《夕闇亭》のカレー
しばらく待って、料理が届いた。
まずは、カレーである。
ゴロゴロ入っている兎肉と、具材は基本の3種のようだ。
煮汁を飲んでみると、はっきりと甘い。
果実の酸味も感じられる、フルーティーなカレーだ。
「カレーは、果実の甘さが美味しいね」
「ん。美味しい」
リリアの笑顔が可愛い。
次は、肉料理だ。
肉と、ブロッコリーのごときセルルと、ニンジンのごときメイリグが見える。
上から黒い煮汁が掛けられている。
食べてみると、柔らかな兎肉の旨みと、酸味のある煮汁の美味しさが口の中に広がる。
蒸し料理にワリアの酢を使った煮汁が掛けられた、そういう料理なのだ。
「肉料理は煮汁が美味しいね」
「ん。お肉も柔らかくて好き」
リリアはご機嫌だ。
俺もリリアを喜ばせる料理が作りたい。
しばらくして、菓子が届いた。
見た目は、緑と橙色と黄色の団子だ。
緑を食べてみると、ホウレンソウのごときテーペが練り込まれている。
中の餡は、大豆のごときマオマオの豆を甘く煮たもののようだ。
橙色はニンジンのごときメイリグ、黄色はサツマイモのごときダイナである。
個人的には、餡は小豆のごときタペの方が調和しそうだが、悪くない。
「意外と美味しいね」
「ん。この餡の味は珍しい」
俺とリリアは菓子をゆっくり堪能し、店を出たのだった。
店を出た後は、手をつないで夜道を歩く。
《竜の跳ね鳥亭》へ着いたのは、20分後の事だった。
俺の部屋に入り、ベッドに腰掛ける。
「シャワーを借りて良い?」
「うん。ごゆっくりどうぞ」
リリアは荷物を持って、シャワーへ行った。
いつもこの時間は手持ち無沙汰になる。
俺はリリアを思いながら、時間を過ごした。
半刻程して、パジャマ姿のリリアが戻ってきた。
「お待たせ」
「じゃあ、俺もシャワーを浴びてくるね」
「ん。待ってる」
俺は部屋を出て、浴室に入った。
シャワーを浴びながら、思うのは、リリアの事だけだ。
俺はゆっくりシャワーを浴びて、部屋に戻った。
「お待たせ」
「ん。今日も一日、楽しかったね」
「うん。すごく楽しい一日だったよ。リリアと一緒にいると、すごく幸せだよ」
「わたしも、すごく幸せ。今夜もいっぱい抱き締めてね……」
俺はリリアを押し倒し、唇を奪った。
ぎゅっとリリアの身体を抱き締める。
リリアも俺を抱き締め返してくれる。
そうして、俺はリリアと幸せで情熱的な夜を過ごしたのだった。
9月29日から、10月6日までは、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、アーロン率いる第一騎士団の騎士達や、リオン率いる第二騎士団の騎士達、ローガン率いる第三騎士団の騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
10月7日。
この日は休日であるが、店の改築について話し合う為、全員集合である。
プリム、ジュレ、リーズヘッグ、カトリーヌ、俺、ファナ、アディスの7名だ。
テーブルは6名がけなので、椅子をひとつ用意して、そこにアディスが座った。
午前11時の鐘が鳴った。
お茶の配膳が終わり、全員席に着く。
「今日は集まって貰い、感謝している。店の改築について話し合いたい。現在決まっていることを、カトリーヌから話して貰う。質問があったら遠慮なく聞いてくれ。では、カトリーヌ、頼む」
「まず、店は3階建てにするわ。客席は全部で252名入るように作ります。2階は12人席の個室を10個。1階は、カウンターが12席。6人がけのテーブルが、20個よ。2階は予約か6名以上のお客を案内します。個室はテーブル料が青銅貨5枚かかります。ここまではいいかしら?」
「し、質問です。2階はベルで呼び出されるような仕組みですか? 6名で回せるか、自信がありません」
「ええ。ベルで呼び出しよ。じゃあ、2階は給仕を10名にしましょうか。それなら、足りると思うわ」
「は、はい。ありがとうございます」
「献立が変わるって聞いたよ!」
「ええ。個別で選んで頼んでもらう形になるわね。サフア料理、汁物料理、肉料理、菓子が10種類ずつよ。給仕はちょっと大変かしら」
「そうだね。全員バラバラに頼むわけでしょ? 伝票の書き方も考えなきゃ駄目だね」
「11月に従業員教育をやって貰うんだけど、その時に考えましょう。練習が出来るようにしておくわ」
ジュレとプリムが質問をして、納得したようだ。
「給仕は全員で16名。料理番は10名よ。プリムが1階の責任者、ジュレが2階の責任者。料理番は、1階がキョウスケ、2階がアイロスね。アイロスは11月から副料理長になるわ」
「うむ。個室の客相手というのは、気が引き締まる思いだ。精一杯務めさせて頂く」
アイロスはそう言った。
「次に、11月の予定を述べます。休日は今と同じ日にちを休日にすることにします。11月1日から、11月6日までで、それぞれの仕事を新人に叩き込んで貰います。11月8日から13日までは、おさらいをして貰います。11月15日から11月20日までは、空けておきましょう。11月22日から11月27日までは、店員教育にあてます。貴族も来るから、教育は必須ね。11月29日はお休みで、11月30日にプレオープンよ」
「あの、露店も11月はお休みって聞きました。再開は12月1日からですか?」
「ええ、その通りよ。仕込みは1階の調理場を使ってね。あとは何かあるかしら」
「せっかくなので、お客に熱望されている、肉料理の露店も出したらどうでしょうか?」
「あら、キョウスケ。どうする?」
「出しましょうか。あと二人雇って貰って、料理は俺が教えます。兎肉のサフア巻きで、3種類の味を日替わりで出します」
「ありがとうございます。俺も気になっていたんで、ほっとしました」
アディスはそう言って微笑んだ。
相変わらず麗しい美貌である。




