《女王と蟻》の菓子
「兎の飼育場は楽しかったよ。やっぱり耳が長かったけど、牙は思っていたより鋭かったな」
「そうなの? 兎ってああいう動物でしょ?」
「俺の故郷の兎は、もっと大人しそうだったよ」
「へえー。兎は故郷でも食べてた?」
「いや、俺の故郷で兎肉は一般的じゃなくてね。一度しか食べたことがなかったよ」
リリアは驚いている。
「そうなんだね。それなのに兎肉で美味しい料理が作れるなんて、キョウスケは凄いよ」
「いやあ、この国の兎肉が美味しいからだよ。兎肉の美味しさの秘密は暴けなかったね」
「ん。仕方ない。子供は可愛かったね」
「うん。沢山いたね」
そこで、料理が届いた。
まずは、汁物料理だ。
レバーや胃袋など、様々な部位が入っている。
野菜は、タマネギのごときカペラのみだ。
煮汁は兎肉の骨から取った出汁だろう。
深みのある味わいで、調味料は塩だけだ。
それが物凄く、美味しかった。
「汁物料理が、凄く美味しいね。臓物も美味しいや」
「ん。凄く美味しい」
次は、肉料理だ。
肉野菜炒めを、食べてみる。
具材は、ニンジンのごときメイリグと、キャベツのごときノーマの2種。
調味料は塩だけ。
だけど、塩加減が絶妙だった。
これは美味しい。
「肉料理がとっても美味しいよ」
「ん。とても美味しい」
俺達はゆっくり美味しい料理を堪能した。
食後は、待機場まで戻って、エミューの車の御者に声をかける。
「お待たせ。町まで戻って欲しい」
「はいよ。じゃあ、乗ってくだせぇ」
俺達はエミューの車に乗り、出発した。
半刻程揺られて、停留所に到着した。
「じゃあ、待機代を含めて黒銅貨5枚頂戴いたしやす」
「はい」
「まいど! また来てくだせえ」
車から降りると、リリアが宣言した。
「甘味屋に、行きたい!」
「いいよ、行こう」
「じゃあ、こっち! しゅっぱーつ!」
俺達は手をつないで歩き出した。
20分程歩いて、目当ての甘味屋に着く。
「ここは、《女王と蟻》です! 中に入ろう!」
俺達は中に入り、給仕の案内で奥のテーブルに着席した。
「わたしのおすすめを頼んで良い?」
「うん。お願いするよ」
「すいませーん! 野菜の揚げ団子2つと、お茶を2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕がお茶を置いて下がっていく。
「11月30日のプレオープンまで、あとちょっとだね! わくわくしちゃう!」
「そうだね。どんなお店になるのか、俺も楽しみだよ。明日は肉料理の露店を開く二人に料理を教える日だよ。朝は午前7時に起きるけど、大丈夫?」
「ん。平気。サフア屋の居心地はどう?」
「うん。とっても居心地が良いよ。予定では明日、改築した《竜の跳ね鳥亭》へ入居するんだ。新しい住処も居心地良くしないとね」
リリアはニコニコしている。
今夜もゆっくり過ごして頂けたら幸いだ。
「改築後は252名だっけ? そんなにお客が来るのかなぁ」
「どうだろうね。ただ、祝福祭があるから、期待したいところだよ」
「そうだね! 祝福祭のはじまる12月18日を境に、倍くらい人は増えるよ。いっぱいお客が来ると良いね!」
「うん。凄く楽しみだよ」
再会出来たら楽しいな、と思うお客もいる。
祝福祭は色んな意味で、楽しみが多いのだ。
「お待たせ致しました」
菓子が届いた。
見た目は普通の揚げ団子である。
俺はひとつ、食べてみた。
中身の餡が、甘いニンジンのごときメイリグであった。
もう一個は、サツマイモのごときダイナが入っている。
餡は甘く煮付けられ、菓子に相応しい仕上がりだ。
「これは美味しいね」
「ん。とても美味しい」
笑顔のリリアが、とても可愛い。
俺達はゆっくり美味しい菓子を堪能した。




