↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/165

真実の向こう側13

「ミリ! もうやめて!」


 もみ合っている人の中に突っ込んでいき、無我夢中でミリッシュに抱きつく。


「こんなのラヴァンのためにならないでしょ!」


 愛する人を喪ったミリッシュの怒りと悲しみ、絶望は、ラウラスを永遠に喪うかもしれない恐怖を味わった私にも、すこしだけ理解できた。

 それは相手への憎しみの感情と同時に、自分が許せないという気持ち。

 押しつぶされるような罪悪感と、何かをせずにはいられない衝動。

 だけど。


「ラヴァンは、こんなことを望むような人じゃないでしょう。あなたがラヴァンの名を汚してどうするの」


「あなたに彼の何が分かるの!」


「分かるわ、とても優しい人だって。私、会ったもの。生きてるのよ、彼。アモル伯爵がサエウム伯爵のもとから連れ出してくれたのよ」


「そんな戯言を信じるとでも!?」


 血のにおいがひどい。

 いったい誰の血なのだろう。

 状況を把握しようと、改めて周囲を見まわし、言葉を失う。


 アモル伯爵夫人はアモル伯爵にかばわれ、その腕のなかで顔を真っ青にしていた。そして、アモル伯爵のさらに前に立ち、今まさにミリッシュの持つナイフが沈んでいるのは──。


「ヴァデラー、邪魔しないで! どいて!」


 ヴァデラーその人だった。


「どかない。これ以上の罪を重ねるな。もういいだろ。もう……俺だけ憎んでろ」


 ナイフを引き抜こうとするミリッシュに反し、ヴァデラーはミリッシュを抱きしめた。


「おまえにはすまないことをしたと……思ってる。でも……、ごめん……愛してる」


 力を失ったヴァデラーの体が床に沈む。

 悲鳴を上げたのは、いったい誰だろう。

 イデルか、アモル伯爵夫人か。

 いや。もしかしたら私自身だったかもしれない。


 ナイフを失ったミリッシュは呆然とした様子で床に膝をついた。

 その目に浮かぶ感情が何であったのか、私は知らない。

 ただその視線の先には、血まみれになって動かない男の骸(むくろ)だけがあった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。