旅芸人との別れ
時間が過ぎて、午後8時半、ダビとルルイエが帰還した。
今日も全て売り切ったとのことである。
二人は速やかに、皿洗いを手伝ってくれた。
ナターシャ達、旅芸人の5人が入ってくると、店内がざわめく。
天を突くような大男が4人もいるのだ。
ナターシャ達は、奥のテーブルに案内された。
「6番テーブル、5つね!」
「あいよ!」
俺は肉を掴み取り、油に投じ入れる。
揚がったら油を切り、木皿に盛り付ける。
「6番テーブル、5つ上がったよ!」
「はーいっ!」
「5番テーブルの菓子が上がったよ!」
「は、はい!」
俺は菓子をカウンターに並べていく。
「6番、10番、12番と、1番テーブルの菓子が上がったよ!」
「はーいっ!」
店内は熱気に満ちており、お客もまだまだ入ってくる。
「1番、4番に1つずつね!」
「あいよ!」
「1番テーブルに5つお願いします!」
「あいよ!」
そしてしばらく経って、午後9時の鐘が鳴った。
閉店の刻限である。
残っているお客に菓子を出し、注文をさばいていく。
お客がどんどんはけていき、最後の1人も帰ったら、店に鍵をかける。
俺とアイロスは晩餐の仕込み、プリムとジュレは、店内の清掃、リーズヘッグは金勘定、ダビとルルイエは、皿洗いである。
俺は牛肉とタマネギのごときカペラを薄切りにし、炒めていく。
醤油のごときユーカンで味付けをして、火が通ったら盛り付ける。
ジュレが配膳をしてくれて、プリムがお茶の準備をする。
「お待たせしたね。汁物料理が兎肉のカレーと、肉料理がユーカンで味付けした牛肉の焼肉。付け合わせはイノッサとイルマのミロ風サラダと、ナッセのピリ辛漬け。輪切りにしたフランスパンと、菓子は、ネレボロのゼリーだよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は突き匙を取り上げて、一斉に食べ始めた。
牛肉も柔らかくて美味しいし、カレーも過不足のない味わいだ。
俺は付け合わせを楽しみながら、フランスパンを千切って口に放り入れた。
食事を進めていき、みんなの皿が空いた頃合いで、菓子を配膳した。
「んーっ! ネレボロのゼリーは美味しいね! 疲れが吹き飛ぶよ!」
「そ、そうですね。酸味でさっぱりします」
「ぷるぷるして面妖だが、美味い」
プリム、ジュレ、リーズヘッグの順に感想を言ってくれた。
「俺もこのネレボロのゼリーは好物だね。今度、ガルのゼリーも作ってみようかな。きっと、美味しいよ」
「そりゃあ、美味そうだ。出来れば今月中に作ってくれよ? 来月はいつ味わえるかわからないからな」
「ガルって甘酸っぱくて、とっても美味しいわよね……」
ガルは、イチゴのごとき果実である。
ダビとルルイエのいるうちに、作ってみよう。
俺はそう決意するのだった。
12月30日。
今日も午前6時に集合した俺達は、仕込みに没頭していた。
俺とアイロスが朝食の仕込み、ダビとルルイエがペリルのパウンドケーキの作成だ。
今日が最後とあって、二人とも気合いが入っている。
やがて時間が過ぎて、料理が全て完成した。
午前8時の鐘が鳴る。
従業員と、ナターシャ達旅芸人の5人が揃う。
ジュレが配膳をし、プリムがお茶の準備をする。
「お待たせしたね。朝食の献立は、トーテムを使った汁物料理、ユーカンとチコの実を使ったサンドイッチ、菓子はガルのゼリーを用意しているよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は木匙を取り上げて、一斉に食べ始めた。
味噌汁をすすりこみ、サンドイッチをかじる。
俺とプリムとアイロスと旅芸人5人の分は、辛口に仕上げている。
食べてみると、はっきり辛い。
しかし、とても美味しい。
食事を進めていき、みんなの皿が空いた頃合いで、菓子を配膳した。
「ガルのゼリー、早速作ってくれたんだな。……うん、甘くて美味いよ」
「とっても……美味しいわ……」
ダビとルルイエに、喜んで貰えて良かった。
俺も甘酸っぱいゼリーを味わう。
「今日は祝福祭の最終日だ。領主から振る舞い酒が樽で届いておる。飲むかは、客に聞いてくれ」
「はーいっ!」
「わ、わかりました」
プリムとジュレが返事をした時だった。
ナターシャがひょっこり顔を出した。
「ご歓談の最中、お邪魔しますよぉ。あたしらは明日この町を出るんでねぇ。お世話になるのも今日までってことになるんでさぁ。毎日、すっごく美味しかったよぉ。ありがとさんでした。来年の祝福祭もこの町にやってきますんでねぇ。そしたらまたこの店に食べに来ますよぉ」
「はい、わかりました。料理を気に入って頂けて、光栄です。じゃあ、また来年に」
ナターシャは全員分の料金を支払って、大男達を引き連れて帰っていった。
食後は、昼の仕込みに従事する。
俺とアイロスは、昼の仕込み。
ダビとルルイエは、ナポリタンの仕込みだ。
2時間程が過ぎて、午前10時半。
ダビとルルイエが出発していった。
俺はフランスパンに切り込みを入れて、乳脂を塗っていく。
午前11時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限だ。
お客がすごい勢いでなだれ込んでくる。
プリムが順番に案内し、ジュレがお茶を配膳する。
「1番から6番、1つずつねーっ!」
「あいよ!」
「1番テーブルに4つです!」
「あいよ!」
昼の付け合わせは、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
アイロスは付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けを担当してくれる。
俺は鉄鍋を2つ用意して、マオマオの油を敷き、肉を投じる。
色が変わってきたらひっくり返して、醤油のごときユーカンと、赤唐辛子のごときチコの実を使って味付けをする。
鍋から取り出した肉を食べやすい大きさに切る。
フランスパンに肉を挟んで、完成だ。
仕上がったら、木皿に盛り付ける。
「1番から6番、上がったよ!」
「はーいっ!」
「お次、1番テーブルに4つ、上がったよ!」
「は、はい!」
お客は満員御礼、注文が山積みだ。
俺は肉を鍋に投じ入れる。
お客の多くは振る舞い酒を希望し、和気あいあいと騒いでいる。
俺は肉に味付けをして、鍋を振るう。
忙しない時間を過ごしながら、俺は充実した心地を抱くのであった。




