真実の向こう側14
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「シュリアさま、バーン城からお荷物が届いていますわ。〝蒐集品のひとつとなれば幸いです。先日のお礼までに〟とありますが」
「ふぅん……? 適当に開けておいて」
窓辺で頬杖をつきつつ、それこそ適当に返事をする。
結婚祝いの品なんて、もういくつ届いたか分からない。
「シュリアさま、髪飾りや首飾りなどを合わせたいのですが」
「ああ……適当に良さそうなのを選んでおいて」
「シュリアさま──」
「はいはい。もう何でもいいから適当にやっておいて」
婚儀を三日後に控えて、いよいよ身辺が騒がしくなってくると、どんなに一人になろうとして隠れても、必ず誰かしらに捕まった。
いいかげん逃げまわるのにも疲れて、生返事作戦に切り換えたのだけど、あまりにもしつこく声をかけられるから、ちっとも考えごとに集中できやしない。
「あの、ですが、シュリアさま。お客さまが──」
「今は人に会う気分ではないの。断って」
ミリッシュが復讐のためにアモル伯爵夫人の命を狙い、ヴァデラーが絶命したあの日から十日以上経っても、私はまだ悪い夢のなかにいるような感覚から抜け出せずにいた。
ミリッシュはあの場では表向き、己の生活苦を嘆き、国務大臣であるアモル伯爵に物申そうとしただけの人物として片付けられた。
中央講壇に上がったとき、お兄さまの配下が素早くミリッシュを取り押さえたので、それで通用したらしい。
アモル伯爵側には掘り返されるわけにはいかない過去があるため、人々に真実が告げられることはなかった。
そうしてミリッシュの身は拘束され、ひっそりと都に送られた。
けっきょく私は、ミリッシュに何もしてあげられなかったけど、最後に一つだけ、どうしても謝っておきたいことがあった。
以前、ミリッシュの想いは本物じゃない、叶わない片恋が苦しいから他の人に逃げたのだろうと、罵ってしまったこと。
ミリッシュはただひたすら一人の相手を想いつづけていたのに。
どんなに苦しい想いを抱えて、どんなに悲愴な決意を胸に、ヴァデラーと共にいる選択をしたことか。
私には想像もつかない。
ミリッシュの選択が正しかったとか、間違っていたとか、そんなことはどうでもいい。
彼女の真剣な想いを安易に踏みにじったことが、ただただ申し訳なかった。
『いいんです、もう。シュリアさまのおっしゃるとおり、私は逃げたのですから。他の人に、ではなく。彼のいない現実を生きていくことから』
そう言ったミリッシュの声に力はなく、瞳はガラスのように空虚だった。
神殿での出来事を含め、バーン城での事件についてアモル伯爵がどう対処するのか、私には分からない。
けっして公になってはならないことがあるから、もしかしたら、すべてを闇に葬り去るためにひっそりと存在を消されてしまうかもしれない。
ミリの行動によって実際にトルナード男爵は亡くなっているわけだし、おまけに王位にまで関わる話とあっては、もう安易に私が口を挟める事態ではない。
だけど……。
『ミリ。私、待ってるわ。私はあなたの同盟者だもの。今度はちゃんと、あなたの力になれるようになって待ってるから』
私には、そう言うだけで精一杯だった。
ミリッシュの瞳は虚空を見つめたままで私を見てはくれなかったけど、それも仕方のないことだと受け入れるしかなかった。
「あの、では、贈り物だけ受け取って帰っていただきましょうか」
さきほどと同じメリディエル家の使用人から重ねて声をかけられ、まだいたのかという目で戸口のほうを見やった。
「ええ、そうして」
「それで、花はこちらにお持ちしますか?」
「花? 部屋の装飾のことなら女中に言ってちょうだい」
「構わないのですか? シュリアさまに頼まれていた花だと伺ったのですが」
「私に? 頼んでないわよ、そんなの」
「そうなのですか? ゲッカコウとかいう花だそうですが」
月下香?
それって……。
思わず立ち上がって身を乗り出す。




