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《相良亭》のカレー

 食後は、広場を目指して歩いていく。

 到着したら、椅子に座ってお喋りだ。


「今日は、何のおとぎ話を聞かせてくれるの?」


「今日は、鶴の恩返しだね。昔、昔あるところに貧乏なおじいさんとおばあさんが住んでいました……」


 俺はゆっくり、語って聞かせた。

 リリアは真剣だ。

 語り終えると、リリアは思わしげに息をついた。


「鶴は飛んで行ってしまったんだね。自分の羽で布を織るなんて、凄いね」


「そうだんね。助けて貰えたのが、よほど嬉しかったんだろうね」


 その後は、雑談で盛り上がった。

 楽しい時間はあっという間に過ぎる。

 気付けば、午後5時の鐘が鳴っていた。


「今夜は、《相良亭》に行かない?」


「良いね、久しぶりだ」


 俺達は立ち上がり、手をつないで歩いた。

 20分程で、《相良亭》に到着した。


「あら、キョウスケじゃないですか。お久しぶりですねぇ」


「どうも、ご無沙汰しています。繁盛しているようですね」


「ええ、そりゃあもう。夜はすぐ満席になっちまう位ですよ。こちらの席へどうぞ」


 女将さんは機嫌良く笑った。

 店内は混雑している。

 俺達は奥のテーブルに案内された。


「日替わりを2つ、お願いします」


「はいよ。少々お待ち下さいね」


 女将さんは、お茶を置いて下がっていく。


「思ったより混んでいてびっくり」


「うん。繁盛しているようで、何よりだよ」


 しばらくして、料理が届いた。

 献立は、カレーと牛肉の果実酒煮込みである。


 カレーは基本の味から、変えていない。

 中辛の美味しいカレーだ。

 肉料理も、基本の味を守っている。

 牛肉の果実酒煮込みは、俺も好物である。


「カレーも肉料理も、美味しいね」


「ん。とても美味しい」


 リリアは上機嫌だ。

 笑顔のリリアが、とても可愛い。


 食後にはプリンが出された。

 とても美味しかった。


 食後は、店を出て、《竜の跳ね鳥亭》へ向かった。

 20分程で、店に到着した。

 2階に上がり、俺の部屋に入る。


「シャワーを借りるね」


「うん。どうぞごゆっくり」


 リリアは荷物を持って、出て行った。

 待ってる間は、手持ち無沙汰である。

 俺はリリアを想いながら待つことにした。


 半刻程経って、リリアが戻ってきた。

 

「お待たせ」


「じゃあ、俺もシャワーを浴びて来るね」


 俺は部屋を出て、浴室へ行く。

 俺はゆっくりシャワーを浴びた。

 部屋に戻り、リリアの隣に腰掛ける。


「お待たせ」


「今日も1日、楽しかったよ。キョウスケ、大好き」


「俺もリリアが大好きだよ」


 俺はリリアを押し倒し、唇を奪った。

 ぎゅっと抱き締めると、リリアも抱き締め返してくれる。

 俺はリリアを強く抱き締めた。

 幸せで溶け合う夜は、ゆっくり更けていった。




 11月29日。

 今日は新しい露店の店員に、料理を教える日である。

 午前9時。

 サフア屋の2階の調理場に、二人の新しい店員がいた。


「はじめまして。《竜の跳ね鳥亭》の料理長、キョウスケです。今日は宜しくお願いします」


「俺はキース。料理を担当する」


「わたしは金勘定を担当するわ。仕込みは手伝う約束だから、勘違いしないでよね! わたしはマチルダっていうの」


「キースとマチルダ。どうぞ宜しくね。じゃあ、早速調理を始めよう。キースには肉の切り分けをして貰う。マチルダはサフアに卵を加えて、牛の乳で練って、丸く焼いていこう」


 二人はてきぱき動いて、料理を覚えていく。


「キース。肉の味付けはユーカン、トーテム、ウルドゥの3種類だ。まずはユーカンから覚えよう」


 まず兎肉のソテーの作り方を覚えて貰う。

 鉄鍋にマオマオの油を熱し、兎肉を入れる。

 焼き色が付いたらひっくり返し、火が通るまで待つ。

 そこに醤油のごときユーカンを回しかける。

 まな板の上に取り出し、食べやすい大きさに切る。

 サフアの生地で巻いて、出来上がりだ。


「よし、ユーカンのサフア巻きは出来上がりだ。二人で味見をしてご覧」


「……美味い」


「これ、美味しいわ!」


「じゃあ次はトーテムのサフア巻きを作ってみよう。火加減と、調味料の量に気を付けてね」


 キースは上手にトーテムのサフア巻きを作り上げた。

 出来たものを味見して貰う。


「これも美味い」


「美味しいわ!」


「じゃあ、次はウルドゥのサフア巻きだ。調味料の量に気を付けてね」


 これもキースは上手に作り上げた。

 出来たものを味見して貰う。


「ちょっと辛いが、美味い」


「これも美味しいわ!」


 どうやら味には納得して貰えたようだ。


「この3種類を日替わりで出して欲しいんだ。頼めるかい?」


「任せてくれ」


「昼も夜も200食ずつ売るって聞いたわよ。サフアも200枚焼かないといけないのね」


「うん。ちょっと大変なんだけど、頼めるかい?」


「まあ、わたしに任せておくと良いわ!」


 二人は了承してくれた。


「朝は午前8時から、朝食。キースとマチルダもそれまでに店に来てね。一緒に朝食を食べよう。食後から、仕込みを開始するよ」


「わかった。12月1日からだな?」


「うん。マチルダはどうだい?」


「わたしもわかったわ。12月1日に、《竜の跳ね鳥亭》ね」


「キース。料理は全部覚えられたかな?」


「うん、大丈夫だ」


 二人は大丈夫そうだ。


「じゃあ、12月1日から宜しくね」


「わかった。では、またな」


「わたしも帰るわ。またね」


 二人は意気揚々と帰っていった。

 俺はそれを見送って、自室へ戻った。

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