パスタは人気がある
みんなの皿が空いた頃、菓子を配膳した。
スコーンはふっくらと丸く焼き上がっており、実に美味そうである。
ぱかりと二つに割って、ジャムをつけて頬張る。
途端に、サクサクした歯ごたえと芳醇な甘さが口の中に広がった。
焼き加減も、申し分ない。
俺はスコーンをゆっくり堪能するのだった。
俺とアイロスは、夜の仕込み、ダビとルルイエは、カルボナーラの仕込みだ。
俺達はお互いの邪魔にならないように気を配りながら、作業を進めていった。
そして午後4時半、ダビとルルイエは、出発していった。
俺はスコーンの焼き上げに従事し、慌ただしく時間は過ぎていく。
午後5時の鐘が鳴る。
開店の刻限だ。
並んでいたお客が、怒濤のように、押し寄せてくる。
プリムは順番に注文を取り、ジュレはお茶を配膳していく。
注文が次々に入り、俺は煮込みハンバーグを盛り付ける。
汁物料理の取り分けと、付け合わせの盛り付けは、アイロスに安心して任せる事が出来た。
「1番から6番、上がったよ!」
「は、はい!」
「お次1番テーブル、6つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
今日は皿に盛るだけなので、提供が早い。
どんどん注文をさばいていく。
「おう、歌の上手い姉ちゃん。今日の肉料理はとびきり美味いなぁ」
「うん。煮込みハンバーグっていうんだよ。イノッサの煮汁が美味しい新作だね!」
「新作と言えば、露店でパスタを食ったよ。すげえ美味かった! 菓子も絶品だったな!」
「へえ、そんなに美味いのかい?」
「ああ、毎日違う味を出しているんだよ」
常連のお客さんは、丁寧に露店の料理の美味しさを説明していた。
パスタを食べたという人が結構おり、あと菓子が美味かったと、口々に言う。
「早めに行かねえと菓子は売り切れちまうから、注意してくれよ」
「わかった。休み明けに行ってみるよ」
「姉ちゃん。今日も美味い菓子が用意されてるよな?」
「もっちろん。今日はスコーンっていう新作だよ! じゃあ、菓子を持ってくるね!」
そして、プリムとジュレが菓子を配膳していく。
「こりゃあ、美味いな!」
「ああ、こんな菓子、食ったことがねえよ!」
「この店は料理も菓子も、絶品なんだ。うちの工房でも話題になってるぜ」
ありがたい事に、スコーンは大好評のようである。
俺は煮込みハンバーグを盛り付けて、日替わりを仕上げていく。
「5番テーブルの4つと、3番テーブルの菓子が4つ、上がったよ!」
「は、はい!」
それからしばらく、料理を提供し続けた。
予約のお客さんもやってきて、プリムの歌に聴き惚れる。
祝いの席に、俺の料理が華を添えられれば幸いである。
午後8時半、ダビとルルイエが帰還した。
今日も全て売り切ったとのことである。
二人は速やかに皿洗いを手伝ってくれた。
それから少しして、ナターシャ達も来てくれた。
全員赤い服の、異様な一団であるが、店内は少しざわつく程度で済んでいた。
明日は休日だが、朝食は提供することを、既にリーズヘッグとナターシャが話し合い、決めている。
俺はせっかくなので、明日の朝食はパスタにしようかなぁと、思案するのだった。
午後9時の鐘が鳴り響く。
閉店の刻限だ。
次々とお客ははけていき、最後の一人まで帰ったら、鍵を閉める。
俺とアイロスは晩餐の仕込みを始める。
俺は兎肉と野菜を味噌のごときトーテムで焼き上げ、盛り付けていく。
汁物料理の取り分けと、付け合わせの盛り付けは、アイロスがしてくれた。
「お待たせしたね。汁物料理はクリームシチュー、肉料理はトーテムを使った肉野菜炒めだよ。菓子はスコーンを用意しているからね。さあ、召し上がれ」
みんなで突き匙を取り上げ、食べ始める。
みんな美味しそうに食べてくれているので、満足だ。
「明日、知り合いをあたってくるからさ。月に黒銅貨150枚は稼げるよな? ちっと忙しいけど、割りの良い仕事だし、きっとやる奴がいると思うんだよなぁ」
「基本給で黒銅貨150枚は約束しよう。後は働きに応じて増やしていく。遅刻や態度が悪い場合は、減給とさせて頂く」
「大丈夫……やり遂げられる人を選ぶわ……」
ダビとリーズヘッグ、ルルイエが、そのように話していた。
俺は菓子を配膳し、席に着く。
「アロイス、明日は晩餐会の料理の試作をしたい。アロイスにも作り方を覚えて貰いたいから、朝6時から調理場に来て貰えるかな?」
「わかった。楽しみにしている」
「リーズヘッグ、そんなわけで明日の晩餐は6種の料理を出したいんだけど、許可を貰えるか?」
「勿論、良いとも。晩餐は午後5時開始とする。必要な食材は明日の早朝に買いつけてくるから、後で教えてくれ」
「わかった。宜しく頼むよ」
俺はスコーンを頬張りながら、リーズヘッグを頼もしく思った。
翌日の休日は、一日がとても充実していた。
一日中、料理に没頭した。
初めて作る料理もあったが、問題なく作ることが出来た。
アイロスにも作り方をたたき込み、1月7日の段取りを構築した。
午後5時に始まった試食会は、大好評で終えることができた。
あとは、本番を待つばかりである。




