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《六角亭》の料理とは

 午前10時半、ファナとアディスが出発していった。

 ナポリタンを200食、イチゴ大福のごときガル大福を200個、持っていった。

 俺はフランスパンに切り込みを入れ、乳脂を塗っていく。

 アイロスは汁物料理の味付けだ。

 今日も作業は無事に終わりそうであった。


 午前11時の鐘が鳴り響く。

 開店の刻限である。

 並んでいたお客が怒濤のように押し寄せてくる。

 プリムが順番に案内をして、ジュレがお茶を配膳していく。

 

「1番から6番まで、1つずつね!」


「あいよ!」


「1番テーブル4つ、2番テーブル6つです!」


「あいよ!」


 俺は鍋を2つ使って、肉を焼いていく。

 焼きあがったら、食べやすい大きさに切り分けて、フランスパンに挟んでいく。

 昼は毎日同じ付け合わせで、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。

 付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスが担当してくれる。


「1番から6番まで、上がったよ!」


「は、はい!」


「1番テーブルに4つ、上がったよ!」


「はーいっ!」


 俺は鉄鍋に肉を投じる。

 注文は続々と入ってくる。

 俺は次から次へ肉を焼いていく。


「2番テーブルの6つ、上がったよ!」


「は、はい!」


「7番から12番まで、上がったよ!」


「はーいっ!」


 店内は満員御礼、すごい熱気である。

 俺は肉を焼きながら、しばしその喧噪に身を委ねるのだった。




 しばらく時間が過ぎて、午後2時半。

 ファナとアディスが帰還した。

 今日も全て売り切ったとのことである。

 二人は速やかに皿洗いを手伝ってくれた。


 そして午後3時の鐘が鳴った。

 どんどんお客がはけていき、最後の1人まで帰ったら、休憩時間だ。

 プリムとジュレは、店内の清掃。

 リーズヘッグは金勘定、俺とアイロスは、昼食の仕込みである。


 今日の昼食の献立は、汁物料理がトマトのごときイノッサの洋風スープに、肉料理が牛肉の果実酒煮込み。付け合わせはエビのごときタピとパプリカのごときディラーのレィモン乳脂炒めと、キノコ2種類とブロッコリーのごときセルルのナムルだ。輪切りのフランスパンを添えて、菓子は、紅茶のごときジュピターのシフォンケーキを作る予定だ。


 アイロスには付け合わせと汁物料理を任せて、俺は肉を切り分ける。

 肉は牛すね肉を使用し、食べやすい大きさに切る。

 タマネギのごときカペラをみじん切りにし、ニンニクのごときダッキを縦半分に切る。

 肉に塩、黒胡椒をふり、サフアをまぶす。

 鉄鍋にマオマオの油を入れて熱し、ニンニクのごときダッキを入れて香りが立つまで弱火で炒める。

 牛肉を加えて両面に焼き色がつくまで中火で炒め、牛肉を取り出す。

 同じ鍋にマオマオの油を加え、タマネギのごときカペラを加えて色づくまで中火で混ぜながら炒める。

 牛肉を戻し入れ、サフアを加え、粉っぽさがなくなるまで炒め合わせる。

 トマトのごときイノッサと果実酒、水を加えて混ぜる。

 5分ほど煮立たせてふたをし、ときどき混ぜながら1時間ほど弱火で煮る。

 塩を加えて味をととのえる。

 器に盛り、生クリームをかけて、牛肉の果実酒煮込みの完成だ。

 フランスパンを輪切りにして添えて、料理を配膳する。

 

「お待たせしたね。昼食の献立は、汁物料理はイノッサの洋風スープに、肉料理が牛肉の果実酒煮込み。付け合わせはタピとディラーのレィモン乳脂炒めと、キノコ2種類とセルルのナムルだ。輪切りのフランスパンを添えて、菓子は、ジュピターのシフォンケーキを用意しているよ。さぁ、召し上がれ」


 俺達は突き匙を取り上げ、一斉に食べ始めた。


「これは……美味いな。肉を果実酒で煮込む料理は今までもあったが、こいつは最高のご馳走だ。1時間も煮込んだ甲斐があったな」


 アイロスがそう感想を述べてくれた。


「こいつは前に作った果実酒煮込みと味を変えているな? こっちの方が美味い」


「ちょっと作り方を変えてみたんだ。美味しく出来ているなら、頑張って良かったよ」


 リーズヘッグが褒めてくれたので、とても嬉しい。

 俺も渾身の牛肉の果実酒煮込みをゆっくりと味わった。

 この料理を宴席で出そうか、とも思ったのだが、似た料理なら店で出したことがあるし、せっかくなら新しい料理でおもてなししたいので、取りやめることにした。


「夢のように美味しいですねぇ。俺は教師時代、店の料理の食べ比べが趣味でした。あの《六角亭》にも行ったことがあります。しかし、キョウスケの料理の方が美味しいですよ」


「えーっ! 《六角亭》って、貴族御用達の超人気店じゃない! 城下町にあって、予約がないと入れないんでしょう?」


「ええ、そうですね。元生徒が城下町の民と婚姻しましてね。そのお祝いで、石塀の中に入る事が出来ました。あれは一生の思い出ですが、料理は味が濃いめで、とにかく乳脂の香りが強かったです。俺は、キョウスケの料理の方が好きですね」


「そんな人気店と比べられても恐れ多いばっかりだけど……俺の料理を美味しいと思って貰えて嬉しいよ。ありがとう」


 アディスとファナの話で、《六角亭》のことを知ることが出来た。

 城下町の人気店の料理がどんな味なのか、少し興味がある。

 先日来た騎士達は、そういう料理を食べ飽きているんだろう。

 それで、薄味の俺の料理が口に合ったのかもしれない。

 丁度良いので、菓子を配膳させて頂いた。

 今日の菓子は、紅茶のごときジュピターを入れたシフォンケーキである。

 食べるとジュピターの香りが鼻に抜けていく。

 文句のない美味しさだ。

 俺達はしばし談笑しながら、休息のひとときを過ごすのだった。

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