婚姻の宴席
午後5時の鐘が鳴った。
50名のお客は勢揃いしており、給仕のプリムとジュレ、リーズヘッグも準備万端だ。
1番テーブルに婚姻する新婦と新郎、ご両親が座り、あとは適当にばらけて座っている。
全員に果実酒とお茶が配られており、乾杯の時を待っている。
宴席を企画した常連さんが前に出て、声を張り上げた。
「今日は祝いの席に集まってくれてありがとう。今日は仲間の婚姻を祝う宴席だ。新郎、新婦は末永くお幸せに! 料理は《竜の跳ね鳥亭》の料理長、キョウスケが取り仕切った6種の料理になる。じっくり味わって貰いたい。酒は飲み放題だから、好きなだけ騒いでくれ! 女神アウローシアの加護を!」
「乾杯!」
みんなで酒を飲み始め、前菜が配膳される。
「前菜の、兎肉とレバーのパテです。ごゆっくりお楽しみ下さい」
プリムがそう言って1番テーブルに配膳する。
届いたお客から食べ始め、お客は感嘆の声を上げる。
「食ったことのねえ味だな」
「すげえ美味いじゃねえか! びっくりしちまったよ」
「とっても美味しいわ」
どうやら、兎肉とレバーのパテは、気に入って貰えたようである。
俺は砂時計を確認し、石釜の扉を開けて、グラタンを取り出す。
木皿に盛り付けて、カウンターに並べていく。
「野菜料理は、フォンディのグラタンです。お熱いので、気を付けてお食べ下さい」
グラタンのあとは肉料理を焼かねばならない。
すぐに鉄板にあばら肉を並べて、焼いていく。
グラタンの反応も概ね好評のようだ。
お次は、パスタ料理である。
「サフア料理は、テテトとジェランのレィモンクリームソースパスタです。突き匙で巻き取ってお食べ下さい」
テテトはホタテ、ジェランはアスパラガスのごとき食材である。
このパスタは初の御披露目となるが、お味は如何だろうか。
「露店と味が違うんだな! 美味い!」
「食いづらいが、味は美味いな!」
「とっても美味しいわ!」
パスタの評判は良いようだ。
次は汁物料理である。
「汁物料理は、たっぷり野菜のポトフです。ごゆっくりお召し上がり下さい」
ジャガイモのごときフォンディ、ニンジンのごときメイリグ、キャベツのごときノーマ、各種キノコに、腸詰め肉もたっぷり加えている。
野菜の甘さがたまらない逸品だ。
肉料理が焼きあがったので、木皿に盛り付けていく。
お次は、肉料理だ。
「肉料理は、牛肉のあばら肉の照り焼きです。熱いので気を付けてお召し上がり下さい」
肉料理は、驚きの声が上がった。
見た目もインパクトのある、豪快な一品である。
「こりゃあ美味い! 甘じょっぱくて、肉が柔らかい!」
「さすが、今日はご馳走だな!」
「まあ、なんて美味しいの」
さあ、最後は菓子で締めくくる。
肉料理が豪快だった分、繊細さを求めた一品である。
「菓子は、ミルフィーユです。ごゆっくりお楽しみ下さい」
全て出し終え、お客の反応を見る。
イチゴのごときガルをカスタードクリームで挟んだミルフィーユは、見た目も華々しい。
「まあ、サクサクして、とても甘いわ」
「こりゃあ、美味い!」
「すげえ美味い菓子だな!」
どうやら、俺の仕事は終わったようだ。
同じく、盛り付けを担当していたアイロスも、ほっと息をついている。
さて、皿洗いでもするかと洗い場に向かうと、リーズヘッグに呼ばれた。
「新郎と新婦が是非、挨拶をしたいと言っとる。行けるか?」
「うん、大丈夫だよ」
俺は1番テーブルへ行き、挨拶をした。
「《竜の跳ね鳥亭》へようこそ。俺が料理長のキョウスケです。本日の料理は如何でしたか?」
「素晴らしく美味でした。こんなに美味しい料理は初めてです。俺達の祝いの為に、ありがとうございました」
「どのお料理も美味しかったけれど、私は野菜料理と菓子に心奪われましたわ」
「料理が口に合って、良かったです。どうか末永くお幸せに。今日はおめでとうございました。ゆっくりしていって下さいね」
俺は一礼して、調理場へ戻った。
店内は宴もたけなわ、すごい騒ぎである。
お酒もどんどん飲んでいるし、とても楽しそうだ。
俺は後片付けをしながら、やり切った気持ちでいっぱいだった。
多めに用意した料理は、俺達の晩餐になる予定である。
午後8時に解散だと聞いているので、まだ幾ばくか時間はある。
「では、聞いて下さい。『祝福の朝』」
プリムが歌い始めて、美しい歌声が響き渡る。
みんな、聞き惚れているようだ。
宴席の最後を飾る歌だ。
今日は3曲、歌う予定である。
俺は後片付けをしながら、素晴らしい歌に聴き惚れた。
そうして、宴席の一日は終わりを告げた。
大変だったが、良い経験になった。
実に楽しい一日であった。




