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ジーンとの別れ

 それからしばらくして、商団フォールンの団長ジーン率いる30名がご来店した。

 褐色の肌に、フードを被った集団である。

 俺は食後に、挨拶させて頂いた。

 

「《竜の跳ね鳥亭》へようこそ、ジーン。料理はご満足頂けましたか?」


「料理は全て美味でした。香草の料理、ここが一番落ち着いた味です。好ましい味わいです」


「そうですか。気に入って頂けたら嬉しいですよ」


「菓子も素晴らしい味わいでした。この町を離れるのが惜しいですね。あなたの料理は、とても珍しい。行列になるのも、納得です」


「この町を出立されるんですか?」


「はい。また様々な町を巡って、この町にやってきます。時期はお約束出来ませんが、またこの店に訪れます。また美味しい料理を期待しています」


「はい。では、道中お気を付けて。またのご来店をお待ちしておりますね。では、また」


 俺は手を振って、調理場に戻ってきた。

 少し寂しいが、仕方がない。

 俺は鉄鍋に唐揚げを投じた。


 午後8時半、ファナとアディスが帰還した。

 今日も全て売り切ったとのことである。

 二人は速やかに皿洗いを手伝ってくれた。


 それから、第三騎士隊隊長、ローガン率いる騎士12名が来店した。

 こちらも、俺は食後に挨拶させて頂いた。


「お待たせしました。《竜の跳ね鳥亭》へようこそ。俺が料理長のキョウスケです。料理のお味は如何でしたか?」


「おお、キョウスケ! 料理は全て美味だったぞ! こんな香草の料理はちょっと珍しい! 美味すぎて驚いたぞ!」


「お口に合ったのなら、光栄です。それで、前回お話を頂いた《六角亭》への訪問ですが、2月7日に10名でお伺いしたいと思います。ご予約は大丈夫でしょうか?」


「勿論大丈夫だ! 2月7日に10名だな。承ったぞ! 今度通行証を持ってくる。行き帰りはエミューの車を手配するからな! 通行証は、次に来たときに渡そう」


「ありがとうございます。どうぞ宜しくお願いいたします。では、またのご来店をお待ちしておりますね。では、失礼致します」


 俺は、調理場に戻り、唐揚げを揚げた。

 在庫も残り少ない。

 ラストスパートだ。

 

「5番、8番、12番、上がったよ!」


「は、はい!」


「6番テーブルに3つ、上がったよ!」


「はーいっ!」


 俺は菓子の準備をしつつ、店内を眺める。

 お客は陽気に騒ぎ、料理を楽しんでいる。

 俺はそれに満足し、作業に集中するのだった。




 午後9時の鐘が鳴った。

 閉店の刻限である。

 お客がどんどんはけていき、最後の1人まで帰ったら、店に鍵をかける。

 ジュレとプリムは、店内の清掃。

 リーズヘッグは、金勘定。

 ファナとアディスは、皿洗いだ。

 俺とアイロスは、晩餐の支度を始めている。


 今日は牛肉を薄切りにして、キャベツのごときノーマと、タマネギのごときカペラ、ニンジンのごときメイリグを豆板醤のごときウルドゥを使って炒めた。

 出来上がった料理は、カウンターに並べていく。

 配膳はジュレ、茶の準備はプリムがやってくれた。


「お待たせしたね。晩餐の献立は、汁物料理は兎肉のカレー。肉料理は、ウルドゥを使った牛肉の炒め物。付け合わせは、ナッセとデリカの中華風サラダと、ケリパの煮びたし。輪切りにしたフランスパンを添えて、菓子は、ミルクレープを準備しているよ。さぁ、召し上がれ」


 俺達は突き匙を取り上げ、一斉に食べ始めた。

 牛肉が豆板醤のごときウルドゥのチリソースでピリ辛の美味しさだ。

 俺はフランスパンを千切り、口の中に放り入れる。


「ローガンに2月7日に《六角亭》へ、10名で予約したいって、伝えたよ。次に来るときに、通行証を持ってきてくれるってさ。行き帰りはエミューの車を手配してくれると言われたよ。何かお礼を考えなくちゃな」


「焼き菓子でも焼いてやれば良かろう。問題はいつ来るかわからないことだな」


「そうだねえ。ある程度は日持ちするけど、出来れば作った当日に渡したいね」


 リーズヘッグと俺がそう話していると、ファナが話しかけてきた。


「じゃあ、毎日焼いておいて、来なかったらあたしにちょうだい! 家族にも友達にも、甘味は喜ばれるわ。ね? 良い考えでしょ」


「ふむ。それなら廃棄せずに済むな。では、そのようにしよう」


「やったぁ! じゃあ、来週を楽しみにしてるわ」


 ファナはご機嫌に、汁物料理をすすった。

 俺はみんなの皿が空いた頃合いで、菓子を配膳した。

 お客にも、ミルクレープは好評だった。

 夜はゆっくりと更けていき、俺はミルクレープを堪能するのであった。




 1月14日、休日。

 ファナとアディスはお休みで、今日は夜のみの臨時営業だ。

 常連さんの宴席で、仲間が婚姻するのだそうだ。

 人数は、50名。

 前菜、野菜料理、パスタ料理、汁物料理、肉料理、菓子をお出しする。

 俺とアイロスは朝食後、すぐに準備に取り掛かった。

 まずは、前菜からである。


 前菜は、兎肉とレバーのパテ。

 貴族の宴席で、出した料理である。

 俺は兎肉を刻み、アイロスはレバーを洗っている。

 今日は長丁場なので、気合いを入れて作業していく。


 パテの付け合わせは、レタスのごときイルマと、トマトのごときイノッサのサラダと、ピクルス、マスタードを添える。


 そして野菜料理は、ジャガイモのごときフォンディのグラタンである。

 新婦さんが乾酪を好きと聞いたので、この献立に決めた。

 すでにジャガイモのごときフォンディを茹でており、準備は万全だ。


 そうして料理に没頭し、昼食も食べたならば、汁物料理に手を付ける。

 次に肉料理、次に菓子。

 着々と準備が進んでいく。

 そして、全ての準備が整った。

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