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ひとときの休息

 それからは、ジュレも加わって雑談を楽しんだ。

 カトリーヌは話し上手で、あまり自分からは発言しないジュレにも、話をふってくれた。


 そして午後12時の鐘が鳴った。

 俺は昼食を作るために席を立ち、配膳の為にジュレにも着いてきて貰った。


「ジュレ、まずはお茶を入れ直してきてくれるかな?」


「は、はい」


 俺はと言うと、石窯で焼いていた料理を取りだして、切り分けていく。


「うわぁ……兎肉の、丸焼きですか」


「うん。これは皮付きの肉をリーズヘッグに買ってきて貰ったんだ。すぐに切り分けるからね」


 柔らかそうな部位を選んで、切り取っていく。

 お腹に詰めておいた野菜も十分に熱は通っているようだ。

 使った野菜は、ジャガイモのごときフォンディと、ピーマンのごときファン、ブロッコリーのごときセルルとキノコである。

 野菜も取り分けて、汁物料理もよそう。

 今日は、クリームシチューだ。

 それと輪切りにしたフランスパンを添えて、完成だ。


 配膳はジュレがしてくれたので、俺は説明だけさせて貰う。


「今日の昼食は、兎肉の丸焼きです。特製ソースで味わってみて下さい。汁物料理は、クリームシチューです。フランスパンと共にお食べ下さい」


 皆で突き匙を手に取り、肉に突き立てた。

 口に入れると、パリッとした皮の食感と柔らかい肉の旨みが折り重なって伝わってくる。

 

「うん、兎の丸焼きは初めてだったけど、上手くいったね」


「ええ、とても美味しいわ。皮がパリッとしていて、楽しい食感ね」


「うむ。美味い」


「と、とっても美味しいです!」


 皆の口に合ったようで、ほっとする。

 俺はクリームシチューを食べながら、フランスパンを口内へ放り入れる。


「……この汁物料理は、フランスパンととっても合うようね」


「そうですね。ああ、この料理にパイ生地で蓋をした料理も故郷にはありましたよ。俺も大好きでした」


「ふうん。そのうち、晩餐会の料理番を引き受けてくれないか、って依頼が来ると思うわ。それまで、製法は秘匿しておきなさい」


「わかりました。楽しみにしてますね」


 その後は雑談をしながら、料理を食べた。

 みんなの皿が空いてから、俺は席を立った。

 作っておいた菓子を皿に乗せ、ジュレが配膳する。


「これは、ガル大福です。ガルを丸ごと一粒使った菓子になります」


 ガルとは、イチゴのような果実である。

 ガルを1粒と、粒あんを餅米のごときポッカの皮で包み込んである。

 俺も手に取り、かぶりつく。

 イチゴのごときガルの甘みと酸味が、粒あんの甘さと溶け合って、絶妙な調和を生み出している。


「これは……美味ね。これを明日から露店で売るつもりだと言っていたわね。これは、いくらで売るの?」


「1個で半銭だね」


「安いわ。青銅貨1枚でも売れるわよ」


「その分、小さめに作っているからね。ガルも小粒のものを安価で買ってきて貰うからさ」


「大きめに、大きなガルを入れたら、もっと美味しいの?」


「うん。満足度は結構変わるはずだね」


「興味深いわ。お父様とお母様にも食べさせたいわ。余分はあるかしら?」


「お土産にと思って、6個作ってあるよ。それを持ち帰ると良いよ」


「ありがとう、キョウスケ」


「じゃあ、俺とジュレは部屋に引き上げるよ。迎えの車が来るまで、どうぞごゆっくり」


 俺はお土産を風呂敷のような布に包んで、テーブルの上に置いた。

 ジュレは空いた皿を下げてから、2階に上がっていった。


「ジュレ、休日なのに配膳を手伝ってくれてありがとう。ゆっくり休んでね。晩餐は午後5時になったら始めるから、降りてきてね」


「は、はい。ありがとうございます。さっきの菓子は、びっくりするほど美味でした!」


 ジュレが部屋に入るのを見届けて、俺も部屋に入る。

 ベッドに腰掛けて、ゆったりくつろぐ。

 暇さえあれば、新しい料理を研究している俺にしては、珍しい時間だ。

 今頃、リーズヘッグはカトリーヌとゆっくり話が出来ているだろうか。

 俺も、リリアに会いたいな、と思いながらベッドに寝転がる。

 そうだ、晩餐会の料理番を依頼されたら、その日は、リリアにも来て貰ったらどうだろう?

 来週の休日は、リリアと逢い引きだ。

 その時に、相談しよう。

 その内に俺はうつらうつらとしてしまい、昼寝をしてしまったようだった。

 気付いたら午後3時の鐘が鳴っており、慌てて飛び起きる。

 1階に降りると、店の前に止まっていたエミューの車が、出立したようだった。


 店に入ると、リーズヘッグ1人だけだった。


「カトリーヌなら先程帰ったぞ。土産を喜んでいた。ゆっくり話せたから、楽しかったぞ」


「うん。良かったね、婚約者だって認められてさ」


「ああ。婚姻出来るのはまだ先のようだが、いくらだって待ってやるさ。さて俺は部屋で休んでくる。午後5時には顔を出すからな」


「うん。了解したよ」


 リーズヘッグは2階に上がっていき、俺は調理場に入って、手を清めた。

 兎の丸焼きが残っているので、夜にも使い回す。

 それと、トマトのごときイノッサを使ったトマトスープを作ろう。

 それと、副菜として、茶碗蒸しも作る。

 茶碗蒸しは大好きなのだが、料理に組み込みづらくて、今まで作って来なかった。

 野菜を多めに入れて、野菜料理として出すべきだろうか?

 今度の晩餐会に使えそうか、今夜皆に聞いてみよう。

 俺はまずは野菜の吟味を始め、まずはカブのごときダリヤを掴み取った。

 それと新顔の野菜、ネギのごときポーロと、ブロッコリーのごときセルルとキノコを選んだ。

 野菜をたっぷり入れる茶碗蒸しは、初めてだ。

 俺は期待を胸に、野菜を切り始めるのだった。

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