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第1話 甘味と待ち人

 俺はヴィオラと二人、テラス席のテーブルに座っている。


 店の名前は『喫茶と甘味、そして肉』。

 酒の飲めない店主が経営する、酒の出ない店だ。


 店を指定したのは、待ち人の地図屋マッパーアイラである。



「遅いな、アイラ」

 俺はなんとなく口に出した。


 アイラの遅刻は珍しい。



「エド様、赤毛のっぽ女のことは放っておきましょう。

 それより、これ、二人で飲みませんか?

『デートにお勧め・ダブルストロージュース』。

 ねっね?

 ポーションも入れて!」

 僕の向かいに座っているヴィオラが、花のような笑顔で言う。


 ヴィオラの白皙の顔は、柔らかく波打つ淡い金髪(プラチナブロンド)に囲まれている。

 すみれ色(ヴァイオレット)の瞳。長いまつ毛も金色。

 華奢で優雅な身体付き。


 花のような、、、そう、ちょっと見ないレベルの美少女なのだ。


 当然だが、ヴィオラのいるこのテーブルは、客からも店員からも通行人からも注目の的だ。



 だが。

 

「やめておくよ。飲むならヴィオラが一人で飲みなよ」

 俺は答えた。


「えェェー!!

 エド様、テラス席のカップルとして周りの期待に応えましょうよォ、ねっ?」


 ヴィオラはころんと首を傾けた。

 あざとい動作も、美少女のヴィオラがやると映えるなぁ。

 

 これが姉や妹だと、ゲッとしか思わないけど。



 俺もかわいい女の子とのデートの状況シュチュエーションを妄想したことはある。

 友人と回し読みする恋愛小説ラブコメのなかでも、ダブルストロージュースは人気のアイテムだ。

 

 でも、俺とヴィオラは恋人同士かれしかのじょではない。


 テラス席は、待ち合わせに便利だから座っているのであって、断じてリア充アピールではない。



 しばらく前のことだ。

 俺とヴィオラと待ち人のアイラ、この三人で冒険者パーティーを結成した。


 その時、師匠を含めて何人かに忠告された。


 パーティー内恋愛に気をつけろ。

 男女混合パーティーが解散する最大の原因は色恋だぞ。

 


「遠慮しとく。健康体だと、ポーションはあまり美味しくないんだよ」

 

 ヴィオラはぷぅーっと頬を膨らませた。



「はぁーあ、ざっんねーん。

 じゃ、店員さ〜ん、トマトジュース一つお願いしまァす」


「はい!!」


 超美少女ヴィオラの望みは、速やかに叶えられた。


 ヴィオラは、トマトジュースにポケットから取り出した回復薬ポーションを注ぐと、ストローで飲み出した。



「ヴィオラ的には、それ、美味しいのか?」

 僕は常々疑問に思っていた事を質問する。


「味はまぁまぁです。

 でも、イマイチお腹にたまらないんです」


 そうなのか。

 ポーション代も安くないだろうし、吸血鬼ヴァンパイアも大変だな。


 俺は、ポーション入りトマトジュースを飲む超美少女吸血鬼ヴィオラを見ながら考えた。


 

 ちなみに。

 健康体の人間にとって、回復薬ポーションは不味い。

 飲み過ぎると戻してしまう。

 でも、怪我をしてる時は、美味くないがスゥッーと入る味になるんだな。


 それがポーションなのだ。



 待ち人は来ない。

 俺も何か注文するか。


「店員さん、芋団子二串ください!」


 俺の注文は、だいぶ遅れてやって来た。

 地味な男の宿命なのか?


 いや、俺の扱いはノーマルだ。

 美少女ヴィオラが特別なのだろう。




 ヴィオラがトマトジュースを飲み干し、俺が団子を一串食べ終えた頃、待ち人がやって来た。


 赤茶の髪を短め(ショート)にした背の高い美人、アイラである。



「ごめんなさい、遅れて」

 アイラが言った。


「遅いですよォ、アイラさん。

 エド様と二人で待っていたんですからね」


「遅れて悪かったわよ」


「まぁ、エド様と二人で一緒だったので、気にしてません。

 二人でダブルストロージュースを飲もうか相談していたんです」

 ヴィオラが花のような笑顔で言う。


 カッカッ。

 アイラがブーツの踵で床を蹴った。



 ピーピーピー、要注意。

 パーティー内の人間関係に黄信号!



「アイラが遅れるのは珍しいから、心配してたんだよ」

 俺は早口で言う。


 放っておくと、この二人は口喧嘩を始めそうだ。


 アイラは、テーブルに載ったグラスと団子を見た。



「俺は健康な時に、ポーションなんて飲まないぞ。

 もったいないじゃないか」

 ついでに誤解も解いておく。


 アイラは、ソバカスの散った鼻を軽く鳴らすと、俺とヴィオラの間の席に座り、ズボンを履いた長い足を組んだ。



 同じテーブルに、美少女ヴィオラ美人アイラと、俺。

 周りの男からやっかみの視線が飛んでくる。


 でも、これは俺の責任範囲外だ。断固無視する。



「ちょっと面白い情報ネタが出てね。

 聞き込みしてたら遅れたのよ」

 アイラが言った。


 テーブルの空気が変わった。

 

 冒険しことの話である。



 俺達三人組のパーティー・リーダーはアイラだ。


 俺は最年少で、ダンジョンに関しては新人ペーペー。リーダーは無理だ。


 ヴィオラがリーダーではない理由は、、、察してくれ。



「どんな情報ネタなんだ?」


「ダンジョンの中に死体が転がってたんですって」

 地図屋マッパーにして、パーティーリーダー、アイラは言った。


 怪力の吸血鬼ヴァンパイアで前衛のヴィオラ、治癒術師ヒーラーの俺。

 二人で顔を見合わせる。


 ダンジョンで死体。

 それって、わりと普通じゃないのか?






お久しぶりの再開です。

キャラクターが混乱している方は、キャラクター紹介をご覧ください。

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