自業自得で草ぁーーーwww
ブランチ鉄鋼国皇帝の来訪から三日後。
僕は朝の日課である畑の水やりをしている。
ここ最近、明らかに気温が下がり、肌寒くなってきた。
もうそろそろ冬に備えることと、冬を越すほどの食料を確保できたため、今日限りで水やりをやめて果樹以外の畑を一度更地にして休耕地にしていこうと考えている。
あと、しばらく話に出ていなかったシルクモスの卵について話しておこう。
久しぶりにシルクモスの卵が保管してある倉庫を見ると、そこには孵化したばかりの幼虫たちがいた。
うじゃうじゃと蠢いているのかと思いきや、かなりおとなしい。
どうやら冬で孵化したため幼虫の状態で冬眠しているようだ。
今のところは問題ないので春が来るまでそっとしておこう。
僕はいつも通りに朝ご飯を済まして畑の様子を見に行く準備をしようとした時、ドアが勢いよく開いた。
「大変です村長!」
そこに現れたのはギャリガンだ。
走ってきたのか息を切らしている。
「ギャリガンさん!?どうしたのそんなに慌てて!もししかしてまたブランチ鉄鋼国から・・・」
「いえ、違います。ですが、詳しいことは向こうについてから話しますので、今から一緒に来てください」
「どうして?」
「いいから早く来てください!皆さんが待っています」
「分かったよ」
僕はギャリガンさんに急かさせながらもすぐに現場へと向かった。
しばらくして、僕が着いたところは旧噴水広場だ。
旧噴水広場には村の住民たちがたくさん集まっていた。
もちろん、地区の代表の面々もいる。
「お!村長だ!」
「村長こっちこっち」
住民達の手招きしていたので、僕はそのまま行くと、そこにいたのは、エストラル国王とアーノッドがいた。
国王と息子、二人だけで来るとは珍しいな。
でも今回はかなり重要なことがあるのだろう。
「これは国王陛下。一体どのような御用で?」
「おぉー、これは村長殿。早速じゃが、まずはこれを見てほしいのじゃ」
「ん?・・・えぇ~~~!!!これって一体どうゆうことなんですか?」
そこで僕が見たものはパンツ一丁の状態で、口には轡が、手足を縛られている二人の男がいた。
一人は前にこの村にシュバイエの引き取りにやって来たブランチ鉄鋼国の皇帝ライザルフィチャーチャーだ。
そしてもう一人の男の方は背中にコウモリのような翼があり、頭には立派な二本の角が生え、おまけにしっぽまでついている。
見た感じは種族的に悪魔なのだろう。
しかし、この状況はどうなっているんだ?
前にシュバイエを引き取りに来た際、かなり傲慢な態度をとっていた皇帝がなぜパンツ一丁になっているんだ?
しかも、完全に初対面の悪魔までいる始末。
ブランチ鉄鋼国皇帝ならともかく、隣にいる悪魔は一体何者なんだ?
うーん、考えれば考えるほど頭がパンクなりそうだ。
ここで悩んでも仕方ないので、国王に聞いてみる。
「陛下、これは一体どういう状況なんですか?」
「これはのう・・・」
国王は何か言いたそうなそぶりを見せている。
国王がもじもじしていると、どこからか野太い声が聞こえてくる。
「これは私が話そう」
その声の持ち主は少し小柄な中年の男性が立っていた。
「あなたは?」
「私はバドッラ。元皇帝直属の側近で今は暫定皇帝をしているものです。以後お見知りおきを」
「はぁー」
僕はバドッラと名乗る男性の挨拶とその肩書きを聞いてため息をしたが、暫定皇帝とはなんのことなのか?
僕が呆然としているが、バトッラは続けて話す。
「あなたがこの村の村長ですよね?」
「はい」
「あなたの事は前から知っていました。しかし、この魔獣の森の中で村を作り、ここまで発展させるとは中々やるものですな」
「いやーそれほどでも」
初対面のバトッラさんに褒められて照れてしまう。
「ゴホン」
あっ、そうだ。
今はこの状況についてのいきさつを聞くところだったな。
「ではバトッラさん。今拘束されている皇帝フィチャーチャーとこの男がなぜこの村に連れてきたのかせて名をお願いします」
「そうだったな。じゃあ話しましょう」
こうして、フィチャーチャーと謎の男がこの村にやって来たいきさつを話し始めた。
まず謎の男についてなんだが、その正体はなんと、魔王国メギドゥームの魔王カイゼルゼン本人だ。
まさか魔王も皇帝と同じようになっていたとは驚きだ。
なぜこんなことが起きたのかというと、それぞれ国は以前から軍事費投資として高い税金を支払って、巨大な飛行戦艦を完成したのに、先日におきた戦争で勝利するどころかかなりの損害を出したにもかかわらず再戦の準備として住民から金銭を徴収し始めたのだ。
この一件で国民達の不信感を買い、密かに魔王国と鉄鋼国に対して反乱の準備をしていたのだ。
フィチャーチャーの場合、実はファツェールゼンとメイビスを含む一部の上層部は秘密裏に反乱軍と協力していて、シュバイエを引き取りに行った直後、暴動を抑える名目で反乱軍と合流し、城を占拠した。
そして、シュバイエを引き取りに帰ってきたところで取り押さえられ、革命が起きた。
次に魔王の方はというと、同じ日に魔王が就寝しているときに革命を起こし、王の座から引き下ろされた。
その結果、それぞれの国で反乱に成功し、捕まった元王はこの村にやって来たというわけだ。
まさに自業自得で草ぁーーーwwwってことだ。
だがここである疑問が浮かぶ。
なぜ自国で処罰を科さずこの村に来たのだろうか?
これもバトッラさんから語られた。
どうやら革命が起きた後、二か国の反乱軍と合流し話し合いの結果、元王の処罰は死刑に決まったのだが、ほとんどの国民は死刑よりも国外追放し、奴隷として働かせ生き地獄を味合わせた方が良いと結論が出たので、中立国のエストラル王国国王の奴隷として働かせようとバドッラと共にエストラル国王に謁見し提案をしたのだが、国王は奴隷を持たない主義なのでシュバイエと奴隷契約をしたことがある僕の村へと行くことになったのである。
これはまたなんとしょうもない押しつけだ。
「僕が元王の奴隷主に!?奴隷の契約ってことはつまり・・・」
「はい。村長の血を分けていただきたい所存です」
やっぱりか~~~、もう痛いのはごめんだっていうのにまた血を抜くのか~~~。
もういやだ~~~。
でも、ここでごねたら話が終わらないので、しぶしぶ了承した。
バドッラがあらかじめ持ってきた浅い皿に僕の血を溜めたことろで奴隷契約の準備が整った。
「彼らに死よりも重たい罰を科すため、あの禁術で罰してください」
「禁術ってまさかあの!?」
バドッラと国王の話をしていると、その話を聞いていた二人の元王は体をじたばたさせて何かを訴え始めた。
さすがにかわいそうなので彼らの轡を外した。
「おい!ふざけるな!この儂を何だと思っているんだ!皇帝だぞ!皇帝!」
「この我にこんな姿になるとは何たる屈辱!このクソ皇帝と一緒になるなんて御免だ!」
「なんだど!この牛野郎!!!」
「貴様!!!今なんって言った!?」
あーあ、しょうもない罵り合いが始まった。
他の住民もとい、元ブランチ鉄鋼国の人もいるのに恥ずかしくないのだろうか?
「これ以上は見てられん。ラーブ分かっておるな?」
「はい」
「待ってください。大魔導士の力など不要です。」
「まさか・・・」
「はい。この私バトッラに直々に唱えさせてもらいます。」
「馬鹿な!この術はどんな上級魔導士でも立っているのがやっとの代物。生半可に唱えたら命すら落とすものだぞ!!!」
「そのことは承知しております。ですが、国民を苦しめ飢餓や非人道的な所業に加えて、エストルフ大陸にも大きな影響を与えた彼らにはその罰がふさわしいと思いす。これは好き勝手させた私の責任として詠唱させてください。お願いします」
バドッラはエストラル国王に向けて頭を下げた。
相当覚悟を決めているのがひしひしと伝わってくる。
「分かった。ではお主に任せるとしよう」
刑の執行はバドッラに決まった。
それを聞いたバドッラは威勢の良い「はっ!」と返事をした後、詠唱の準備を取り掛かる。
「では参ります」
バドッラは深く呼吸をした後、詠唱を始める。
「我、隷属と主を繋ぐ者」
バドッラが詠唱し始めた瞬間、浅い皿に溜めた僕の血がコポコポと泡が湧き始めた。
そして、バドッラは詠唱を続ける。
「汝ら、主に隷従せし者。汝は、隷属に命を与えし者」
浅い皿に溜まった僕の血は命を宿しだかのように泡立つ。
「汝らは未来永劫、無窮の契りを交わし、汝らの体に主の血の呪印を刻みたまえ」
僕の血が沸騰しているかのように激しく泡立ち、バドッラの目がカッと開くと同時にその魔法名を言い放つ。
「血隷の契約!!!」
僕の血が意志を持ちスライムのように動き始めたかと思うと、雨粒状になり彼らに襲いかかった。
「ぐわぁぁぁ~~~~~~!!!」
「ぎぃやぁぁぁ~~~~~~!!!!!!!」
元王を襲った僕の血は入れ墨のように彼らの身体に刻まれていく。
それはかなりの痛みを伴うようで村中に響き渡るぐらいの生々しい叫びをあげる。
気付けば、浅い皿に溜まっていた僕の血は一滴も残らず無くなっており、僕の血でできた霧が晴れると、元王は相当痛かったのか失神しており、元王の身体には赤黒い印が刻まれていた。
これが国王も恐れる禁術だというのだが、見たところ前にシュバイエに使っていた血印の契約に見えなくもないのだが、一体何が違うのだろう?
すこし考えていると、詠唱を終えたバドッラさんが僕に向かって声をかける。
「これで元王は村長の直属の奴隷になりました。ここで働かせるのも囮として捨て駒にするのも村長の自由です。では私はここで失礼します」
僕にお別れの挨拶をしたバドッラさんは、二人の元王を置いて自国へ帰ろうとした時、国王と一緒にいたアーノッドがバドッラさんに声をかけた。
「待ちなさい!」
「なんでしょう?」
「たった今ブランチ鉄鋼国の政権が崩壊したとなら、捕らわれの身になっている私の婚約者フィアンナはすぐに帰れるのですか?」
それに続けて元ブランチ鉄鋼国の住民たちも言った。
「元皇帝がいるってことは俺達帰ることができるってことだよな?」
「そうよ。私たちは自由になったのよ!!!」
「やった~~~!!!お家に帰れる~~~!!!」
そうだ。
政権が終わったのなら、フィアンナがエストラル王国に戻れるじゃないか!
これはいい朗報だな。
だけど、バドッラさんは浮かない顔をしている。
そして、バドッラさんはアーノッドの質問に答える。
「申し訳ございませんが・・・、今は無理です」
「どうしてですか?今なら私が迎えに行くことができ・・・」
「アーノッド卿落ち着いてください。フィアンナ様のことは承知しております。今は情勢が不安定でファツェールゼン様が代理国王として指揮しており、新しい国の代表が決まり次第フィアンナ様をエストラル王国へ帰国させますのでもう少々お待ちください」
「その言葉、本当だろうな?」
「はい・・・」
二人の間に沈黙が流れた。
そりゃあ、愛人が無事なのか心配しているだろう。
その気持ちはわかる。
「・・・分かった。その言葉を信じよう」
「ありがたきお言葉。では改めて失礼します」
再度、別れを言うと、バドッラさんは転送魔法でブランチ鉄鋼国へ帰っていった。
用事を済ましたエストラル国王とアーノッドはもとの国へと帰り、他の住民たちも元の地区へ帰っていった。
残されたのは僕の奴隷になった元魔王国の魔王と元鉄鋼国の皇帝だ。
僕はまた奴隷を持つことになった。
しかも元王とは・・・、果たして僕は言った言いどうなることやら。




