アイロスとリエル
翌日、1月15日から1月20日までは、平穏に通常営業を行った。
ダビとルルイエとその仲間のマリックとジェイク、リリアとその仲間たちも料理を食べに来てくれた。
ローガンは、17日に来訪した。
「予定通り、2月7日に《六角亭》へ、人数は10名で予約をしておいたぞ! 代表はリーズヘッグ殿としておいた。そら、こいつが通行証だ。2月7日しか使えぬから、注意が必要だぞ!」
「了解致しました。お受取り致します」
「午後4時の鐘が鳴る頃に、エミューの車をこの店まで迎えに来させる。少々早く到着する予定だ。楽しい夜になることを祈っておるぞ!」
高笑いするローガンに、俺は焼き菓子を詰めた袋を差し出す。
「感謝の気持ちとして、焼き菓子を用意致しました。皆さんで召し上がって下さい。今回は本当にありがとうございました」
ローガンは大喜びで、焼き菓子を受け取ってくれた。
「また機会があれば、俺を頼ってくれ! ではな、キョウスケ! また来るぞ!」
ローガンは焼き菓子を仲間に見せびらかしながら、帰っていった。
ちなみに、ローガンが来なかった15日と16日の分の焼き菓子は、ファナが持ち帰っていった。
家族や友達にも好評だったとのことで、俺も嬉しかった。
特筆すべきことは以上である。
1月21日の休日は、朝は市場を散策して、調味料屋を回った。
調味料屋では、日本酒のごときリロの蒸溜酒を発見した。
加えて、オイスターソースも発見した。
俺は調味料を味見しまくり、いろいろな新発見をすることになった。
帰宅後は、ひたすら甘味の考案である。
食べ比べの試食会は、28日。
《銀の匙》の店主は、まずイチゴ大福のごときガル大福の料理帳を買うと言っている。
ならば、ケーキよりも和菓子が好みに合うのかもしれない。
俺はまず和菓子のレパートリーを増やすべく、奮起することになった。
たくさんの菓子を作り、味見する。
それは楽しい時間だったが、ふとアイロスのことが気にかかった。
アイロスは今日、リエルと会っているのである。
二人も楽しい時間を過ごしていたらいいな。
俺は小豆のごときタペを煮ながら、そう思うのだった。
翌日、1月22日。
午前6時に集まった俺達は、料理の仕込みを始めた。
「今週の菓子は、スイート・ダイナだよ。作り方を教えるね。まずダイナの皮を剥いて輪切りにしよう。ファナが皮むき、アディスが輪切りにしていこう」
「わかったわ!」
「了解です」
今週の露店の菓子は、スイート・ポテトのごときスイート・ダイナである。
俺は二人に作り方を教えながら、アイロスと共に、朝食の仕込みに励んだ。
俺達は調理に没頭し、料理を仕上げていった。
午前8時の鐘が鳴った。
従業員が顔を揃え、着席していく。
配膳はジュレ、お茶の準備をプリムがしていくれた。
「朝食の献立は、汁物料理がトーテムを使った兎汁と、コロッケを挟んだサンドイッチだよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は、一斉に食べ始めた。
揚げたてのコロッケがほくほくで美味しい。
兎汁も染み渡る美味しさだ。
「コロッケは久しぶりだねーっ! この料理は、お客にも評判が良かったよ!」
「じょ、常連さんが喜びそうですね」
「ふん。常連は毎日、美味いと騒いでおるわ」
プリム、ジュレ、リーズヘッグがそう言った。
「このサンドイッチも美味しいけどさ。あたしはアイロスの話が聞きたいな! 昨日リエルに会ってみてどう思った?」
「別に、どうもせん。喋っているのはお前ばかりだったろう。俺と二人ではさぞ気詰まりだろうな」
「リエルは寡黙で素敵な人だって、言ってたよ! リエルは材木屋で職人に囲まれて育ったから、無口な人にも慣れてるんだって! これからも、リエルに会う気はある?」
「俺は料理が一番だ。それが理解出来るのであれば、やぶさかでもない」
「つまり、リエルを気に入ったってことだよね! 良かったー! リエルはすっかりアイロスを気に入っちゃってるからさぁ」
「相手に困るような娘ではなかろうにな。俺などにかかずらっては、婚期が遅れるばかりだぞ」
「リエルは容姿も良いし、発育も良いから、しょっちゅう交際を申し込まれてたね! でも、気になる男性も今までいなかったんで、ずっとお断りしてたみたいだよ」
「ふん。せいぜい後悔せぬことだ」
アイロスは素っ気ないが、きっとリエルを気に入ったのだろう。
ファナは嬉しそうに笑って、サンドイッチにかぶりついたのだった。
食後は、料理の仕込みである。
俺とアイロスは昼の仕込み、ファナとアディスは、ミートソースの仕込みだ。
俺達は調理に没頭し、料理を仕上げていく。
午前10時半、ファナとアディスが、出発した。
ミートソースのパスタを200食と、スイート・ポテトのごときスイート・ダイナを200個、持っていった。
仕込みは大詰めであり、あと少しである。
午前11時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限だ。
並んでいたお客が、怒濤のように押し寄せてくる。
プリムが順番に案内をして、注文を取っていく。
ジュレは、お茶の配膳だ。
「1番から6番に1つずつねーっ!」
「あいよ!」
「1番テーブルに5つ、お願いします!」
「あいよ!」
俺は鍋を2つ使って、コロッケを揚げ始める。
揚がったら油を切って、フランスパンに挟みこみ、ソースをかける。
出来上がったサンドイッチを木皿に盛り付ける。
今日の汁物料理は、味噌のごときトーテムを使った兎汁だ。
付け合わせは、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスが担当している。
「1番から6番、上がったよ!」
「は、はい!」
「1番テーブルに5つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
注文はどんどん入ってきている。
俺は鉄鍋にコロッケを投入し、次々にサンドイッチを仕上げていく。




