《甘露寺亭》のカレー
10月21日。
今日は休日だが、カトリーヌが来ていたので、昼食の用意をした。
菓子は、イチゴのごときガルを使ったデコレーションケーキである。
口金で綺麗に生クリームを飾り付けしたデコレーションケーキは、見た目も綺麗だ。
「まあ、美しい装飾ね。こんな焼き菓子、初めてよ」
「うむう、美味い! 柔らかな生地とガルの甘みと酸味が合っておる」
「ええ、本当ね。これを菓子のコンテストで出したら?」
「これでも良いね。まあ、来年の話さ。じっくり選ぼうと思うよ」
カトリーヌとリーズヘッグは、そのように言っていた。
この日は調理場で、菓子の試作をして過ごした。
美味しい菓子を作り上げて、リリアに喜んで貰いたい。
俺の胸に去来するのは、そんな気持ちであった。
10月22日から10月27日までは、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、アーロン率いる第一騎士団の騎士達や、リオン率いる第二騎士団の騎士達、ローガン率いる第三騎士団の騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
10月28日。
今日の休日は、リリアと逢い引きである。
午前11時の鐘が鳴り、リリアが顔を出す。
無地のワンピース姿で、胸には俺の贈ったアミュレットが輝いている。
いつ見ても可憐な姿だ。
「お待たせ。行こうか」
「今日も可愛いね、リリア。行こう」
俺達は手をつなぎ、歩き始める。
今日は《甘露寺亭》へ行く予定だ。
どんなカレーが出されるのか、今から楽しみだ。
20分程で、料理屋に到着した。
外観は中規模の大きさで、茶色い建物だ。
俺達は中へ入り、給仕の案内で奥のテーブルに着席した。
「あっ、ここ、日替わりしかない。すいませーん、汁物料理のカレーは出していますか?」
「ええ。今日はカレーです。人気がありますよぉ」
「良かった。じゃあ、日替わり2つ、お願いします」
「かしこまりました」
給仕はお茶を置いて、下がっていく。
「どんなカレーだろうね。楽しみだ」
「わたしも楽しみ! わくわくしちゃう!」
「リリア、来月の逢い引きはいつがいい?」
「じゃあね、11月28日でお願いします。泊まっていくからね」
「うん。楽しみにしているよ」
リリアは思案顔になった。
「わたしの仲間が、財宝漁りに恋をして、うまくいったって話をしたよね。その後も仲良しなんだけど、相手の宿屋に泊まり込むようになって、行き来が少し不便なんだ。それでね、お互いの仲間が住めるような拠点……つまり、家を買わないかっていう話なの」
「家かあ……。勿論リリアの気持ちを尊重するよ。でも、男性と同居になるわけだね」
「うん、そうなの。誓ってやましい事をしたりしない。だから、許して貰える?」
「うん。俺はリリアを信じているよ。相手の仲間とは、仲良くなった?」
「まだ、顔見知り程度。でも、悪い人じゃなさそう」
「そっか。信用できる人なら、一緒に暮らしても楽しいかもしれないね」
リリアは笑顔を見せた。
「今は良さげな土地を見繕っているの。建築屋も祝福祭の間はお休みだから、うまくいくと、着工は11月になるかも。どんなお家になるか、楽しみなんだぁ」
「そっか。うまくいくと良いね」
リリアがニコニコしていて可愛い。
そこで、料理が届いた。
カレーは、普通の色である。
煮汁を飲んでみると、とても甘い。
この甘さは、リンゴのごときケイルのすりおろしであろう。
カレー粉の量を減らして、リンゴのごときケイルのすりおろしを増やしたカレーのようだ。
具材は、基本の3種類に加えて、ブロッコリーのごときセルルも入っていた。
「カレーは甘いね。ケイルがたくさん入っているみたいだ」
「ん。甘くて美味しい」
リリアはぱくぱく食べている。
次は、肉料理だ。
肉は団子で、茶色い煮汁がかかっている。
食べてみると、甘めの味付けだ。
甘い香りがミスマッチだが、悪くない。
「肉料理も甘いね」
「ん。美味しい」
リリアが満足ならば、それで良い。
俺達は、ゆっくり料理を堪能した。
店を出て、リリアが宣言した。
「甘味屋へ行きます!」
「うん。今日も楽しみにしていたよ」
「では、しゅっぱーつ!」
俺達は手をつないで、歩き出した。




