ブランチ鉄鋼国皇帝の来訪 中編
「なんじゃありゃ!!!」
村上空に現れた空飛ぶ巨大な船にみんなが驚いている。
巨大な船の大きさはこの村を覆うほどではないが、だいたい全長三百メートルは超えているだろう。
僕たちは空飛ぶ巨大な船に呆気に取られていると、船が少しずつ降下していく。
降下した船は地上から約五メートルぐらいの高さで停止した。
近くまで降りてきた船はかなりの迫力を感じる。
だが、僕はある違和感を覚えた。
僕はその船をまじまじと観察しているとあることが分かったと同時にあることを思い出した。
確かこの船は、エリールから話を聞いていた戦艦かもしれないのだ。
戦闘が勃発した直後に噴火が起こり、大破したと聞いている。
どうやら噴火が落ち着いた後、何らかの方法で回収し戦争に使うため応急処置を施しておいたのだろう。
なぜそう思ったのかというとよく見たら所々溶接した後があり、急ピッチで仕上げていたのがうかがえる。
なのでこの船は継接ぎだらけの状態でこの村にやってきたわけだ。
わざわざ修理をしてまで使うということはそれだけ愛着があるということなのだろう。
しばらく船を眺めていたら、何もないところから強い光を放った。
これは国王の時と同じ移動用のポータルのようだ。
その中からブランチ鉄鋼国の兵士が現れ、一人が長く赤いじゅうたんが敷かれ、兵士たちは人が通れる幅に広がり二列に並んだ。
「皇帝陛下のおなーーりー!」
ブランチ鉄鋼国の兵士長の威勢のいい掛け声で兵士たちの姿勢がピシッと良くなり、辺り一帯は緊張感に包まれた。
今回初めてお会いする皇帝とは一体どんな人物なのか気になる所だが、今は気を引き締めていこう。
そして、魔方陣から一人の人物が現れた。
その人物は一目でこの人がブランチ鉄鋼国皇帝だと分かるようなローブを纏い、頭頂部には立派な王冠をかぶっている。
この人がブランチ鉄鋼国皇帝であり、エリールの関係者なのだろう。
それに続くように魔方陣からまた違う人物が六人現れた。
その人たちは兵士が着ている装備より重量のある鎧を着ている。
僕はその鎧を見てある既視感を覚えたのでそのひとたちの鎧を見ると、多少の違いはあるが、ダウストンが身に着けている鎧と同じのようだ。
どうやら、この人たちはダウストンと元々所属していた所の人たちなのだろう。
皇帝は敷かれたカーペットの上に歩いていく。
今、拘束をかけているシュバイエは一目で父親の姿を見るとジタバタと騒ぎ始める。
「父上!?父上ーーー!!!」
あまりにも興奮し、暴れ始めそうなのでエストラルの兵士が取り押さえる。
そして、ブランチ鉄鋼国皇帝は僕たちの前に立ち止まった。
僕は初めて会う皇帝フィチャーチャーに緊張しながら挨拶した。
「よ、よ、ようこそ。始まりの村へ。僕がこの村の村長の・・・」
「貴様の挨拶などいらん」
「えっ?」
「そもそも貴様が村長であり、神の使いであることは部下からの報告で聞いている」
どうやら僕が神の使いであることは認知しているようだ。
だが、せめて挨拶は交わしてほしいものである。
そして、フィチャーチャー皇帝は僕の隣に立っているダウストンに目を向けると、彼に向かって声をかける。
「これは裏切者のダウストン」
フィチャーチャー皇帝の言葉を聞いたダウストンは怯む様子もなく返事をする。
「お久しぶりです。陛下・・・」
「久しいなぁ~、ダウストン。貴様はこのワシの元から離れたと思ったら、エストラルに助けを乞うとは、裏切者らしい末路だな!」
久しぶりに会う元部下に対しての心のない罵声は第三者である僕でも心が痛い。
しかし、ダウストンの方が内心、かなり心苦しいだろう。
フィチャーチャー皇帝は続けて話始めた。
「それにしても、神の使いが村を作って生活していると聞いていたが、着いてみたらこんな辺鄙な所だとはな、この村に支援をするエストラル国王のことが全く理解できん。こんな弱小な村などすぐに潰せばいいものを」
ついて早々、ブランチ鉄鋼国皇帝は僕の村を悪く言い始めた。
初対面の相手にいきなり悪口を言うのはいかがなものだろうか?
せっかく廃村だったこの村をコツコツ積み重ねて人々が暮らせるほど落ち着いてきたのにこんなに悪く言われると腹が立つ。
これを聞いたエストラル国王はフィチャーチャー皇帝に声をかけた。
「これはブランチ鉄鋼国皇帝のフィチャーチャー殿。いきなり、わしの友人の事を悪く言うとは感心できませんな」
「おー、これはこれはエストラル国王。今のは失礼した。あまりにも殺風景な所でしたのでつい本音が出てしまいましてな」
「ところで、ここにきたのは悪口を言うために来たのではないのかね?」
「あー、そうだそうだ。早速だがどこかの馬の骨の奴隷にされている我が娘を開放し、引き渡してもらおう」
最初から僕達を見下し傲慢な態度で腹が立ったが、今は落ち着いて対応しておこう。
フィチャーチャー皇帝の罵詈雑言から本題の引き渡しの話へと移る。
「まず最初に娘の姿を見せておくれ」
「わかった」
エストラル国王が兵士たちに指示を出し、シュバイエの姿をフィチャーチャー皇帝に見せた。
「おー、我が娘、シュバイエよ」
「父上~~~!!!」
僕達には険しい表情を見せていたのに父親を見た瞬間、幼い子供のような明るい表情を見せる。
一日だけだが、こんなに嬉しい顔を見たことが無い。
やはり、父親と会えたからほっとして、この表情を浮かべたのだろう。
「ふむふむ、娘の無事は確認できた。さぁ、さっさと奴隷の呪いを解呪しろ!」
「うむ」
ラーブさんが返事をすると、シュバイエへ近づき、ラーブさん持っている杖を彼女の額に当てて詠唱をし始める。
「解呪」
ラーブさんは『解呪』というと、シュバイエの額に刻まれていた印は消え、晴れて自由の身になった。
「ち、父上~~~!!!」
「おぉ~、シュバイエよ~~」
解放されはシュバイエは、父親であるフィチャーチャー皇帝の方へまっすぐ走っていき、そのまま抱き着いた。
「おぉ~~~、シュバイエ~~~土井丈夫だったかぁ~~~?こいつらに変な事されなかったか~~~?」
「うん。特に何もされなかったどころか手厚くもてなされたよ!」
「うんうん。そうかそうか。良かったな~~~」
なんじゃこりゃ、先ほどまで僕たちに傲慢な態度をとっていたのに、娘になるとかなり甘い態度にるとは・・・。
これでも皇族一家なのだろうか。
しかも、シュバイエの言っていることは事実と異なっており、手厚くもてなしてはいない。
まぁ、正確には奴隷契約以外危害を加えていないからそう捉えても仕方ないだろう。
「ところで父上。先ほどから兄上と姉上達の姿が見当たりませんがどこにおられるのですか?」
「あー、あいつらか。あいつらなら引き取りの準備の際に起きた暴動を鎮めるとか言って国に残っている」
「そう・・・ですか・・・」
「まあ、ともあれシュバイエが戻ってきたわけだし、帰ったら宴会の準備だ!シェフにシュバイエの好物をたくさん作るよう言っておこう」
「おおおぉ~~~、さすが私の父上だ!!!」
「よし、おまえら。目的を果たした。皆共、撤収だ!」
「おおぉ~~~!!!」
皇帝とシュバイエ、それに続き、皇帝の取り巻き達は魔方陣を経由し巨大な船に乗るとそのまま元の国へと帰っていった。
まるで嵐がすぎたかのような空気になりつつも、僕の心の中では一安心している。
王族同士との間の空気がピリつく場面があったが、幸い、いざこざがなく引き取りを終えることができたのが救いだ。
これにて無事にシュバイエの引き取りが終えることができたので、この後、みんなで事後処理をするつもりだ。
今後も、変なことで村の存亡に関わるような出来事が無いことを祈るしかないばかりだ。
さてと、まずは村の外に避難しているみんなを呼びに行くとしますか。




