パウロ料理の伝授
リーズヘッグは料理帳の代金の分割払いの証文を作るといって、パウロ売りと出かけていった。
ついでに、長いまな板と千枚通しを買うように助言をする。
調味料屋は、また欲しい調味料があったら来いと言って帰っていった。
プリムとジュレは店内の清掃を終えたので、自室で休憩している。
ダビとルルイエは、ナポリタンの仕込み作業を済ませ、4時半に出発していった。
俺は、センシにパウロの調理法を教えつつ、夜の仕込みを頑張った。
センシは2匹程駄目にしてしまったが、その後はうまくさばくことが出来るようになっていた。
串の打ち方も、10匹分くらいやり続けたらコツが掴めたようだ。
パウロの炙り焼きは、問題なく習得できた。
蒸す調理法は初めてだったようで、少し手間取ったが、問題ない。
タレをつけて再び炙り焼きにすると、良い香りが店内に充満した。
蒲焼きのタレの作り方も覚えて貰った後、仕上げに山椒の香りの香草の粉を振りかけて、完成だ。
出来上がった料理を、二人の少年に食べてみて貰う。
ふたりは、びっくり眼で、パウロの蒲焼きを頬張っていた。
「なにこれ! すっごくおいしいね、兄ちゃん!」
「これは……俺が作ったんだ。作り方は全部覚えたから、これからは俺が作ってやる。蒸し器っていうのを、父さんに買って貰って、1日でも早く露店を出そう」
「うん! もうすぐしゅくふくさいが、はじまるもんね。ぼくもがんばるよ!」
「ああ。お客の銅貨を受け取る係は、お前に任せるからな。帰ったら練習しよう」
それからしばらくして、パウロ売りの男性とリーズヘッグが帰ってきた。
「おかえり、とうさん! にいちゃんがね、ぱうろのおいしいりょうりをつくってくれたよ」
「そうかそうか。センシ、しっかり覚えたか?」
「うん。だけど、蒸し器っていうのが必要なんだ」
「わかった、蒸し器だな。料理番の兄さん、手間をかけちまってすまないね。それじゃあ、帰るとするよ」
「それじゃあな。またパウロを買いに行くよ」
3人の親子が連れ立って帰っていく。
そして午後5時の鐘が鳴る。
開店の時間だ。
並んでいたお客さんが次々に注文を出す。
俺はひっきりなしにパウロと焼肉を焼き続けた。
「なぁ、これはもしかして、魚かよ?」
「は、はい。パウロの蒲焼きになります」
「へぇ、パウロっちゃああんまり美味くないと思ってたけど、こりゃあ美味いな」
「あ、ありがとうございます」
「こっちにも日替わりを一つ、頼むよ!」
「俺は酒を1本頼むよ」
「は、はい。少々お待ちください!」
ジュレも頑張っているようである。
それで、味噌のごときトーテムを使った汁物料理の反応はというと……。
「この汁物料理は初めて食べるな。食ったことのねえ味だよ」
「それはね、トーテムっていう調味料を使っているの。すっごく美味しいでしょ?」
「ああ、美味いよ。具材もたっぷりだしな」
「俺も美味いと思うよ。トーテムなんて、聞いたことがねえけどな」
「東の国から入ってきたそうなの。調味料屋から、今日買いつけたばっかりなんだからね。じゃあ、ご予約のお客さんも来たようなんで、一曲歌います! 『雨の散歩道』、聞いて下さい!」
そんな感じで、評判は上々であった。
プリムの歌に聞き入りながら、料理を作る。
それは、幸せなひと時であった。
午後8時半に、ダビとルルイエが帰ってきた。
今日もパスタと菓子を完売したとのことである。
意気揚々と帰ってきた二人は、洗い物を手伝ってくれた。
そして午後9時になり、閉店である。
お客さんも次々にはけていって、最後の一人も帰ったら、鍵をかける。
「いやー、今日もすごい客入りだったね! みんな、お疲れ様ーっ!」
プリムの明るい声がけに、ジュレもほのかな笑顔を見せる。
「お、お客さんは新しい汁物料理と、魚料理に注目していたね」
「うん! どっちも美味しいって喜んでたねーっ!」
俺は晩餐の仕込みである。
せっかくなので、味噌のごときトーテムを使った味噌焼きの焼肉に仕上げることにした。
野菜は、タマネギのごときカペラと、ナスのごときビトーとキノコである。
焼き上がったら皿に盛り、汁物料理を取り分ける。
味噌のごときトーテムのかぐわしい香りが店内に漂う。
後は輪切りにしたフランスパンを添えれば完成である。
「お待たせしたね。どうぞ召し上がれ」
俺も突き匙を手に取り、トーテムで味付けした焼肉に口を付けた。
うん、美味しい。
程よい塩気とトーテムの風味が、兎肉と調和している。
お客に出すならば、半刻ほどトーテムに漬け込んだ方が、望ましいかもしれない。
トーテムの汁物料理も、過不足のない仕上がりだ。
俺はフランスパンを口に放り込んで、皆の様子を伺った。
「今日の料理も美味しいよっ!」
「うむ、美味だ。トーテムは焼き物にも合うんだな」
「こ、これがあの時御披露目されていた食材なんですね……。一度食べてる筈なのに、初めて食べる心地です」
「すげー美味いじゃん。肉がガッツリ食えて最高だぜ。フランスパンが進む味だ」
「うん……結構お肉は強い味だけど……美味しいね……」
皆の評価が、嬉しかった。
味噌が認められた事がとても嬉しくて、胸が温かくなった。
その後は菓子のプリンを出し、和気あいあいと楽しんだ。
今日は忙しかったけれど、充実した一日だった。
俺は心から満足して、明日へ向かうのだった。




