新しい仲間の予感
翌日の、12月22日。
午前6時に集合し、意気揚々と仕込みを始めた俺達である。
俺とアイロスは、朝食の仕込み。
ダビとルルイエは、スイート・ポテトのごときスイート・ダイナの作り方を習得中である。
ダビはサツマイモのごときダイナの皮むき。
ルルイエは、剥き終わったダイナを輪切りにしていく。
「ダビ、知り合いに露店をやってくれそうな人はいたかな?」
「おお、それがさぁ。知り合いは全滅だったんだけど、話を聞いていた裁縫屋の娘が是非やりたいって、立候補してきたんだよ。あんまり喋った事もなかったんだけど、やる気はあるってさ」
「どうやら……裁縫の才能はないみたいなの……。それで、料理は得意だって言っていたわ……。この店の料理は食べたことないから、今日店に来るって言ってたの……」
「そうなんだね。仕事内容は納得して貰えたのかな?」
「ああ。なんでもやるって言ってたよ。ただ、年が20歳なんだけど、嫁の貰い手がなくてキリキリしてるんだ。ここの料理を覚えて、早く婚姻したいらしいぜ」
「あともう一人が男性だから……うまくやっていけるか、少し心配だわ……」
「え? もう一人も、見つかっているのかい?」
「知り合いが紹介してくれたんだ。元教師で、26歳の男だ。計算が得意だって言うから、金勘定を担当して貰おうと思ってさ。仕事内容も納得して貰ってるぜ」
「少し……気の弱そうな男性だったわ……。あと、驚くほど器量が良いの……。顔が原因で教師を辞めたって言ってたけど、納得しちゃったわ……」
「そうなんだね。性格の違う二人で、仲良く仕事をしてくれるといいね。とにかく、人手は集まったわけだ。凄く嬉しいよ。ありがとう、ダビ、ルルイエ」
ダビとルルイエは、胸を張って微笑んだ。
そして、仕込みに熱中する。
やがて、全ての料理が仕上がった。
ダビとルルイエも、スイート・ダイナを400個焼き上げた。
午前8時の鐘が鳴り、従業員と、旅芸人のナターシャ達も着席した。
配膳はジュレ、お茶の準備はプリムがしてくれた。
「今日の献立は、汁物料理が兎肉のカレー、イノッサ風味の兎肉のソテーを挟んだサンドイッチ、菓子はロールケーキ。俺とアイロスとプリムの分だけ、カレーは辛口だよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は一斉に食べ始めた。
サンドイッチは、イノッサの酸味が食欲をかき立てる。
汁物料理のカレーの味を見てみると、はっきりと、辛い。
しかし、美味だ。
《鯨空亭》をはじめとするカレーを売っているお店と比べても、負けていない。
「辛いが、美味だな。これは客に売れる出来映えだ」
「あたしも美味しいよーっ! この位の辛さなら、リリアも気に入ると思うよっ!」
「ありがとう。俺も辛さはこれ位が美味しいと思うんだ」
アイロスとプリムの感想を聞いて、早くリリアに食べさせたいと切実に思う。
そして料理を食べ終えたら、菓子を配膳する。
「お待たせ。新作のロールケーキだよ」
鉄板に流し込んで焼いた生地に、クリームを塗ってくるくる巻いたケーキである。
お味は、甘くて柔らかくて、実に素晴らしい味わいであった。
「うわぁ、生地がふんわりしてるねっ! とっても美味しいよーっ!」
「す、すごく美味しいです」
「うむ。美味い」
「俺も美味いぜっ!」
「美味しいです……」
「美味い」
プリム、ジュレ、リーズヘッグ、ダビ、ルルイエ、アイロスの順に、感想を述べ立てる。
ロールケーキはみんなに気に入って貰えたようで、一安心だ。
その後は露店用の新人の話をした。
「ふむ。裁縫屋の娘なら俺も知っとるぞ。気の強い娘だ。婚期を焦っとる女と、容姿の整った男か……。あまり平和に済む気がしないな」
「まあまあ、一度会わせてみて、相性を確かめてみようぜ!」
「やる気はあったから……宜しく頼むわ……」
リーズヘッグ、ダビ、ルルイエが、そのように言う。
俺も会わせてみて、相性を確かめるしかないと思う。
願わくば、良い人材でありますように。
さて、食後は昼の仕込みである。
ダビとルルイエはミートソースの仕込みだ。
俺達は仕込みに没頭し、時間が過ぎていく。
午前10時半、ダビとルルイエは、出発していった。
仕込みもあとひと息である。
俺はロールケーキを焼いている。
アイロスはフランスパンに切り込みを入れ、乳脂を塗っていた。
午前11時の鐘が鳴る。
開店の刻限である。
お客さんが怒濤のごとく、押し寄せてくる。
プリムが順番に注文を取り、ジュレがお茶を配膳する。
「1番から6番、1つずつ!」
「あいよっ!」
「1番テーブルに4つ、2番テーブルに2つです!」
「あいよっ!」
俺は鉄鍋を2つ使い、肉を投入する。
火が通ったら、トマトのごときイノッサの煮汁とからめる。
食べやすい大きさに切り、フランスパンに挟む。
出来上がったサンドイッチを木皿に盛り付ける。
汁物料理の取り分けと、付け合わせの盛り付けは、アイロスが担当してくれた。
付け合わせは、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
「1番から6番、上がったよ!」
「はーいっ!」
「1番テーブルに4つ、2番テーブルに2つ、上がったよ!」
「は、はい!」
注文は続々と入ってきている。
店内は満員御礼、すごい熱気だ。
俺は楽しい気持ちで、肉を焼き続けるのだった。




