《ターレスの月》のカレー
楽しい時間はあっという間に過ぎる。
気付けば陽は落ちて、午後5時の鐘が鳴った。
俺達は立ち上がり、料理屋向かった。
20分程歩いて、到着する。
「着いた。ここが、《ターレスの月》」
さほど大きくないその店に入る。
給仕に案内されて、奥のテーブルに座った。
「献立にカレーがある。肉料理は適当に頼むとして……菓子がある。適当に頼んで良い?」
「うん。宜しくね」
「すいませーん! カレーを2つと、牛肉の炙り焼きが2つ、あと果実の団子汁を2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕がお茶を置いて下がっていく。
「来月の逢い引きの日は、6月28日で良いかな?」
「勿論。キョウスケの誕生日を祝う日。お泊まりする日」
「うん。リリアと過ごせたら、最高に嬉しいよ」
リリアの笑顔に、胸がときめく。
きっと幸せな1日になることだろう。
それからしばらくして、料理が届いた。
カレーは真っ赤である。
俺はスープを飲んでみた。
辛みの強い味付けだ。
具材は基本の3種とホウレンソウのごときテーペとナスのごときビトー、ピーマンのごときファンである。
具材と一緒に食べると、結構美味しい。
「カレー、美味しいね」
「ん。辛くて美味しい」
次は肉料理だ。
牛肉の炙り焼きである。
野菜はニンジンのごときメイリグと、ナスのごときビトーである。
食べてみると、フルーティーな甘さだ。
牛肉に果実の調味液を塗って、炙り焼きにしたもののようだ。
全体的に甘みの強い焼肉のタレのような風情で、とても美味しかった。
「お肉が美味しい」
「ん。とっても美味しい」
リリアは上機嫌である。
給仕が菓子を配膳した。
菓子は果実の団子汁だ。
汁は透明のようである。
団子の他に、各種の果実が切り分けられて沈んでいる。
オレンジのごときパーリー、桃のごときベッカ、さくらんぼのごときポリネシアと、イチゴのごときガル。
団子は食感が今ひとつで、味がないようだ。
透明の汁は砂糖のシロップで、とても甘い。
すくって食べると、美味しかった。
「美味しいね」
「ん。でも、白玉あんみつには敵わない」
「ありがとう。俺もそう思う」
俺達は微笑み合い、ゆっくり菓子を楽しんだ。
店を出て、30分程歩いて《竜の跳ね鳥亭》へ到着した。
「今日も仲間の皆さんにお土産を用意してるんだ。取ってくるから、少し待っていてね」
俺は急いでお土産を取り、戻ってきた。
「はい、今日はチョコバナナパイだよ。仲間にもよろしく」
「ん。ありがとう。すっごく喜ぶ」
「じゃあ、またね。リリア。大好きだよ」
「ん。またね、キョウスケ」
リリアが瞳を閉じて、俺はそっと口づけした。
しばし、抱き合う。
身体を離し、手を振る。
リリアは帰っていった。
俺は自室へ戻り、しばらくリリアのことを思い浮かべるのだった。
5月29日から6月6日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
5月29日は、徹夜した。
500個のレーズンバターサンドを作成したのである。
俺とアイロスは、そりゃあもう、頑張った。
5月30日に来たローガンに渡すと、大層ご機嫌に笑っていたものである。
6月に入り、雨期に入った。
毎日霧雨が降っており、気温も下がった。
俺は長袖のフード付きの服を新調した。
厚手の長ズボンも買って、黒銅貨2枚。
大体4000円位の価値になる。
古着でこのお値段なのだから、オーダーメイドはよほど値が張るのだろう。
6月7日。
何もない休日は、久しぶりである。
俺は城下町や市井の料理屋の刺激を受け、創作料理をこしらえてみた。
蜜漬けにしたアスパラガスのごときジェランの味が思ったより辛い味に合うので、遅くまで香草をこねくり回していた。
その内晩餐で出したい一品である。
菓子の材料で、生乾酪というものが手に入った。
クリームチーズのことである。
それで俺は、チーズケーキを焼いた。
生乾酪はレーズンバターサンドを作った時にも使用したが、使い勝手が良い。
様々な菓子に使えることだろう。
チーズケーキはプリムやジュレ、リーズヘッグ、アイロスに好評だった。
充実した心地を味わう事が出来た1日だった。




