改築の提案
「出来れば、祝福祭までには改築したいわ。10月7日は、プリムやジュレ、アイロスにも同席して貰いましょう。みんなの了承が得られたら、さっそく告知よ。11月はまるまる休んで、12月1日に新装開店しましょう」
「俺の店がそんなにでかくなるなんて、ぞっとせんな」
「行列がなければ、お客はもっと入るわ。がっつり儲けてやりましょう。わたしも最大限、協力するわ!」
カトリーヌは燃えている。
店のことはリーズヘッグとカトリーヌに任せて、俺は献立の思案だ。
「カトリーヌ。菓子のコンテストで優勝した菓子も出すべきだよね? そしたら、料理人の一人には菓子の担当を作るべきだ。あとは、献立の種類だね。肉料理、汁物料理、菓子の3種類を用意するとして、献立は何種類ずつが理想かな?」
「そうね。5種類ずつでどうかしら。献立表は絵をつけて、革表紙をつける。《アフロディーテ》でも、あの献立表は評判が良いし、効果的ね」
「5種類か。ちょっと待って。昼の献立も含めるなら、サフア料理も追加だね。パスタとサンドイッチを入れると考えると、10種類は必要じゃないかな。サフア料理、肉料理、汁物料理、菓子を10種類ずつ。これで行こう」
「増える分には嬉しい限りよ。調理場は大変だろうけど、頑張ってね。絵は、休業中に描かせるから、よろしくね。決める事って、これ位かしらね」
「じゃあ、俺は昼食を準備するね。リーズヘッグと話していておくれよ」
俺は席を立ち、調理場に入った。
汁物料理を温めて、肉料理を揚げる。
付け合わせのサラダを盛り付ける。
菓子にも火を入れて、準備する。
店を改装したら、どんな風に俺は店を切り盛りするだろう。
俺は楽しみにしながら、料理を仕上げるのだった。
昼食後は、またミーティングである。
「《アフロディーテ》は、好調よ。一時は満席なった位、お客が来てくれているの。やっぱり、菓子のコンテストで優勝したのが大きいわね。おかげでヨーデルパフェが、物凄く売れているわ」
「ほう。わかっておった事だが、菓子のコンテストで優勝すると、そんなに集客効果があるんだな。これは来年も出場すべきだな」
「待ってくれよ、リーズヘッグ。もう自信のある菓子はないよ? 変わり種なら、心当たりがあるけどさ」
「変わり種か。優勝は難しいか?」
「今日の晩餐に作ってみるから、良かったら吟味してみてくれ」
「わかった。楽しみにしておるぞ」
「出来れば、また優勝して欲しいわね。まあ、頑張ってみて頂戴。《アフロディーテ》はね、個室の予約が相次いで、いま一ヶ月待ちなの。みんな、個室で菓子を楽しみたいみたい」
「個室は人気があるんだね。そうだ、第一騎士団の団長さんが、女性でさ。姫君を連れて、菓子を食べに行くって言っていたよ。カナリアっていう人だよ」
「その名前なら予約帳で見たわ。第一騎士団の団長さんなのね。きっと華々しく店を彩ってくれる事でしょう。麗しい姫君には是非来店して欲しいわ」
カトリーヌは俄然張り切っているようだ。
「早速建築屋に図面を引いて貰わなくちゃね。内装も凝った作りにしたいわ。調理場は10人入れるように作らなくちゃ。あとは、予約帳の用意と、プレオープンの準備も必要ね。11月に一ヶ月休むでしょう? その間は、リーズヘッグとキョウスケは勿論、プリムもジュレも、サフア屋で寝泊まりして頂戴ね。遠慮はいらなくてよ」
「それはありがたい。キョウスケもそれで良いか?」
「うん。それで相談なんだけど、1日でいいから、リリアを泊めていいかい?」
「勿論よ。11月の予定を決めましょうか。休日は今と同じ日にちを休日にすることにしましょう。11月1日から、11月6日までで、一通り料理帳を伝授して貰うわ。11月8日から13日までは、予備日ね。おさらいをしながら、画家に絵を描いて貰うわ。11月15日から11月20日までは、空けておきましょう。11月22日から11月27日までは、店員教育にあてます。貴族も来るから、教育は必須ね。11月29日はお休みで、11月30日にプレオープンよ」
「カトリーヌの言うとおりで構わんぞ。プレオープンには、知り合いを招いて構わんな?」
「ええ。個室は騎士団の方に使って頂きましょう。基本的に、一階への案内になるわね」
「常連の連中も招いてやらなくてはな。俺が塩辛い料理を出していた頃からの付き合いだ。招いてやりたい。だいたい30名位だ」
「わかったわ。じゃあ、招待客はリーズヘッグに任せるわ。わたしも、プレオープンの日は《竜の跳ね鳥亭》へ来てみるわ。エンリコとサリーも一緒にね」
「わかった。俺は土地の買い上げの話を進めておく。着工には余裕で間に合う」
「来週から忙しいわよ! リーズヘッグは毎週わたしと会えるように予定を空けておいてね」
「わかっている。宜しく頼む」
リーズヘッグは重々しく頷いた。
俺も料理を決めなければいけない。
「10月7日の集会だけど、ファナとアディスも無関係じゃないから、呼んで良いかな?」
「ええ。露店も11月は休まないといけないものね。宜しくお願いするわ」
「あと、カレーの取り扱い店を教えてくれないか?」
「良いわ。新規に増えた店を教えましょう。《ディロイの爪》、《夕闇亭》、《甘露寺亭
》、《夢の足跡》の4店舗ね。カレーは問い合わせが多いわ。これからも増え続けるでしょうね」
「ありがとう、カトリーヌ」
これで下準備は整った。
あとは、リーズヘッグに任せて良いだろう。
「俺は部屋で献立を吟味するよ。あとは二人で、ごゆっくり」
俺は席を立ち、部屋に戻った。
さて、10種類ずつ、料理を決めなければな。
俺はどこかわくわくしながら、思案するのだった。
9月22日から、9月27日までは、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、アーロン率いる第一騎士団の騎士達や、リオン率いる第二騎士団の騎士達、ローガン率いる第三騎士団の騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
プリム、ジュレ、ファナ、アディスに店の改築の話をすると、驚かれた。
「全部で252名もお客を入れるなんて目が回っちゃうね! でも、凄くお客は喜ぶと思うよ!」
「ぼ、僕らが5名ずつ、給仕を教育するんですよね。責任を感じます」
「あたしが1階で、ジュレが2階だね。貴族が来るかもしれないから、ジュレは適任だよ」
「う、歌を楽しみにしているお客も多いですよね。プリムがいないのは心細いですが、精一杯頑張ります」
プリムとジュレは、そのように言っていた。
リーズヘッグは責任が重くなる分、給料は弾むと、約束してくれた。
副料理長になって欲しいと願うと、アイロスは快諾した。
「あと数年かかるかと思っていた。案外早かったな」
改築に関しては、賛成であると言う。
あっさり受けて貰えて、ほっとした。
「11月はまるまる露店もお休みなの? お客が残念がるだろうなぁ」
「あとは、10月7日の会議でお聞きします。何だか楽しみですねぇ」
ファナとアディスは、そう言っていた。
10月7日は、全員集合が決定され、改築までのカウントダウンが始まったのであった。




