《ディロイの爪》のカレー
9月28日。
今日の休日は、リリアと逢い引きである。
午前11時の鐘が鳴り、リリアが顔を出す。
無地の半袖のシャツに朱色の巻きスカート。
胸には、俺の贈ったアミュレットが輝いている。
今日もリリアは可憐であった。
「お待たせ。今日はどこに行こうか?」
「今日も可愛いね、リリア。カレーの店なら、カトリーヌに聞いておいたよ。《ディロイの爪》、《夕闇亭》、《甘露寺亭
》、《夢の足跡》の4店舗だね。今日は《ディロイの爪》へ行こうか?」
「ん。すごく嬉しい。行こう!」
俺達は、手をつないで歩き始めた。
「あのね、仲間がある財宝漁りに恋をしたっていう話を、覚えてる?」
「勿論だよ。うまくいったのかい?」
「うん! 交際を申し込んで、了承を貰ったの。今日もね、逢い引きしている筈なんだぁ」
「それはおめでとう。凄く頑張ったんだね。仲間の彼女の、何処が気に入ったんだろう?」
「長身で、美人なところだって。性格がおっとりしてるのも、良かったみたい。お互い財宝漁りだから、話も弾むって言ってたよ」
「へえ。それは良かったじゃないか。財宝漁りって事は、何かを探しているのかな?」
「ううん。一獲千金を求めているんだって。まだ24歳なんだけど、財宝漁りで貯金を貯めて、老後は甘味屋をやりたいみたい」
「なるほど。料理帳は高価だから、貯金が必要になるね」
「今でも貧乏ではないみたい。《金の獅子亭》っていう、高級宿に泊まっているの。装備品も一級品で、格好良いの」
「そっか。彼がどんな甘味屋をやるか、楽しみだね」
俺は笑顔でそう言った。
リリアはとても嬉しそうだ。
それから、しばらく歩いて料理屋に到着した。
「ここが、《ディロイの爪》」
俺達は、店に入り、給仕の案内で奥のテーブルに着席した。
「カレーと、肉料理だよね。適当に頼むね」
「うん。宜しくね」
「すいませーん! カレー2つと、牛肉の甘辛焼きを2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕がお茶を置いて下がっていく。
「リリア、《竜の跳ね鳥亭》なんだけどね。改築することになったんだ」
「ええっ!? 大きくなるの?」
「うん。2階に個室を作るんだ。全部で252名、入れるようになるよ」
リリアは頬を火照らせ、驚いた。
「すっごーい! でも、いっつも混んでるもんね。入りやすくなって良いと思う!」
「ありがとう。それで、11月はまるまるお店が休みになるんだ。その間はサフア屋で寝起きして、新しい料理番に料理帳を教える予定だよ」
「へー。そうなんだ。わたしは泊まりに行って良いの?」
「勿論だよ。カトリーヌに許可を取ったからね」
「えへへ。サフア屋って大きなお屋敷なんでしょう? 行ったことがないなぁ」
「うん。すごく大きなお屋敷だよ。浴室も広いかもしれないね」
「楽しみだなぁ。あっ、まずは10月の予定を決めないとだよね。10月28日に会いたいです!」
「ありがとう。次は10月28日だね」
俺は心のメモに逢い引きの日を記憶した。
「お待たせしました」
料理が届いた。
カレーは、真っ赤である。
赤唐辛子のごときチコの実が、たっぷりかかっている。
煮汁を飲んでみると、強い辛みが舌の上に広がった。
具材は、基本の3種と、ナスのごときビトー、ネギのごときポーロが使われている。
「カレーは、ちょっと辛みが強いね」
「ん。辛くて美味しい」
リリアが可愛くてほっこりする。
次は肉料理だ。
牛肉のステーキに、茶色い煮汁がかかっている。
肉の上には、赤唐辛子のごときチコの実もかけられている。
肉を噛むと、フルーティーな美味しさが口の中に広がった。
焼肉のタレに大量のリンゴのごときケイルのすりおろしが入っている。
そこに赤唐辛子のごときチコの実の辛みが重なって、甘辛い味になっていた。
「肉料理は甘辛い味で美味しいね」
「ん。美味しい」
リリアはパクパク食べている。
相変わらず、リリアは可愛い。
俺は平べったいサフアの生地を千切り、口に放り入れる。
俺はゆっくり料理を食べながら、リリアを見つめるのだった。
食後に店を出たリリアが、宣言した。
「甘味屋へ行きます!」
「うん。今日はどんなお店だい?」
「今日は《銀色の星空》っていうお店。最近発見したんだぁ」
「そっか。どんな菓子か、楽しみだね」
俺達は手をつないで歩き出した。




