真実の向こう側13
「ミリ! もうやめて!」
もみ合っている人の中に突っ込んでいき、無我夢中でミリッシュに抱きつく。
「こんなのラヴァンのためにならないでしょ!」
愛する人を喪ったミリッシュの怒りと悲しみ、絶望は、ラウラスを永遠に喪うかもしれない恐怖を味わった私にも、すこしだけ理解できた。
それは相手への憎しみの感情と同時に、自分が許せないという気持ち。
押しつぶされるような罪悪感と、何かをせずにはいられない衝動。
だけど。
「ラヴァンは、こんなことを望むような人じゃないでしょう。あなたがラヴァンの名を汚してどうするの」
「あなたに彼の何が分かるの!」
「分かるわ、とても優しい人だって。私、会ったもの。生きてるのよ、彼。アモル伯爵がサエウム伯爵のもとから連れ出してくれたのよ」
「そんな戯言を信じるとでも!?」
血のにおいがひどい。
いったい誰の血なのだろう。
状況を把握しようと、改めて周囲を見まわし、言葉を失う。
アモル伯爵夫人はアモル伯爵にかばわれ、その腕のなかで顔を真っ青にしていた。そして、アモル伯爵のさらに前に立ち、今まさにミリッシュの持つナイフが沈んでいるのは──。
「ヴァデラー、邪魔しないで! どいて!」
ヴァデラーその人だった。
「どかない。これ以上の罪を重ねるな。もういいだろ。もう……俺だけ憎んでろ」
ナイフを引き抜こうとするミリッシュに反し、ヴァデラーはミリッシュを抱きしめた。
「おまえにはすまないことをしたと……思ってる。でも……、ごめん……愛してる」
力を失ったヴァデラーの体が床に沈む。
悲鳴を上げたのは、いったい誰だろう。
イデルか、アモル伯爵夫人か。
いや。もしかしたら私自身だったかもしれない。
ナイフを失ったミリッシュは呆然とした様子で床に膝をついた。
その目に浮かぶ感情が何であったのか、私は知らない。
ただその視線の先には、血まみれになって動かない男の骸だけがあった。




