雨期は6月
配膳はジュレ、茶はプリムが用意してくれた。
「お待たせしたね。汁物料理は兎肉のカレー、肉料理は牛肉のファンとポーロの炒め物。菓子はミルフィーユだよ。どうぞ召し上がれ」
皆で突き匙を取り上げ、食べ始める。
牛肉の炒め物は、過不足のない味わいである。
俺はフランスパンを千切って、口に放り入れた。
「それにしても、あの旅芸人の男の人、おっきかったねーっ! 芸って軽業師かなぁ。ちょっと気になっちゃうよねーっ!」
「ぼ、僕は旅芸人の方を見るのは、初めてです。吟遊詩人なら、会ったことがあるんですけれど、異様な雰囲気でしたね」
「ふん。明日から顔を突き合わせて朝食を食うんだぞ。あの異様さにも慣れちまうかもしれんな」
プリム、ジュレ、リーズヘッグがそう話し出す。
「俺達は旅芸人も見慣れてるからなぁ。どうってことねえよ」
「うん……案外優しいかもしれないわ……」
なんでもなさそうにそう言ったダビとルルイエこそ、優しいよなぁと俺は思った。
「会話は聞こえていたぞ。奴らのために別献立を作る気か?」
アイロスは心配そうに俺を見た。
「基本は昼の献立を流用しつつ、辛い味付けにしようと思ってるよ。5人分だけ作るのもいいけど、せっかくだからアイロスとプリムには味見して欲しいな」
「勿論、食べるーっ!」
「俺も構わんぞ」
「じゃあ、俺の分を加えて8人前を作ろうと思うよ。菓子は全員分を用意するからね」
「じゃあじゃあ、毎朝クッキーだけじゃなく、菓子も食べれるんだねっ! すっごく、嬉しい!」
「そうだね。喜んで貰えたら嬉しいよ」
プリムは大喜びである。
さて、皆の皿が空いたようなので、ミルフィーユを配膳する。
皆、満足そうに食べてくれたので、俺も嬉しかった。
夜はゆっくりと更けていき、祝福祭初日を締めくくったのだった。
翌日の12月19日。
早朝は少し雨がぱらついていたようだが、すぐに止んでいた。
この世界は雨期があり、それは6月であるとのことだった。
雨期以外はすぐに雨も止む為、天気を気にしたりしないのだという。
とにかく今日も晴れており、絶好の営業日和であった。
アイロスが午前6時から出勤してくれることになった。
アイロスは親から受け継いだ持ち家があるので、そこから通っている。
ダビとルルイエもチョコバナナパイを作りに、午前6時から集合している。
ダビはチョコレートのごときヨーデルの焙煎を始め、ルルイエはバナナのごときエーファを輪切りにしている。
アイロスは、付け合わせのマッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディを作り始めている。
俺は牛肉を薄切りにし、具材のタマネギのごときカペラも薄切りにしていく。
あとはニンニクのごときダッキをすりおろし、マスタードに似た香草を粉にして、水で練っておく。
次にマヨネーズをたっぷり作り、マヨネーズ、マスタードに似た香草、すりおろしニンニクのごときすりおろしダッキを混ぜておく。
次は汁物料理の野菜を切り分けていく。
具材は、タマネギのごときカペラ、ナスのごときビトー、キャベツのごときノーマを使う。
鉄鍋に油を敷いて、一口大に切った兎肉を炒める。
表面が色付いたら野菜を入れて、軽く炒める。
しんなりしてきたら、水を加えて煮込んでいく。
アク取りをアイロスに任せて、俺は菓子の準備だ。
サツマイモのごときダイナは輪切りにし、厚めに皮をむいて一口大に切り、水にさらして水気を切る。
鍋にサツマイモのごときダイナを入れて、かぶる量の水を加えて中火で熱し、竹串が通るくらいまでゆでて水気を切る。
鍋の中でサツマイモのごときダイナをつぶす。
再び中火にかけ、木べらで混ぜながら2〜3分熱し、水分を飛ばす。
弱火にして、乳脂、生クリーム、砂糖を加えて混ぜる。
火を止めて、卵黄を加えて混ぜ、粗熱をとる。
生地を15等分して成形し、鉄板に並べる。
ツヤ出し用の卵黄を塗り、予熱した石窯で20分焼く。
さて、汁物料理の鍋を二つに分けて、豆板醤のごときウルドゥと砂糖と塩を入れる。
片方の鍋は加減し、もう片方の鍋はおもいきり辛くする。
次に、フランスパンに切り込みを入れ、マヨネーズとマスタードに似た香草、すりおろしニンニクのごときすりおろしダッキを混ぜておいたものを、塗っていく。
次に、肉料理の仕上げだ。
中火で温めた片手鍋にマオマオの油をひき、牛肉とタマネギのごときカペラを炒める。
火が通ったら果実酒、醬油のごときユーカン、砂糖を入れてたまに混ぜながら煮詰めていく。
汁気がなくなり味が馴染んだら火を止める。
フランスパンにたっぷり挟み、完成だ。
午前8時の鐘が鳴った。
ぞろぞろと仲間達が集合し、表から昨日の旅芸人達が、入ってきた。
先頭は、藍色の髪の小柄な少女である。
その後ろに、大男が4人、立ち並んでいる。
「おはようございますよぉ。良い香りがしているじゃないですかぁ。今日からどうぞ宜しくお願い致しますよぉ」
「こ、こちらの席へどうぞ。いま、お茶をお持ちします」
5人の旅芸人の分を先に出すことにする。
辛い汁物料理を取り分け、アイロスが付け合わせを盛り付けた木皿に、サンドイッチを乗せる。
「これは、旅芸人の人達の5人前ね。菓子は後で出すよ」
「了解っ!」
プリムが丁寧に運んでいく。
俺は鉄鍋に牛肉を投じて、炒め始める。
「お待たせしましたーっ! わたし達もこれから朝食なんですけど、先に食べちゃって下さいねーっ!」
「ありがとさんですよぉ。じゃあお言葉に甘えて、先に頂きますよぉ」
サンドイッチは次々に完成していき、全員分出揃った。
「この汁物料理は、リーズヘッグとジュレと、ダビと、ルルイエの分だよ」
「は、はい。わかりました」
「これが俺とアイロスと、プリムの分の汁物料理ね」
「了解っ!」
配膳が完了し、俺とアイロスも着席した。




