アディスのお見合い
パスタを食べ終えたら、いよいよ菓子だ。
カートを運んできた給仕が、菓子を配膳していく。
「あはは。みんな菓子は2つ頼んだんだね!」
「め、目移りしてしまったので、つい」
「美味いのはわかっとる」
プリム、ジュレ、リーズヘッグがそう言った。
「安価だから2つ買って貰えるように、期待したいわね」
「期待出来そう。キョウスケの菓子は美味しいから」
カトリーヌとリリアがそう言った。
リリアは大学芋を美味しそうに頬張っている。
「草団子も美味しいよ。一口食べる?」
「いいの?」
「うん。どうぞ」
リリアは草団子をぱくりと食べた。
「ん。美味しい」
カトリーヌはスコーンを食べながら、リーズヘッグに向き直る。
「素敵な誕生日の贈り物、ありがとう。《アフロディーテ》、とても気に入ったわ」
「そうか。誕生日おめでとう。カトリーヌ。喜んで貰えて幸いだ」
カトリーヌとリーズヘッグが、そう言った。
みんなもカトリーヌに祝いの言葉を述べる。
俺はヨーデルパフェを食べながら、あたりを見回した。
「あ、エンリコも来てるね。相変わらずサリーと仲が良さそうだ」
「ということは、数名のお客様もお連れしている筈ね。ちょっと挨拶しようかしら」
すると、数名の女性がこちらにやってきた。
「ご機嫌よう、カトリーヌ。素敵なお店ね。菓子のコンテストで優勝したっていう菓子を食べに来たわ」
「わたしも菓子を楽しみにしてきたわ。カトリーヌが絶賛する菓子を食べてみたくて……あの、あちらのテーブルの麗しいお方はお知り合い?」
「フラン、ジョセフィーヌ、ご機嫌よう。麗しいお方って、きっとアディスの事ね。ええ、知り合いよ」
「良ければわたしと、お見合いして頂けないかしら」
「まあ、あなたは貴族からも求婚されていたじゃないの。そちらは宜しくて?」
「もうお断りしたわ。わたしに貴族の妻はつとまらなくてよ。お願い、カトリーヌ」
「じゃあ、アディスのテーブルに行きましょうか。わたしが紹介するわ」
カトリーヌは席を立ち、アディスのテーブルに向かった。
そしてしばらくして、カトリーヌだけ戻ってきた。
「アディスはジョセフィーヌとお見合いすることになったわ」
確かにとても美しい娘さんだった。
「ジョセフィーヌは平民なんですか?」
「ええ。父親が豪商なの。サフア屋と変わりない位、豊かな家よ。良い縁ではあるんだけど……ジョセフィーヌに露店の商売がつとまるかしら。苦労を知らない娘なのよ」
「うーん。難しいんじゃないですか?」
「まあ、あとは当人達の気持ちよね。そっと見守る事にするわ」
カトリーヌはそう言っていた。
菓子を食べ終え、会計をする為に入り口へ向かうと、第一騎士団と行き会った。
「お客様、焼き菓子は100個ずつしか在庫がございません」
「ちっ、たったそれっぽっちかよ。まぁいいや、包んでくれ」
「只今ご用意致します。少々お待ち下さい」
「あ、お前、この間の料理番だな」
「はい。《竜の跳ね鳥亭》の料理番、キョウスケと申します。《アフロディーテ》にご来店下さってありがとうございます。菓子の持ち帰りですか?」
「ああ。お前の菓子は評判が良いんだ。在庫が100個じゃちっとも足りねえよ。開店したら、たっぷり用意しとけよ」
「ご忠告ありがとうございます。気を付けますね」
「ヨーデルパフェ、美味かったよ。これからも、たまに来てやるから、ありがたく思え。俺は第一騎士団の副隊長、アーロンだ。覚えておきやがれ」
「わかりました。アーロン、またのご来店をお待ちしてますね」
俺が心から笑顔を届けると、アーロンは菓子の包みを受け取って、帰っていった。
俺達も会計を済ませて、店を出る。
今日はここで解散だ。
「カトリーヌ! すごく素敵なお店だったわ! 菓子もとっても美味しかった!」
ファナが元気一杯にそう言うと、ユーゴも賛同するように声を上げた。
「菓子が大変美味だった。また来る」
「ありがとう、ファナ、ユーゴ。ぜひ、また来て頂戴ね」
「菓子は美味でしたが、お見合いの話はびっくりですねぇ」
アディスがそう言うと、カトリーヌは眉を下げた。
「ジョセフィーヌはおっとりした娘よ。気が合うかは、わからないから、どうか会ってあげてね」
「わかりました。7月21日に《アフロディーテ》の個室で午後1時に待ち合わせでよろしいですね。とりあえず、会ってお話してみましょう」
「宜しく頼むわ。当日はわたしも同席するから、宜しくね」
アディスは大変だな。
来週お見合いか。
「リリア、またね。次は28日に会おう」
「ん。今日は楽しかった。またね」
リリアは仲間達と帰っていった。
リエルはアイロスと帰るようだ。
ファナとユーゴ、アディスも帰っていく。
「俺はカトリーヌの家に寄っていく。キョウスケ達は帰っていてくれ」
「わかったよ」
俺はプリムとジュレと一緒に歩き出した。
「《アフロディーテ》は素敵な店だね! 広いし、菓子は美味しいし、言うことなしだよ!」
「ぼ、僕も利用したいと思います」
「俺もたまに寄ろうかな。良いお店だね」
プリムとジュレと喋りながら、店に帰る。
《アフロディーテ》のプレオープンは、大成功であった。
俺は充実した心地で道を歩くのだった。




