領主様と昼食会
5月15日から、5月20日までは、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
5月21日。
今日は領主様に菓子をお出しする日である。
午前10時前には、参加メンバーが勢揃いしていた。
リーズヘッグとカトリーヌ。
俺とリリア。
アイロスとリエル。
この6人だ。
午前10時の鐘が鳴った。
エミューの車が到着し、俺達も乗り込む。
リリアは緊張の面持ちだ。
「リリア、大丈夫かい?」
「ん。大丈夫」
そしてリリア以上に青くなっているのがリエルであった。
「わたしが、領主様にお会いするなんて……なんて恐れ多い。何か失敗しないか不安でいっぱいです」
「迷惑だったか?」
「とんでもない! アイロスと一緒にいられるので、呼んで貰えて光栄です」
「そうか。では、せいぜい昼食を楽しみにしていろ。俺はそうしている」
「はい。ありがとう、アイロス」
リエルは幸せそうに笑っていた。
半刻程で検問所に着き、エミューの車を乗り換える。
「俺、お城なんて初めてだ。騎士が守っているんだろう?」
「そうだ。紫の生地に金色の刺繍の制服を着ているらしい。城を守るのは、精鋭中の精鋭、第一騎士団だ」
「へえ。見られると良いね。俺は調理が間に合うか今から不安でたまらないよ」
「貴族は早朝から起きないそうだぞ。だから午前10時の迎えだったのかもな」
リーズヘッグとアイロスと話ながら車に揺られる。
20分程で城に到着した。
小姓の案内で城に入る。
お城はでかく、広かった。
「料理番の方は、1階になります」
「じゃあ、俺とアイロスは1階だね。カトリーヌ、リリアを頼むよ」
俺と同じように、アイロスがリエルを頼んでいた。
俺とアイロスは調理場に入り、手前の卓に案内された。
材料や型や器など、全て揃っている。
「じゃあ、アイロス。宜しくね」
「わかった。任せておけ」
頼もしいアイロスと共に、調理を始める。
時間がないけれど、作業は丁寧に進めていく。
俺達は調理に没頭し、気付けば小姓に呼ばれていた。
なんとか間に合った。
俺とアイロスは小姓についていく。
3階のある小部屋に案内された。
「お召し替えをお願い致します」
見ると、着替えの担当と思しき男性が待ちかまえている。
俺とアイロスは順番に着替えさせられることになった。
仕立ての良い無地の服を着て、4階に到着した。
ずらりと男女が並んでおり、リーズヘッグやリリアの顔も見える。
俺達はパートナーの隣に着席した。
午後12時の鐘が鳴った。
扉が開き、壮年の男性と女性が入室してくる。
二人は上座に着席した。
「皆の者、今日は集まって貰い、感謝する。市井にて行われた菓子のコンテストで優勝した《竜の跳ね鳥亭》の面々に菓子を作って貰った。わたしはこの領地の領主、エリック。隣は妻サラである。まずは城の料理番による昼食を楽しんで貰いたい。では、女神アウローシアの加護に!」
「乾杯!」
メイドが次々と前菜を配膳していく。
俺は酒を一口飲んでみた。
ペリルで割っているようだ。
ふと隣を見たら、リリアがドレス姿で驚いた。
首には、俺の贈ったアミュレットが輝いている。
「リリア、ドレス姿が似合っているね」
「ありがとう。着慣れないから、不思議な気分」
俺は配膳された皿をよく見てみる。
丸いビスケットに、具材が乗せられている。
小さいので一口で食すると、乳脂の風味と、思わぬ辛さが舌の上に跳ね上がる。
野菜は判別出来なかった。
「これは辛みが強いね」
「ん。食べやすい」
城下町の料理は普通、乳脂を使っている。
この調子で乳脂を使う料理が出されるとしたら、少しくどく感じてしまいそうだ。
野菜料理が配膳される。
皿には、ジャガイモのごときフォンディと思われる野菜に黒い煮汁がかけられていた。
口に入れると、煮汁が甘い。
乳脂の風味も濃厚である。
でも、食べやすさを感じた。
「これは食べやすいね」
「ん。美味しい」
リリアは瞳を輝かせている。
お次は、サフア料理だ。




