


 死体は、心臓をナイフで刺されていて、仰向きに転がっていた。

 辺りは血まみれだったそうよ。


 発見場所は、ダンジョンの入り口から10分かそこら」


 アイラは一気に話した。

 俺は急いで手帳を取り出し、メモした。



「入り口の近くなら、目撃者はいないのか?

 もしも、いっしょに潜った仲間がいるなら、そいつがあやしいな」



 俺は『メイド探偵シャルロット』の展開を思い出す。

 まぁ小説では、たいてい別の犯人が現れるんだが。



「いっしょに潜った仲間は一人いる。同年輩の男よ。

 すでに組合に拘束されている。

 そいつを容疑者Aと呼ぶわね。


 容疑者Aは被害者は、いっしょにダンジョンに潜って早々に喧嘩になった。

 

 入り口近くの広場で、容疑者Aと被害者が口論しているのが目撃されている。

 Aは、被害者を一方的にののしっていたらしい。

 

 その後Aは、一人で探索する気にもなれずダンジョンを出たんですって。

 

 いろいろ怪しいんだけど、これも目撃者がいてね。

 Aがダンジョンから出た記録も冒険者組合に残ってる」


 アイラの言葉を、俺はメモに書き込む。


 それにしても容疑者Aか。

 カッコいいね。ミステリーっぽくなってきた



 そこまで言って、アイラはテーブルに身体を乗り出した。

 俺とヴィオラも身を乗り出す。



「今までの情報ネタだけなら、懸賞金案件にはならない。


 この事件の最大の謎は、ダンジョンで殺人事件が起きたにも関わらず、《《マッドハウスが発生していない》》ことよ」

 アイラは声を低めて言った。



 マッドハウス。

 俺達は、改めて顔を見合わせた。

 三人の視線か交差する。



 ダンジョンには法則がある。


 我々冒険者が、すべてを理解しているとは言わないが。



 例えば、ダンジョンの魔物モンスターからは、魔石が出やすいとか。


 満月や新月の時期のダンジョンは、魔物モンスターがたくさん出現するとか。


 そういうダンジョン特有の法則がある。

 


 そんな中で殺人に関わる特殊な法則ルールがある。


 それがマッドハウスだ。


 すなわち。


 ダンジョンの中でヒト族がヒト族によって殺された場合、特殊な魔術による『一定範囲のダンジョンの閉鎖』が発生する。

 これを『マッドハウス』と呼ぶ。


 マッドハウスの範囲にいたヒト族は閉じ込められ、マッドハウスが解除されるまで出られない。


 マッドハウスを解除条件は二つ。

 中の誰かが犯人を突き止めること。

 または、一定時間、たいてい2〜3日らしい、が経過すること。



 俺とアイラとヴィオラは、マッドハウスが関わる事件で出会った。



「マッドハウスの発生は、ダンジョンの重要な法則(ルール)じゃないのか?」

 俺は、二人に質問する。


 アイラもヴィオラも、俺よりずっとダンジョン探索の経験が豊富だ。



「そのはずなんだけどね」

 アイラが言う。


「わたしがはじめて、このダンジョンに来たのは五十年以上前です。

 その時にもマッドハウスはありました」

 ヴィオラが答える。



「マッドハウスという、ダンジョンの重要な法則ルールに、例外が発生した。

 少なくとも発生したように《《見える》》。

 だから、ダンジョン組合が真相解明に懸賞金を出している。

 そういうことか?」


「そういうことよ」

 アイラは答えた。



 確かに。

 懸賞金が出るだけのことはある。









全8話です。

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