宴席の予約
翌日の、12月17日。
早朝6時からダビとルルイエはチョコバナナパイの作成に取りかかっていたが、午前7時からアイロスの姿もあった。
どうやら朝食の仕込みから手伝ってくれるとのこと。
俺はありがたくその申し出を受諾した。
香ばしいチョコレートのごときヨーデルの香りが充満する中、俺はアイロスと朝食兼昼の献立の仕込みに取りかかっていた。
今日の献立は、味噌のごときトーテムの汁物料理と、コロッケを挟んだサンドイッチ、付け合わせはマッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
付け合わせのマッシュ・フォンディを作る為にフォンディを茹でているアイロスの隣で、俺もコロッケの為のフォンディを塩茹でしていた。
茹で上がったら、すりこぎで潰して、置いておく。
鉄鍋にマオマオの油を熱し、みじん切りにしたタマネギのごときカペラを飴色になるまで炒める。
そこに兎肉の挽肉と乳脂を加えて、色が変わるまで炒める。
そこに塩、砂糖、黒胡椒を加えて、よく混ぜ、潰したフォンディを加えてよく混ぜる。
これを丸めて成形し、サフア、溶き卵、パン粉の順につけていく。
これをマオマオの油で揚げて、完成だ。
アイロスはクッキーの型を抜いており、後は焼けば完成のようだ。
その間に俺は汁物料理を作っていく。
それから半刻程経って、午前8時の鐘が鳴った。
頼もしい仲間たちが、集まってくる。
俺がコロッケを揚げている間に、アイロスが汁物料理を取り分け、付け合わせを木皿に盛り付ける。
俺はマヨネーズを塗ったフランスパンに、コロッケを挟み込んでいく。
全員分出来上がり、ジュレが配膳してくれる。
俺とアイロスも席に座った。
「お待たせしたね。さあ、召し上がれ」
皆でいっせいに食べ始める。
俺はコロッケサンドに、かぶりついた。
コロッケのほくほくした美味しさが、フランスパンと一体になって、得がたい調和を成している。
汁物料理も過不足のない味わいだ。
「今日はコロッケっていう料理をフランスパンに挟んでみたんだ。皆、お味は如何かな?」
「美味いに決まっておろう」
「ほくほくしてて美味しいねっ!」
「ぼ、僕も美味しいです」
「美味いぜ。肉は少なめだけど、これ1個食ったら腹一杯になりそうだ」
「美味しいわ……」
「美味い」
リーズヘッグ、プリム、ジュレ、ダビ、ルルイエ、アイロスの順に感想を述べ立てていく。
「やっぱり肉が少ないかな? でも、これも美味しいんだよね」
「今日のお客に出してみるが良かろう。あとで、サフア屋にパン粉の補充を頼まねばならんな」
「あ、そうだね。パン粉が間に合ったら、明日はカツにしようかな」
リーズヘッグの言葉に、俺は明日リリアが来ることを強く意識した。
明日の汁物料理は、カレーに決定だ。
リリアは昼と夜、どちらに来るだろう。
どちらに来ても良いように、献立を厳選する所存だ。
「ああ、美味かった。さて、カルボナーラの仕込みに取りかかろうぜ、ルルイエ」
「うん……。卵はわたしが割るわ……」
皆が席を立ち、俺とアイロスも昼の仕込みを始めた。
俺は汁物料理を作りながら、コロッケを作成する。
それが終わったら、フランスパンに切り込みを入れ、マヨネーズを塗る。
アイロスは順調にマッシュ・フォンディを量産している。
俺達は賢明に昼の仕込みを頑張った。
午前10時半、ダビとルルイエが出発していった。
仕込みももう少しで終わりだ。
俺はフランスパンに切り込みを入れ、マヨネーズを塗っていく。
そして、午前11時の鐘が鳴る。
開店の刻限だ。
お客がなだれ込んできて、次々に注文していく。
「1番から6番まで、日替わり1つずつ!」
「あいよ!」
「1番テーブルと2番テーブルが日替わり4つずつです!」
「あいよ!」
俺は熱した油にコロッケを投じて、揚げ始める。
アイロスは汁物料理の取り分けと、付け合わせの盛り付けをしてくれていた。
揚がったコロッケを二つに切り、フランスパンに挟み込む。
それを木皿に盛りつけ、完成だ。
「1番から6番まで、上がったよ!」
注文は次々に入ってきている。
俺は慌てずに火元を調整し、コロッケを油に投じる。
「これは美味えな。こりゃあ、新作かい?」
「は、はい。今日から出した新作になります」
「新作が食えるのは常連の楽しみだよな!」
「ああ! 今日の新作も美味かった!」
「あ、ありがとうございます」
ジュレが常連さんとそんな話をしていた。
俺はサンドイッチを仕上げ、カウンターに並べる。
「1番テーブルと2番テーブル、上がったよ!」
「は、はい!」
それから、半刻程経って、常連客の一人がリーズヘッグに話しかけた。
「なぁ、リーズヘッグ。今度仲間が婚姻するんだが、宴席をこの店でやらせてもらえんか? 人数は、50名だ」
「休業日で良いなら、対応してやる。7日以外の日程で組んでくれ。宴席なら、6種の料理を出すか?」
「豪勢にしてくれるのなら、何でも良いぜ! 肉料理と、菓子と、あと露店で売ってるパスタっていうのを出してくれ!」
「前菜と、野菜料理と、パスタ料理と、汁物料理と、肉料理と、菓子を出してやる。酒はどれくらい飲む?」
「そりゃあ、飲んべえが多いからなぁ。一人一本つけてもらうと、予算はどれくらいだい?」
「それなら飲み放題にしてやろう。料金は黒銅貨50枚だな。これ以上はまからんぞ」
「わかった! 仲間内で出し合うから、宜しく頼みたい。あと、歌も3曲歌ってもらえるかい?」
「はいはーいっ! 歌って欲しい曲は決まってる?」
「『祝福の朝』と、『メロウの踊り』、『松明を持て!』が良いんだが、歌えるかい?」
「まっかせといて! 素敵な宴席になるように、頑張って歌うよ!」
「じゃあ、日程は1月14日に頼みたい。時間は午後5時開始でいいよな?」
「ああ、良いぞ。辛い料理が好きとか、要望はあるか?」
「辛くない料理の方が良いと思う。あと、新婦が乾酪が好きだったな」
「了解した。楽しい宴席になるよう、力を尽くすぞ」
「ありがとな。じゃあ、これ今日のお代、ここに置いてくぜ。美味かったよ。じゃあな!」
お客さんはそう言って店を出て行った。
俺はサンドイッチを仕上げながら、献立を思案していた。
時間的に、前菜は冷たいものになる。
じゃあ、貴族の舘で出した、兎肉とレバーのパテで良いだろうか。
野菜料理はいつも思い悩む料理だ。
しかも、サフア屋の依頼もある。
少し献立がかぶるくらいなら、許されるだろうか。
「5番テーブルと6番テーブル、上がったよ!」
「はーいっ!」
店内は満員御礼、すごい熱気である。
俺は注文をさばくため、コロッケを油に投じるのだった。




