料理帳の伝授
リーズヘッグがカトリーヌに話しかける。
「俺はこのユーカン味が一番好きだ。カトリーヌはどうだ?」
「わたしは全て好きよ。選べないわ」
みんなの皿が空になった頃合いで、次のラーメンが届いた。
「こちらは、トーテムラーメンです。ごゆっくりお召し上がり下さい」
俺も期待をこめて食べてみる。
味噌のごときトーテムの風味が豊かで、とても美味しい。
「これも美味いじゃないか。ラーメンの煮汁は研究のしがいがありそうだ」
「とても美味しいです。この麺はパスタと比べて細いのですね」
エンリコとサリーが感想を言ってくれる。
「ラーメンの煮汁は研究のしがいがあるだろうね。細麺に仕上げているのがわかるなんて、サリーも目の付け所が鋭いね」
そして最後のラーメンが登場する。
「こちらは、ウルドゥラーメンです。ごゆっくりお召し上がり下さい」
辛さは、中辛程度である。
肉ダレと中華麺が混じり合って、とても美味しい。
「美味かった。俺はウルドゥラーメンが一番好きだ」
「わたしは、ユーカンラーメンが好きですわ」
「俺は、ユーカンラーメンが一番好きだよ」
エンリコとサリーは仕事に戻るようだ。
「またな。今度店に食べに行く」
「ご機嫌よう」
「うん。待っているよ」
二人が退室して、リーズヘッグとカトリーヌだけになる。
「サリーがいてくれて助かっているわ。エンリコもやるときはやるのよ」
「忙しそうだね、カトリーヌ」
「楽しんでいるから問題ないわ。中華麺は銀貨60枚で買うわ」
「ありがとう。ホルエン料理長には、焼きそばとあんかけ堅焼きそばも伝授したから、夜にでも食べてみてよ」
「わかったわ。リーズヘッグとは甘味屋の打ち合わせがしたいの。キョウスケは先に帰ってくれる?」
「わかった。じゃあ、先に戻るよ、リーズヘッグ」
「ああ。金は俺が持ち帰る。気を付けて帰れよ」
そうしてお役御免となった俺は、帰ってゆっくり過ごすのだった。
4月29日から5月6日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
《相良亭》の主人ロイに伝言屋を飛ばし、5月14日に料理帳を伝授することになった。
それと、リリアに会ったときに、逢い引きする日を決めることが出来た。
日程は、5月28日。
逢い引きの約束よりも、領主様に会うことが重荷のようで、緊張すると言っていた。
あと、耳の早いローガンに、菓子のコンテストの優勝を祝って貰えた。
ローガンもその菓子が食べたいと言っていたので、新しい甘味屋の宣伝をしておいた。
5月7日。
この日は、ウィルにトーテムラーメンの伝授をする日である。
午前9時に待ち合わせで、気合い十分のロイはやる気に燃えていた。
「そうだ、サフア屋がユーカンラーメンとウルドゥラーメンを売りに出すみたいだよ。勢いに乗って、ウィルのラーメンも売れると良いね」
「初めは100食で様子を見るさ。トーテムラーメンは売らねぇのかい?」
「ウィルに遠慮したみたいだね」
「そっか。金勘定してくれる相方も見つかったから、あとは俺が作り方を覚えるだけだ。キョウスケ、あんたには感謝してるぜ」
トーテムラーメンで昼食を取った俺達は、作り方のおさらいをしながら時間を過ごした。
午後5時には変化球の焼きそばで腹を満たし、お開きとなった。
料理帳の代金、銀貨30枚はしっかり貰った。
すぐにリーズヘッグに渡しに行った。
5月8日から5月13日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
5月14日。
今日は、《相良亭》の店主ロイに、料理帳を伝授する日である。
午前8時に集合した俺達は、一緒に朝食を取ってから、調理に取り掛かった。
ロイは奥方を連れて来ていた。
奥方は帳面を持参しており、作り方を書き留めるのだという。
教える料理は、3種類。
兎肉とナスのごときビトーのトーテム炒めと、兎肉のとんかつと、牛肉の果実酒煮込みである。
揚げ物は唐揚げと迷ったが、調味液に浸けるのが分かりづらいとのことだったので、とんかつにした。
「こないだ塩を控え目にした肉野菜炒めを教わったでしょう? それを食べたお客が美味しいって言ってくれてねぇ。プリンなんて大喜びさ」
「それは良かったですね」
「お客も少しずつ増えてるんだ。それが嬉しくってねぇ」
「お客に食べて貰えれば、また来て貰えると思うんですよね。ロイが頑張って来たから、今があるんですよ。さて、とんかつでお昼にしましょうか」
昼食を3人で食べて、一番手間のかかる牛肉の果実酒煮込みに着手する。
作業工程を全部書き写した奥方は、仰天していた。
「これから1時間も煮込むんですか。こんなに手のかかる料理は初めてですよ」
「出来上がったら試食しましょうね。きっと満足頂けると思います」
鍋を見守りながら、いくつかの副菜も伝授する。
やがて出来上がった、牛肉の果実酒煮込みの美味しさに2人は仰天し、満足してくれた。
料理帳3つの代金、銀貨90枚もしっかり貰った。
二人は晴れ晴れとした顔で、帰っていった。
長い1日が終わり、俺はゆっくり晩餐作りを楽しむのだった。




