祝福祭初日
翌日の、12月18日。
祝福祭初日である。
朝食の最中に、リーズヘッグが業務連絡を伝えた。
「今日は祝福祭初日だ。今日は領主からふるまい酒が出る。果実酒は樽で届いておる。酒は無料だ。飲むかは客に聞いてくれ」
「なぁ、リーズヘッグ。ふるまい酒って毎日届くのかい?」
「いや、18日と最終日の30日だけだ。だから18日と30日は、仕事も休みにしている所が多いだろう」
「わかった。じゃあ、今日は予想以上にお客が来そうだな。酔っ払いも増えるだろうから、気を付けてね。ジュレ、プリム」
「酔っ払い位なんでもないさっ! 楽しい祝福祭にしようねーっ!」
「ぼ、僕も頑張ります……」
リーズヘッグとプリム、ジュレが順番に答える。
「露店街でも城の人間が酒をふるまうらしいぜ。昨日布告されてた」
「今日はいつも以上の勢いでしょうね……。頑張りましょうね、ダビ……」
ダビとルルイエがそう言いながら、サンドイッチをぱくつく。
「今日は各地から色々な奴らが集まってくる。諍いが起きないように、注意することだ」
アイロスは、そのように言いつのった。
俺はクッキーを食べながら、お茶を飲む。
「今日も皆、頑張ろうね。宜しくお願いします」
皆は胸を張って、頷いてくれた。
やがて食事が終わると、仕込みの時間である。
ダビとルルイエはミートソースの仕込み、俺とアイロスは、昼の仕込みを始めた。
今日の献立は、汁物料理が兎肉のカレーで、サンドイッチには兎肉のカツとキャベツのごときノーマを挟み込み、とんかつソースをかけている。
付け合わせは、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーだ。
俺はカレー用の野菜を切り分けて行く。
アイロスはマッシュ・フォンディを量産中だ。
俺は今日、30人前を多く作る予定だ。
祝福祭を乗り越えるため、力を尽くす。
これが限界目一杯の仕込みの量である。
あとは皆の客さばきにかかっている。
午前10時半、ダビとルルイエが出発していった。
今日はミートソースが200食と、チョコバナナパイが200個である。
毎日売り切っているのだから、たいしたものだ。
「おい、随分フードを被った連中が多いぞ。団体客かもしれん」
「財宝漁りかなっ? わかんないけど、諍いにならないと良いね!」
そして午前11時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限である。
まず常連さんが9名程入ってきて、次にフードを被った男性がプリムに話しかけた。
「私達、30名です。入れますか?」
「うん。6人ずつ別れてくれたら、大丈夫だよっ! じゃあ、テーブル席へどうぞ!」
その団体さんは、皆褐色の肌をしていた。
興味を引かれつつ、ジュレの注文を聞き届ける。
「1番から9番、日替わり1つずつです!」
「あいよ!」
そこにプリムも飛んでくる。
「1番テーブル、2番テーブル、3番テーブル、4番テーブル、5番テーブル、日替わり6つずつね!」
「あいよ!」
俺はカツを揚げながら、乳脂を塗ったサンドイッチに千切りにしたノーマを挟み、カツが揚がるのを待った。
お客はその後も入ってきて、注文が入ってくる。
俺はそれに応えながら、カツをサンドイッチに挟んだ。
「1番から6番、上がったよ!」
「は、はい!」
俺は次のカツを揚げながら、2つ目の鉄鍋にマオマオの油を注ぐ。
それを熱して、更に6つのカツを揚げ始めた。
揚がったカツで、サンドイッチをこしらえる。
「7番から9番、10番から12番上がったよ!」
「は、はい!」
「お次、1番テーブルの6つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
常連さんもお酒を楽しんでいるようだ。
楽しそうに談笑するお客さんは、露店のことを口にした。
「おお、そうだ。昨日露店でカルボナーラっちゅうパスタを食ってきた。実に美味かった!」
「俺も食ったぞ! 俺はナポリタンだったな。それで菓子がまた美味いんだ」
「俺も食ったぞ! 俺は毎週食ってるんだが、菓子が楽しみでなぁ。今週の、エーファとヨーデルのパイも実に美味かった」
店内は露店の話題でいっぱいである。
俺は興味深く聞きながら、サンドイッチを仕上げた。
「2番テーブルと3番テーブルの6つずつ、上がったよ!」
「はーいっ!」
俺はどんどんカツを揚げていく。
アイロスは汁物料理を注ぎ、付け合わせを盛り付ける。
そこに俺がサンドイッチを乗せていく。
息はばっちり合っている。
「4番テーブルと5番テーブルの6つずつ、上がったよ!」
「はーいっ!」
「3番と4番、日替わり1つずつです!」
「あいよ!」
店内は酒を楽しむお客で溢れている。
俺はカツを揚げ続ける。




