《銀色の星空》の菓子
俺達は20分程歩いて、甘味屋に到着した。
「着いた! ここが、《銀色の星空》」
お店は、小さなお店だ。
俺達は給仕の案内で、奥のテーブルに着席した。
「ええと、わたしのおすすめを頼むね?」
「うん。宜しく頼むよ」
「すいませーん! 淡雪を2つと、お茶を2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕が、お茶を置いて下がっていく。
「そうだ、リリア。11月の30日なんだけどね。《竜の跳ね鳥亭》のプレオープンをするんだ。リリアと仲間達を招待させて欲しいんだけど、受けて貰えるかな?」
「ありがとう。勿論招待をお受けします! どんなお店になるか、今から楽しみだね!」
「うん。献立もね、変わるんだ。日替わりじゃなくて、自分で献立を選ぶようになるんだよ。サフア料理、汁物料理、肉料理、菓子をそれぞれ10種類、用意する事になったんだ」
「そんなにいっぱい献立があったら楽しいね! わたしは毎回カレーを頼めるから、嬉しいなぁ」
「そうだね。選べる献立を楽しんで貰えたら嬉しいよ」
リリアはにこにこ笑っている。
喜んで貰えて嬉しい。
「キョウスケは1階にいるの?」
「うん。俺は1階で、4人の助手が着くよ。アイロスは2階だね。アイロスにも4人の助手が着くよ」
「一気に料理番が増えるんだね。給仕も増えるんだよね?」
「うん。1階に6名、2階に6名で12名だね。プリムが1階、ジュレが2階になるよ」
「そっかぁ。2階の個室って、私達でも使えるの?」
「ごめんね、6名以上のお客しか案内しないことになってるんだ。でも、リリア達なら、空いてるときなら入れるようにしようか?」
「いいの? すっごい嬉しい!」
「うん。テーブル料が青銅貨5枚かかるけど、良いかな?」
「うん! 個室って特別感があって良いよね」
「そうだね。気兼ねなく過ごせるね」
そこで、菓子が届いた。
見た目は、二つに折ったサフアの生地である。
中にクリームが入っているようだ。
俺は突き匙で割って食べてみた。
クリームと生地が、驚くほど柔らかい。
牛の乳を使ったクリームで、存分に甘い。
生地の柔らかさと相まって、溶けていくかのようだ。
「これは、美味しいね」
「でしょう? 柔らかくって溶けるみたいになくなるから、淡雪なんだって。料理番が異国の出身らしいよ」
「へえ。なるほどね」
「もしかして、雪を知ってる? 溶けて消えるって話だよ」
「うん。俺の故郷でも、冬は雪が降っていたよ。このあたりは、いつも暖かいから、雪は降らないだろうね」
「えーっ、残念! 溶ける雪を見てみたい!」
リリアとなら、異国を旅しても良いなぁ。
ただ、店をそんなに長く休めるかどうかだな。
食後は、店を出て広場まで歩く。
広場に着いたら、椅子に座っておしゃべりだ。
「今日はどんなおとぎ話をしてくれるの?」
「今日は、ジャックと豆の木だね。むかしむかし、ジャックと言う男の子が母親と一緒に暮らしていました……」
俺は精一杯臨場感溢れる声音で語って見せた。
リリアは真剣に聞いている。
俺が話し終えると、ふう、と息をついた。
「ジャックは欲張りだね。そう何度もお城に行ってしまうなんて、しかも泥棒だよ。良くないと思うな。でも、幸せに暮らせたなら良かったね」
「うん。お宝を盗まれた鬼は気の毒だけど、人食い鬼だったみたいだし、仕方ないさ」
「今日も面白かった。キョウスケは話し上手」
「それは嬉しいな。ありがとう」
それからは、雑談で盛り上がった。
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
気付けば陽は落ちて、午後5時の鐘が鳴った。
「そろそろ行こうか」
「うん。行こう」
リリアと手をつないで歩く。
20分程歩いて、料理屋に着いた。
「着いた。ここが《夕闇亭》」
俺達は店に入り、給仕の案内で、奥のテーブルに着席した。
「えっと、肉料理と、菓子を適当に頼むね」
「うん。お願いします」
「すいませーん! カレー2つと、兎肉のやわらか蒸しを2つと、菓子の野菜団子を2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕は、お茶を置いて下がっていく。
今日はどんなカレーなのか、楽しみだ。




