↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
136/156

《黒の拘束》のカレー

 7月28日。

 今日はリリアと逢い引きする日だ。

 午前11時の鐘が鳴り、リリアが顔を出した。

 無地のシャツに、朱色の巻きスカート。

 胸には、俺の贈ったアミュレットが輝いている。


「キョウスケ、こんにちは。今日は、何処に行く?」


「今日も可愛いね、リリア。カトリーヌにカレーの取り扱い店を聞いておいたよ。《闇の拘束》、《笑顔亭》、《とさか亭》、《まろび猫》の4店舗だ。行ってみようか?」


「うん! じゃあまずは、《闇の拘束》から行ってみよう! しゅっぱーつ!」


 俺とリリアは、手をつないで歩き出した。

 

「《アフロディーテ》がね、宿でも話題になっていたよ! 騎士が出入りしているから、女性客に、特に人気みたいだね」


「へえ、そうなんだね。ローガンやアーロンのおかげだね」


「特に菓子のコンテストで優勝した菓子が食べれるっていうのが、大きいみたい。キョウスケは凄いね。なんだか遠い人みたい」


「とんでもない。リリアがいてくれたから、優勝出来たんだよ。有名になっても、俺は俺さ」


「ん。キョウスケの隣には、いつもわたしがいるからね」


「うん。心強いよ」


 15分程歩いて、料理屋に到着した。

 中規模の店で、外観は普通だ。


「ここが、《黒の拘束》」


「外観は特に黒くないね」


「そうだね。料理が黒いのかも」


 俺達は店に入り、給仕の案内で奥のテーブルに着席した。

 

「あ、献立にカレーがある。肉料理は適当に頼むよ?」


「うん。お願いね」


「すいませーん! カレーを2つと、兎肉の黒焼きを2つ、お願いします!」


「かしこまりました」


 給仕がお茶を置いて下がっていく。


「料理、楽しみだね」


「うん。美味しいと良いな」


「そうだ。リリア、来月はいつ会おうか?」


「じゃあ、8月28日が良い。その日も、泊まっていく」


「了解。楽しみにしているね」


 リリアが嬉しそうに微笑んだ。

 それだけで、心が温かくなる。

 好きだなぁ、と思うのだ。


 しばらく待って、料理が届いた。

 カレーは普通の色だ。

 俺は煮汁をすくって、口に入れてみた。

 辛さは、中辛程度である。

 しかし、強い甘みも感じる。

 少しアンバランスな印象だ。

 具材は基本の3種と、ホウレンソウのごときテーペ、ナスのごときビトーである。


「カレーは、少し甘みが強いかな」


「ん。美味しい」


 リリアが満足しているのなら、それでいい。

 お次は、肉料理である。

 丸い形状で、ごまのごときミロが表面を覆っている。

 確かに外見は真っ暗だ。

 それともう一種類、パプリカのごときディラーがみじん切りにされ、団子を覆っている。

 黒と黄色と赤で、見た目はカラフルで綺麗だ。


 ミロ団子のほうをかじる。

 芳醇な肉の旨みと、中に隠されていた乾酪が混ざり合い、とても美味しい。

 パプリカのごときディラーの団子も、食べてみる。

 これは文句なしに美味しかった。

 野菜の甘みと肉の旨み、トロリとした乾酪が、絶妙のハーモニーを奏でている。

 少々塩気が強いかな、という位で、問題点も見当たらない。


「お団子、美味しいね」


「ん。とっても美味しい」


 リリアの笑顔が可愛い。

 俺はゆっくり料理を堪能するのであった。


 食後に、店を出ると、リリアが宣言した。


「甘味屋に、行きます!」


「今日はどこに行くんだい?」


「《流浪の旅人》っていうところ。菓子のコンテストで優勝した事もあるんだよ!」


「へえ。そりゃあ凄い」


「最近は名前を聞かないけど、有名な店だよ。わたしも久しぶりに行くんだぁ」


「そっか。楽しみだよ」


「すっごく楽しみしててね!」


 リリアと手をつなぎ、歩き出す。

 リリアはご機嫌だ。

 雑談をしながら、時間を過ごす。

 20分程度歩いて、甘味屋に到着した。


「ここが、《流浪の旅人》」


 店はそんなに大きくない。

 綺麗な外観だ。

 俺達は店に入り、給仕の案内で奥のテーブルに着席した。


「わたしのおすすめでいい?」


「良いよ。宜しくね」


「すいませーん! 星の輝きを2つと、お茶を2つ、お願いします!」


「かしこまりました」


 給仕がお茶を置いて下がっていく。


「これはね、菓子のコンテストで優勝した菓子なの。その頃は珍しい手法だったんだよ」


「そっか。期待がふくらむね」


「これから、キョウスケみたいにヨーデルを使った菓子が増えるんだろうなぁ。優勝者の菓子って真似されるから」


「それはしょうがないと思うよ。美味しい菓子が増えるなら、大歓迎さ」


「キョウスケは心が広い」


「あはは。そうふくれなくても」


 リリアの優しさの方が得難いのではないか。

 俺はそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。