新年の開始
翌日、1月1日。
午前6時に、裁縫屋の娘さんのファナ、元教師のアディス、そしてアイロスが揃った。
「おはよう。じゃあ、今日から新しい菓子を売っていくよ。献立は、ガトーショコラ。ファナにはヨーデルの焙煎を頼むよ。アディスはサフアを振るっておいてくれ」
「わかったわ!」
「わかりました」
「アイロスは、今日の付け合わせと、汁物料理をお願いするよ。今日はイノッサを使った汁物料理だ。野菜はカペラ、ビトー、ノーマだ。味付けは果実酒と砂糖、イノッサだ。出来上がったら、塩、黒胡椒で味を整えてね」
「わかった」
アイロスは、野菜の切り分けを始めた。
俺は兎肉を1枚ずつ、切り分けていく。
今日は味噌ダレにしよう。
肉を切り分けたら、味噌ダレを作る。
やがて、全ての料理が仕上がった。
ファナとアディスも、400個のガトーショコラを作り終えた。
味見もしてもらったが、大好評である。
ファナもアディスも、甘味は好んでいるそうだ。
午前8時の鐘が鳴る。
従業員がみんな集まった。
配膳はジュレ、お茶の準備はプリムがしてくれた。
「お待たせしたね。朝食の献立は、イノッサを使った汁物料理と、トーテムの兎肉ソテーを挟んだサンドイッチだ。さぁ、召し上がれ」
俺達は一斉に食べ始めた。
味噌ダレのサンドイッチは塩気がきいていて、とても美味しい。
汁物料理も、過不足のない仕上がりだ。
みんな、美味しそうに食べてくれた。
「今日から新年だ。客は減るはずだが、予想がつかない。今年も宜しく頼むぞ」
リーズヘッグの挨拶に、みんな頷いた。
食事が済んだら、昼の仕込みである。
ファナとアディスは、ミートソースの仕込みだ。
「あたしが肉をミンチにするわ。アディスは野菜を刻んでちょうだい」
「いいよ」
二人の雰囲気は悪くない。
俺は安心して昼の仕込みに没頭した。
そして10時半に、ファナとアディスが出発していった。
ミートソースのパスタが200食、ガトーショコラが200個。
祝福祭は終わったが、売り切れるだろうか。
そして、《竜の跳ね鳥亭》では、1月になったらパスタとサンドイッチを交互に売る予定を取りやめた。
露店を継続するなら、必要なかろうという判断である。
お客はしっかりした肉を求めていると思うので、パスタだとその点が弱くなってしまう。
なので、昼はサンドイッチを売っていくと決められたのだった。
午前11時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限だ。
今日も行列が出来ており、お客は怒濤のごとく押し寄せてくる。
プリムが順番に案内をして、注文を取っていく。
ジュレは、お茶を配膳する。
「1番から6番に1つずつね!」
「あいよ!」
「1番テーブル3つ、2番テーブルに4つです!」
「あいよ!」
俺は鍋を2つ使い、鉄鍋に肉を投じる。
焼き上がったら味噌ダレを絡め、食べやすい大きさに切る。
フランスパンに挟み込み、木皿に盛る。
付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスの担当だ。
昼は毎日同じ付け合わせで、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
今日もアイロスのサポートが完璧だ。
「1番から6番、上がったよ!」
「は、はい!」
「1番テーブルの3つと2番テーブルの4つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
注文は次々に入ってくる。
俺は肉を焼き続け、注文をさばいていく。
「7番から12番、上がったよ!」
「は、はい!」
「3番テーブルの4つ、4番テーブルの4つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
そろそろ帰るお客も出て来たが、すぐにお客が入ってくる。
お会計はリーズヘッグが承り、プリムとジュレはお客の応対だ。
「5番テーブルの5つ、6番テーブルの4つ、上がったよ!」
「は、はい!」
「2番と5番に1つずつね!」
「あいよ!」
俺は鉄鍋に肉を投じ入れ、焼き上げていく。
焼けたら味噌ダレを絡めて、食べやすい大きさに切る。
フランスパンに挟み込み、木皿に盛る。
「2番と5番、上がったよ!」
「は、はい!」
「2番テーブルに4つねー!」
「あいよ!」
俺は肉を焼き続け、店内は熱気に満ちていくのだった。




