菓子のコンテスト、開始
《相良亭》を出て、店まで歩く。
20分程歩いて《竜の跳ね鳥亭》へ到着した。
「今日もお土産を用意してるんだ。ちょっと待っていてね」
俺は速やかにお土産を持ち、戻ってきた。
「今日の菓子は、マドレーヌだよ。仲間の皆さんにもよろしくね」
「ん。すごく喜ぶ。ありがとう」
「じゃあ、またね」
リリアが瞳を閉じたので、俺は口づけをした。
「またね」
俺はリリアに手を振り、自室に戻るのだった。
4月15日から4月20日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
4月21日。
今日は、菓子のコンテストの日である。
決戦の日だ。
俺は早朝午前8時、早めに朝食を食べたリーズヘッグと共に、出発した。
焼き型や器、材料は持ち込みである。
荷物を二人で抱え、町民会館まで歩いた。
半刻程で、町民会館に到着した。
俺は入場時にゼッケンを配られた。
ゼッケンは6番と書いてあるそうだ。
6番目に菓子を提供するらしい。
調理場には、俺だけが入るとの事だ。
リーズヘッグは、控え室で待ち、他の店主と情報交換をするらしい。
「じゃあな。頑張れよ」
リーズヘッグに激励され、調理場へ入る。
俺は材料を広げて、早速ヨーデルの焙煎を始めた。
コンテストの開始は、午前10時からの筈だが、俺を含めて12人の料理番が揃っている。
俺は全力を尽くすと決めて、菓子の具材を作り上げていった。
俺の菓子は食べる直前に組み上げる必要があると言うと、順番が来るまでは、会場で料理番席に座る必要があると言われた。
俺は6番なので、5番が呼ばれたら作り始めれば良いだろう。
俺は余裕を持って作業を終える事が出来た。
町民会館は大きな建物である。
舞台中央に審査員席が6つあり、両側に12個ずつ、椅子が並べられている。
料理番は全員で12名なので、6名ずつ分かれて座るとのことだ。
俺はリーズヘッグの隣に座った。
「守備はどうだ?」
「バッチリさ。順番が来たら、最後の仕上げをするよ」
周りを見渡しても、店主と一緒に来ている料理番が多そうだった。
観客の入場が始まり、会場に熱気が生まれていく。
午前10時の鐘が鳴った。
菓子のコンテストの開始である。
審査員も6名全員着席している。
司会が出て来て、拡声器で喋り出した。
「お集まりの皆さん、お待たせ致しました! 只今より、菓子のコンテストを開催致します。参加するのは、12名の料理店です。優勝者には賞金と、領主様に菓子を提供する栄誉が与えられます!」
おおおお、と客席が騒ぐ。
そして、一軒ずつ、名前が呼ばれていく。
「6番、《竜の跳ね鳥亭》。店主リーズヘッグと料理番キョウスケ」
拍手に応えて、一礼する。
そして12軒の紹介が終わったら、次は審査員だ。
「菓子に詳しい重鎮、デッケン伯爵家のエリオル様、並びにイララギ子爵家のミッケル様、アクエル男爵家のリヒト様。町内会より、ジャバル様、アリエル様、エリーゼ様。以上6名が審査員でございます! 盛大な拍手をお願いいたします!」
壇上の6名が一礼して着席する。
「それでは、早速菓子の吟味を始めましょう! 1番、流星亭。お願いいたします!」
メイドが菓子を配膳する。
「それでは料理番より解説をお願いいたします!」
料理番に拡声器が渡される。
「固めに焼いたサフアの生地に、乾酪と果実で作った凝乳を挟みこみました」
「ふむ。噛むとほろりと崩れますな」
「鮮烈な甘さですね。乾酪の風味も強いですわ」
「しかし、珍しくない手法です。わたしは目新しい菓子を求めています」
司会がとりなすように声を上げる。
「では次に参りましょう。2番、大地亭。菓子の配膳をお願いいたします!」
メイドが順番に菓子を配膳していく。
「果実を砂糖で煮たものを団子で包みました。煮汁は野菜で作った煮汁です」
「ほう。野菜を使うのは珍しいですな」
「とっても甘い煮汁ですわ。団子も美味しいです」
「野菜の青臭さが調和を乱しています。美味とは言えません」
結構美味しそうだったのに、辛辣な言葉だ。
司会が声を上げる。
「では次、3番、アディオス。菓子の配膳をお願いいたします!」
メイドが順番に菓子を配膳していく。
コンテストは始まったばかりだ。
俺は気を引き締めて、続きを拝聴するのだった。




