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《まほろばの夢》のカレー

「ここが、《まほろばの夢》」


 小さめの店に入り、給仕に案内されて、手前のテーブルに着席する。


「献立にカレーがある! 肉料理は、適当に頼むね」


「うん。宜しくね」


「すいませーん! カレーを2つと、兎肉とダリヤの煮付けを2つ、お願いします!」


「かしこまりました」


 給仕はお茶を出して、下がっていく。


「《相良亭》に、先週も行ったんだけど、料理が美味しくてびっくりした。お客も結構いて、活気があったよ」


「それは良かった。きっと人気店になるね」


「ん。キョウスケは《相良亭》を救った。誇るべき」


「俺は料理帳を伝授しただけだよ。後は、ロイと奥方が頑張ったからさ」


 《相良亭》が盛り返すかは、ロイ次第だ。

 俺はその手伝いが出来て、良い勉強になった。


「お待たせ致しましたぁ」


 料理が届いた。

 カレーは、茶色をしている。

 俺はスープを飲んでみた。

 煮汁は、とても甘い。

 後は出汁がすごくきいている。

 ほとんどスープカレーのような仕上がりだが、薄いことは全くない。

 調和の取れた美味しさだ。

 具材は基本の3種を使用しているようだ。


「美味しいカレーだね」


「ん。甘くて美味しい。カレーは至高」


 リリアは上機嫌だ。

 次は、肉料理だ。

 茶色い煮汁に浸された肉とカブのごときダリヤである。

 俺はスープを味わってみた。

 清涼な香りが強く、濃厚な煮汁と合っている。

 カブのごときダリヤであるが、今ひとつである。

 少し火の通しすぎだ。

 肉は、文句のない美味しさだった。


「肉は柔らかくて美味しいね」


「ん。とても美味しい」


 リリアの笑顔が可愛い。

 ゆっくり食べて、お茶を飲んだ後は、店を出た。


「《銀の匙》へ行こう!」


「うん。とても楽しみだよ」


「《銀の匙》は、人気がある。宿でも名前を聞いた」


「へえ。そりゃあ楽しみだ。俺は次の機会にでも、《星くずの道》の菓子が食べたいな。菓子のコンテストで出した団子汁が食べてみたいんだ」


「団子に野菜が練り込まれているやつだよね。わたし達も大会を見ていたから、分かる。わかった、食べに行こう」


 俺達は雑談しながら、15分程歩いた。


「ここが、《銀の匙》。入ろう」


 店に入ると、給仕に案内されて、奥のテーブルに座った。

 お客も結構入っていて、盛況だ。


「献立を読み上げるね。ガル大福と、白玉あんみつと、きんつばと、草団子。それと、ジュピターのシフォンケーキと、スコーンと、ネレボロのゼリーの7種類があるみたい。1個半銭だし、2個頼んじゃおうかなあ」


「うん。俺も2つ頼むよ。ガル大福と、スコーンが良いな」


「えーっ、悩む! ジュピターのシフォンケーキと、白玉あんみつにする!」


 リリアは店員を呼んで、お茶と菓子を注文した。


「お店も結構混んでいるみたいだね」


「ん。菓子が楽しみ」


 リリアの笑顔に心が癒やされる。

 しばらく待つと、お茶と菓子が配膳された。


 まずはガル大福を食べてみる。

 イチゴのごときガルが丸ごと1個入った大福だ。

 餡子は粒あんで、甘さも丁度良い。

 イチゴのごときガルの酸味と餡子の甘さが引き立つ一品だ。


 次は、スコーンだ。

 ブルーベリーのごときペリルのジャムと、生クリームが添えられている。

 たっぷりジャムを塗って、スコーンを頬張る。

 焼き加減も丁度良いし、すごく美味しい。


「どっちも美味しかった。生クリームを添えられるのが甘味屋の強みだね」


「生クリームってこの白いやつ? すごくシフォンケーキに合う。白玉あんみつもすごく美味しい」


 リリアは満面の笑顔だ。

 俺はゆっくり菓子を味わった。


 店を出た後は、広場へ行く。

 椅子に座って、雑談を楽しむ。

 

「今日は何のおとぎ話にしようか」


「恋物語がいい」


「じゃあ、シンデレラを話そう。むかしむかし、あるところに美しい娘がいました……」


 リリアは俺のおとぎ話が気に入ったようで、話をせがむ。

 聞き終わると、夢見心地のようだった。


「シンデレラと王子様が幸せになって良かった」


 リリアは満足げに微笑んだ。

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