大切な休日
それから数日が過ぎ去って、今日は休日である。
朝食を終えた俺は、まずはチョコレートケーキの改良に手を付ける事にした。
まずは卵と砂糖を泡立て器で混ぜ合わせる。
そこにチョコレートのごときヨーデルと乳脂を混ぜたものを加えて、混ぜ合わせる。
その後、振るっておいたサフアと天然酵母、ひとつまみの塩を入れて、しっかりと混ぜ合わせる。
ここで、細工屋に頼んで作って貰ったケーキ型の登場だ。
ケーキ型に生地を流し込む。
余熱しておいた石窯で、30分程焼く。
焼き上がったら、粗熱を取ってしばらく冷ます。
「うん、出来映えは文句なしだ」
出来ればホイップクリームを添えたいところだが、ハンドミキサーのようなものを作るには、かなりの金額が必要だと聞いて、断念した。
チョコレートケーキを6分割して、3人分用意する。
まだ昼食には早い時間だ。
俺は2階のリーズヘッグの部屋をノックした。
「キョウスケだけど、出てこれるか? チョコレートケーキの試食を頼みたいんだけど……」
ドアが開いて、リーズヘッグが出てきた。
ふわふわの栗色の髪で、瞳は明るい緑色。
半袖のシャツに、茶色のズボン。
いつも通りのリーズヘッグだ。
「甘い香りが2階にまで香ってきたぞ。チョコレートケーキは客にも好評だったからな。俺も期待しとるぞ」
「うん。プリムにも声をかけるから、先に降りていてくれるかい?」
「ああ」
階段を降りていくリーズヘッグを見送って、プリムの部屋の前に立つ。
ノックをした後、声をかける。
「キョウスケだけど、チョコレートケーキの試食に来てくれないかい?」
ガチャリと扉が開いて、プリムが出て来た。
真っ赤な髪をポニーテールにした、桃色の瞳の女の子だ。
半袖のシャツに、紺色のロングスカートをはいた、いつもの格好である。
「チョコレートケーキの試食なら、是非あたしも! リーズヘッグはもう呼んだ?」
「うん。先に1階に降りて貰ったよ」
「じゃあ、行こっか。甘い香りがしてたから、期待してたんだーっ!」
プリムと連れ立って1階に降りると、リーズヘッグが茶を入れてくれていた。
「茶をありがとう、リーズヘッグ。じゃあ、これが改善版のチョコレートケーキだ。味見をよろしくね」
俺は全員分のチョコレートケーキを配り、木匙を取り上げる。
一口ぶんを切り取って、口に運ぶ。
すると、チョコレートのごときヨーデルの苦みと香ばしさがふわりと広がり、鮮烈な甘さが口内を満たす。
ヨーデルの分量も、まずはこれで良いだろう。
「うん、俺は美味しいと思ったよ」
「うむ。美味い」
「すっごく美味しいね! こないだのチョコレートケーキより美味しいかも!」
「こないだのチョコレートケーキより、厚みがあるけど、一人分はこの量で良いと思う?」
「うーん。ちょっと重いかなー? って思うけど、美味しいから、多い方が喜ばれそう!」
「そうだな。俺もこの量で良いと思うぞ」
「そっか。じゃあ今度、このチョコレートケーキを菓子として出させて貰うよ」
俺はチョコレートケーキを口に運び、その日は20台は焼かないとなぁ、と計算する。
置き場所は、大きな棚があるので問題ない。
あとはケーキの型がもう2個あれば嬉しいといったところだろう。
「リーズヘッグ、出来ればケーキ型を、あと2つ、同じものが欲しいんだけど、どうだろうか?」
「構わんぞ。細工屋で明日頼んで来る」
「ありがとう。これで時間も短縮出来るよ」
しばし、チョコレートケーキを味わって、お茶を飲んだら解散である。
「試食に付き合ってくれて、ありがとう。12時の鐘が鳴ったら、昼食にしよう」
皆は部屋に戻り、俺は香草のブレンドに挑む。
カレー用のスパイスに使えそうなものは、のきなみ使おうと考えている。
その中で特に辛みを感じる香草は、分量を調節し、甘口から中辛の中間を目指そうとしている。
現在、16種類の香草をブレンド中。
最早、カレーを作ってみない事には味の判別はつきそうにない。
鉄鍋に火を入れて、香草の粉を炒めていく。
十分に香りが匂い立ったら、皿に移す。
タマネギのごときカペラのみじん切りを、マオマオの油で飴色になるまで炒める。
肉は兎の肉を使用する。
肉は表面をしっかり焼いておく。
そこに一口大に切ったタマネギのごときカペラ、ニンジンのごときメイリグ、ジャガイモのごときフォンディを入れて、軽く炒める。
そこに水を加えて、じっくり煮込む。
カレーは恐らく、汁物料理とされるのだろう。
となると、何か肉料理があると望ましい。
俺は兎の肉を一口大に切り、醬油のごときユーカンと、果実酒、おろしニンニクのごときおろしダッキと、おろしショウガのごときおろしヘイロを混ぜたものに漬け込む。
ダッキとヘイロは、カトリーヌの屋敷で教わったものだ。
カレーの鍋が十分に煮えたら、カレー粉を入れる。
結構辛みが強い気がするので、リンゴのごときケイルをすりおろして入れる。
何度か味見をして、辛さの調節をする。
リンゴのごときケイルは2個半、入れた。
丁度12時の鐘が鳴ったので、鉄鍋に火を入れる。
たっぷりの油で、唐揚げを揚げる。
じゅわじゅわと色付いていく唐揚げは実に美味しそうだ。
付け合わせのキャベツのごときノーマを千切りにして、作り置きのドレッシングをかける。
油を切った唐揚げを皿に盛ったら、完成だ。
リーズヘッグが茶の準備をしてくれた。
俺はまず、カレーを配膳する。
次に唐揚げとフランスパンを置き、俺も着席した。
「香草の料理は、カレーという俺の故郷の料理なんだ。肉料理は兎肉の唐揚げ。さあ、召し上がれ」
俺は自分も木匙を取り上げて、まずはカレーから頂くことにした。
カレーの肉をすくい、口に入れる。
カレーの香草が絡み合い、またとない味を実現している。
少し辛みは弱いが、十分カレーと呼べる事だろう。
兎の肉も、しっかり旨みを感じる。
ジャガイモのごときフォンディと、ニンジンのごときメイリグも美味しい。
タマネギのごときカペラは、ほとんど溶けてしまったようだ。
次は、唐揚げである。
口に入れると、熱い肉汁がじゅわりと溢れ出てくる。
舌の上で兎肉の旨みが広がり、思わず笑顔になってしまう。
申し分ない出来映えだ。
俺は二人の顔を見回した。




