パスタの試作
「カレーも、唐揚げも俺は満足出来る味だったよ。二人はどうだったかな?」
「こんな料理は食ったことがない。肉料理は美味いと思ったが、香草の料理は判断がつけられんな」
「えーっ! あたしはすんごい美味しいと思ったよ! もっと辛くしたら、東の国でも大評判間違いなしだよ!」
「うーん。辛さはどうだい、リーズヘッグ。これ以上辛いとやっぱり難しそうかな?」
「……辛みは、丁度良い」
「そっか。後は、食べ慣れて貰うほかないね」
はじめから大歓迎して貰えると思っていたわけではない。
カレーは根気強く作り続けるしかないだろう。
俺は、そのように思うのだった。
昼食が終わった後は、かねてから着手したかったパスタの作成にチャレンジする。
サフアだけで作った場合、好ましい食感に仕上がる事が出来なかったのだ。
穀物はサフアしかないのかと思っていたら、3種類程、穀物と呼ばれるものが存在した。
どれも粉状になって売っているが、元々は豆であるらしい。
俺はそれぞれを水で練って焼き上げてみた。
味を見てみたところ、おそらくリンギがソバのごとき食材で、ラエヌがコーン、テルマが大麦といったところであった。
俺はサフアとテルマを混ぜ合わせて、麺を打ってみた。
比率を変えて4種類の麺を用意した。
それを熱湯で茹で上げて、味見をする。
「ふむ、サフアとテルマが7対3の比率のものが一番美味しいな」
サフアの小麦のような風味が鼻に抜けていく。
俺は確かな手応えを感じて、7対3の比率で3人分の麺を打つことにした。
ソースは、トマトのごときイノッサをベースにしたものである。
まず、タマネギのごときカペラをみじん切りにする。
兎肉は薄切りにしておく。
鉄鍋に火を入れて、マオマオの油を熱し、タマネギのごときカペラを入れる。
木べらで攪拌しながら、カペラがしんなりするまで炒める。
そこに兎肉を入れて、火を通ったら果実酒を加えてアルコールを飛ばす。
そこにトマトのごときイノッサを4つ入れ、水を加えてコンソメと塩ふたつまみを入れる。
おろしニンニクのごときおろしダッキを2個分と、黒胡椒を少々加えて味を調える。
さて、パスタは食べる前に茹でればいいので、汁物料理を作っておく。
その後は、ジャガイモのごときフォンディを細かく切って、水に浸けて抽出する。
かねてから考えていた、片栗粉の作成だ。
あとは乾くのを待って、料理に使えば良い。
時間が空いたので、菓子の準備をしよう。
器にサフアと砂糖をふるい入れ、天然酵母を加えて、泡立て器で混ぜる。
そこに卵を割りほぐし、牛乳を加えてよく混ぜる。
あとは焼くだけなので、準備はここまでだ。
あと2時間位時間があるので、俺は牛の肉を使って、ビーフシチューを仕込む事にした。
具材は、タマネギのごときカペラ、ニンジンのごときメイリグ、ジャガイモのごときフォンディである。
牛肉の表面を焼いたら、ローリエのような香草を入れて、1時間程煮込む。
牛肉が柔らかくなったら、片手鍋を熱して、乳脂を入れ、野菜を炒める。
野菜に火が通ってきたら、肉の鍋に加える。
その後は、赤ワインのごとき果実酒と、ケチャップ、ウスターソース、とんかつソースを混ぜて煮詰めた煮汁を加えて、30分程煮る。
ビーフシチューが完成した頃合いで、午後5時の鐘が鳴った。
晩餐の時刻である。
俺は鉄鍋に湯を沸かして、パスタを茹で上げた。
リーズヘッグが、茶の準備をしてくれた。
俺は茹で上がったパスタを木皿に盛り、温めた煮汁をかけた。
汁物料理も温め直して、木皿に盛る。
そしてビーフシチューを木皿に盛ったら、配膳だ。
「今日はサフアを使ったイノッサのパスタを用意しているよ。これがサフア料理に分類されるかわからなかったから、フランスパンも用意してる。あと、肉料理はビーフシチュー、汁物料理はコンソメスープだよ」
俺も椅子に座り、木匙を取り上げた。
「パスタは木匙で、くるくるっと巻き取って食べて欲しい」
俺は見本を見せるようにして、パスタを巻き取って食べてみせた。
うーん、トマトのごときイノッサの風味が、とても芳醇だ。
麺のサフアの風味がふわりと香り、たまらない美味しさだ。
「食いにくいが……こりゃあ、美味だな」
「なにこれ、なにこれ! すっごく美味しいよーっ!」
パスタは、受け入れて貰えたようだ。
俺は汁物料理をすすりながら、ビーフシチューも食べてみた。
肉は柔らかく、肉汁が溢れ出てくる。
じっくり煮込まれたニンジンのごときメイリグ、ジャガイモのごときフォンディも、素晴らしい美味しさだ。
「今日はちょっと豪勢な献立に挑戦してみたんだ。肉料理の味はどうだい?」
「実に美味いビーフシチューだった。これはフランスパンで食べたい味だな」
「すごく深みのあるお味で、すっごく美味しいよ! こんな料理は、どこの国でも食べたことないよ!」
「二人のお口に合ったようで良かったよ。問題は、パスタをどうやって売るか、って事なんだが……」
「お昼はサンドイッチを希望するお客さんが多いし、夜は、出してもいいと思うけど……」
「肉料理とフランスパンを出すなら、パスタを出す意味がないな」
「やっぱりそうか……。なんとなくそんな気がしてたんだよ」
「キョウスケ、元気出して!」
「まずはサフア屋に行かねばならん。売り方を考えるのは、その後だ。次の休業日を、開けておけよ、キョウスケ」
「了解、リーズヘッグ」
そうして晩餐は和やかに進んでいき、料理が尽きた頃に、俺は立ち上がった。
「じゃあ、菓子の準備をするよ」
かまどに火を付けて、片手鍋に薄くマオマオの油を敷く。
そこにホットケーキのタネを流し込み、焼いていく。
綺麗に焼き色がつく頃にひっくり返して、火を通す。
焼き上がったホットケーキを2枚重ねて、乳脂を乗せて、砂糖で作った蜜をかければ出来上がりだ。
「お待たせ。今日の菓子は、ホットケーキだよ」
皆に配膳して、俺も席に着く。
木匙で一口ぶんを切り取り、口に入れる。
優しい甘さとサフアの風味がたまらない一品である。
「あー、美味しい。なんだかほっとする味わいだねー!」
「これは安心して食べられる味だな。慣れ親しんだサフアの風味がたまらんな」
二人は満足そうにホットケーキを食べていた。
俺も木匙でホットケーキを食べながら、他愛ない雑談に花を咲かせるのだった。




