物凄い熱気
それから時間が過ぎて、午後2時半、ダビとルルイエが帰還した。
「今日も全部売り切ってやったぜ! すげえ行列が出来ちまって、いくらパスタを茹でてもおっつかねえの! パスタの人気は、日増しに増えて行ってる感じだぜー?」
「今日も菓子が足りなかったわ……。それと、来月も露店を出してくれ、って言われるの……」
「二人ともお疲れ様。来月の露店に関しては、リーズヘッグと相談するよ。ありがとうね」
ダビとルルイエは速やかに皿洗いを手伝ってくれた。
そして午後3時の鐘が鳴り響く。
閉店の刻限だ。
お客は次々とはけていき、最後の一人まで帰ったら、休憩時間だ。
ジュレとプリムは店内の清掃、俺とアイロスは昼食の仕込み、リーズヘッグは金勘定、ダビとルルイエは皿洗いである。
「昼食の献立は、ユーカンの汁物料理と、肉料理が牛肉の果実酒煮込み。付け合わせに甘く煮たメイリグと、素揚げにしたフォンディに塩を振ったもの。それに輪切りにしたフランスパンを添える。菓子はシフォンケーキだよ。まずは、付け合わせの作り方だね」
「うむ」
「メイリグの皮を剥き、一口大に切る。それをたっぷりのお湯で茹でる。串が刺さる位柔らかくなったら、砂糖と塩を加える。味がしみこむまで弱火で煮れば完成さ」
「わかった。作ってみる」
アイロスがニンジンのごときメイリグを切り分けている間に、俺は牛肉をある程度の塊に切り分ける。
それを鉄鍋に入れ、果実酒を注ぐ。
中火で鉄鍋を熱し、一煮立ちしたら弱火に切り換えて、じっくり煮込む。
煮ている間に、シフォンケーキの作成だ。
卵白に砂糖を入れ、ツノが立つまでしっかり泡立て器で泡立てる。
別の器に卵黄と砂糖を入れ、白っぽくなるまで泡立てる。
そこにマオマオの油と水を加えて、よく混ぜる。
その後、振るったサフアと天然酵母を入れてよく混ぜる。
メレンゲを2~3回に分けて木べらでさっくりと切るように混ぜる。
型に生地を流し入れ、予熱した石釜で40分焼く。
焼き上がったら瓶にさして逆さにして冷ます。
粗熱が取れたら型から外して、完成だ。
ちなみにこの型も細工屋に特注したものである。
シフォンケーキを焼いている間に、アイロスにフォンディの素揚げの作り方を教えていく。
「フォンディはこれ位の大きさに切って、鉄鍋にマオマオの油を熱し、素揚げをする。揚がった後は油を切って、塩を振りかけて完成だ」
「わかった」
それから牛肉の果実酒煮込みに塩、黒胡椒で味を整え、木皿に盛っていく。
付け合わせはアイロスが盛り付ける。
俺はフランスパンを輪切りにし、カウンターに並べていく。
やがて全ての料理が仕上がった。
ジュレが配膳をし、お茶をプリムが準備する。
「お待たせしたね。昼食の献立は、ユーカンの汁物料理と、肉料理が牛肉の果実酒煮込み。菓子はシフォンケーキを準備していいるよ。さぁ、召し上がれ」
皆で突き匙を取り上げ、食べ始める。
牛肉の果実酒煮込みは、ほろほろに柔らかく煮込まれた牛肉が実に美味である。
「これは……美味いな。牛肉がとろけるように柔らかい。果実酒の風味も味に深みを与えている」
アイロスは牛肉の果実酒煮込みを気に入ってくれたようだ。
「お肉も美味しいけど、わたしは菓子が気になっちゃうなーっ!」
「そ、そうだね。期待で胸がはちきれそうだ」
「俺も新作の菓子が気になるぜ!」
「お肉も美味しいから……期待しちゃうわよね……」
「俺はこの肉に衝撃を受けたぞ。本当に美味いな」
プリム、ジュレ、ダビ、ルルイエ、リーズヘッグの順に感想を述べてくれた。
「じゃあ、そろそろ菓子を出すね」
俺は席を立ち、菓子を配膳した。
見た目は尋常なサフアのケーキである。
ちなみに、生クリームは添えていない。
お客に提供するたびに生クリームを泡立てるわけにはいかないからだ。
「柔らかくて、優しい口当たりだねっ! 期待してたとおり、すっごく美味しい!」
「ぼ、僕も美味しいです。こんな焼き菓子は初めて食べます」
「ふん。こういう優しい味わいの菓子は好みだぞ」
プリム、ジュレ、リーズヘッグの順に感想を述べ立てた。
今度は紅茶のシフォンケーキを作ってもいいなぁ。
俺はシフォンケーキを食べながら、そう思うのだった。
その後は夜の仕込みに明け暮れ、午後4時半、ダビとルルイエが出発していった。
俺はシフォンケーキを焼いていた。
仕込みもあとひと息で終わりである。
午後5時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限である。
並んでいたお客を順々に案内していくプリムと、茶の準備をするジュレ。
そして注文が入り始める。
「1番テーブルに4つと、1番から6番に1つずつね!」
「あいよ!」
「2番テーブルに6つと、3番テーブルに2つです!」
「あいよ!」
俺はかたまり肉を切り分け、盛り付ける。
付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスが担当してくれる。
「1番テーブルの4つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
「お次、1番から6番に1つずつ、上がったよ!」
「は、はい!」
俺は肉を切り分け続ける。
「2番テーブルの6つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
それから、しばらく忙しない時間が過ぎた。
客席は満員御礼、物凄い熱気である。




