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露店を出す

「それじゃあ、食べてみようか」


 俺はサフア巻きを頬張った。

 まずは強い塩気が舌を刺し、兎肉と、ニンジンのごときメイリグと、ピーマンのごときファンと、キノコが入っている。

 使われているソースもかなりしょっぱくて、そこに砂糖も加えられているから、あべこべな味がする。


「これが普通の露店の味だ。満足いったか?」


「うん、満足したよ。帰って昼食を作りたくなった。さっさと帰ろうか」


「うむ。俺もお前の料理が食いたいわい」


 露店区域は、大繁盛で、ものすごい人混みだった。

 サフア屋の露店も確認したが、とんでもない行列になっている。

 フランスパンを籠に入れて持ち帰っていくお客さんの群れを見ると、少し故郷が懐かしくなった。


 それから30分程かけて、店まで帰ってきた。

 丁度12時の鐘が鳴り、プリムが1階に降りてきた。


「やあ、プリム。今帰ってきた所だから、昼食まであともう少し時間を貰えるかな?」


「うん、いいよーっ! 外で食べるよりもキョウスケの料理の方が美味しいもんね!」


 俺は調理場に入り、手早く野菜を切り分けた。

 汁物料理を火にかけ、じっくり煮ていく。

 スープのアクを取りながら、リーズヘッグに話しかけた。


「そう言えば、カトリーヌに露店を出すように言われたな。でも……この人数じゃあ、厳しいよなぁ?」


「当然だ。露店は人を雇わなけりゃあ、当然だが無理がある。仕込みからして、間に合わん」


「やっぱり、そうだよな。ねえプリム、祝福祭の間、露店を受け持ってくれそうな人材のアテはないかなぁ?」


「へえーっ、露店を出すの? いつから?」


「可能なら12月1日から出したいもんだな」


「じゃあじゃあ、午後からは知り合いを回ってくるねーっ! 12月は財宝漁りも休む子が多いし!」


「ありがとう、プリム。良い人材が見つかる事を祈っているよ」


「へへーん。あたしに任せといて!」


 プリムは胸を張り、笑顔を振りまいた。

 俺は牛肉のステーキを焼き始め、あたりにニンニクのごときダッキの香りが広がる。

 表面をしっかり焼いたら、果実酒をふるいかけ、蓋をして蒸し焼きにする。


 汁物料理を取り分け、牛肉のステーキとフランスパンを配膳する。

 リーズヘッグが茶の準備をしてくれたので、俺も椅子に腰掛ける。


「今日はユーカンの汁物料理と、牛肉のステーキだよ。さぁ、召し上がれ」


 俺達は皆で木匙を取り上げた。

 俺はまずステーキに取りかかる。

 食べやすい大きさに切ってあるので、難なく木匙ですくえた。

 それを口に投じると、ニンニクのごときダッキの香りが広がり、牛肉の旨みがガツンとくる。

 果実酒と醬油のごときユーカンのソースも申し分のない美味しさだ。

 フランスパンを食べながら、二人を伺うと、二人は美味しそうに料理を食べてくれていた。


「今日の料理も、すっごく美味しいね!」


「うむ。美味い」


「二人のお口に合って良かったよ。デザートはチョコバナナクレープだよ」


「わーい! エーファとヨーデルが、すっごく合うんだよね-」


 エーファはバナナ、ヨーデルはチョコレートのごとき風味を持つ茶葉である。

 俺は調理場に入り、手早くチョコバナナクレープを作り上げた。

 俺も着席して、チョコバナナクレープを味わう。

 

「そう言えば、リリアがこないだ来たときに言ってたんだけど、探索中は美味しい食事が取れないから、あたしが羨ましいって言ってたの。リリアって財宝漁りに命捧げてる所あるから心配だったんだけど、あたし安心しちゃった!」


「プリムはリリアと仲良しなんだね」


「15歳のときからの付き合いだからね! 今でも大事な仲間だよ!」


「そっか。リリアが来たときには美味しい食事でおもてなししてあげたいね」


「ありがとう、キョウスケ。リリアはね、虹色の羽っていう飾り物を探してるんだ。リリアのお母さんに必要なものらしくって、ずっと探してる。早く見つかればいいんだけど……なかなかね」


 リリアは茶をすすりながら、にっこり笑った。


「まあ、あたしはもう応援するばっかりだけどさ。さて、食べ終わったから、知り合いのところに行ってくるねーっ!」


 プリムは元気よく宣言して、店を出て行った。


「じゃあ、俺は晩餐会で出す料理を作ってみようかと思うよ。気が向いたら、試食を宜しくな」


「試食ならまかせておけ。俺が買ってきたあの海藻の粉も使うのか?」


「うん。あれは菓子で使おうと思うよ。果物もいっぱい買ってきて貰って、助かったよ」


「ふふん。では、俺は部屋にいるからな。料理が出来たら呼ぶが良い」


 そう言って、リーズヘッグは2階に上がっていった。

 俺は調理場に入って、気合いを入れ直した。


「まずは前菜からか……こりゃまた、時間がかかりそうだ」


 俺は兎肉をミンチにしながら、そう独りごちるのだった。




 この国に来てから初めて作る料理だった為、手間取ってしまった。

 そりゃあ、冷蔵庫もレンジもないんだから、仕方がないとも言える。

 午後5時の鐘が鳴る中、俺はとりあえず準備を完了させた。


「ずいぶん時間がかかったな」


「ああ、リーズヘッグ。思ったより手間取ってしまったよ。プリムはまだ帰ってないかな?」


 そこに、プリムの声が響き渡った。


「お待たせーっ! あとさ、ついでに2名分多く用意できたり、する?」


 プリムの後ろには、色白の肌に紫色の長髪の小柄な少女と、褐色の肌に銀色の髪の長髪の男性がついてきていた。


「用意するから、座って待っていて。今日は晩餐会の試食だから、皿数が多いんだ。ゆっくり楽しんでおくれよ」


「……あたし、ルルイエ。露店のお店の手伝いに来ました……」


「俺もそうだ。俺はダビ。ルルイエの恋人だ。宜しくな」


「俺は料理番のキョウスケで、こっちは店主のリーズヘッグ。まずは一緒に飯を食おう」


 俺は前菜の皿を次々に出していった。

 さて、皆の評価はいかに。

 俺もカウンターに座り、木匙を取り上げる。

 時間をかけて仕込んだ前菜を、俺は心ゆくまで味わった。

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