《相良亭》でお節介
「お待たせ致しました」
菓子が届き、配膳される。
皿の上に乗った団子は大きめで、2つある。
色んな色が混じり合った見てくれをしている。
持ってみると、そこそこ重い。
かじってみると、シャリシャリとした歯ごたえに驚く。
これは色とりどりの飴を砕いて、団子に纏わせた菓子であるようだ。
中の具材は、リンゴのごときケイルのすりおろしの団子と、ブルーベリーのごときペリルの実が詰め込まれた団子であった。
どちらも甲乙つけがたく、とても美味しかった。
「美味しい団子だね。ケイルの団子が好きだな」
「わたしは両方好き。甘くて美味しい」
リリアは笑顔で団子を頬張っている。
それを微笑ましく思いながら、俺も団子をかじるのだった。
しばらく、雑談を楽しんだ後、俺はリリアに尋ねてみた。
「今夜はどこで食事を取ろうか?」
「ん。《相良亭》へ、行きたい。やっぱり心配。料理は美味しくないけど……」
「わかった。俺も待たせている手前、気にはなっていたんだよ。《相良亭》へ行こう」
リリアは、ぱっと顔を輝かせて、にっこり笑った。
「キョウスケは優しいね。大好き」
「こちらこそ、優しいリリアが大好きだよ」
俺達は店を出て、広場を目指した。
広場に着いたら、椅子に座って、雑談を楽しむ。
リリアはあまり親のことを話したがらないが、父親がギャンブルに染まる前までは、幸せに暮らしていたと教えてくれた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、午後5時の鐘が鳴る。
俺達は立ち上がり、《相良亭》へ向かった。
15分程歩いて、こじんまりしたお店に到着する。
中に入ると、俺達しか客がいなくて、驚いた。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
給仕の女性に促されて、奥のテーブル席に着席する。
「あの、店主はいますか? 俺は《竜の跳ね鳥亭》の料理番で、キョウスケと言います」
「今、呼んで参ります」
給仕は奥へ消えていき、店主が顔を出す。
「ああ、どうも。今日はうちに食べに来てくれたんですかい? お口に合うものを作れるとは思いませんが……」
「そこで、ご相談なんですが、俺を調理場に入れてみませんか? 基本の塩加減を覚えれば、きっと美味しく出来ます。料金もいりません。塩味の肉野菜炒めを作りましょう」
「そう簡単に出来ますかねぇ?」
「俺が見ていますので、ご安心下さい。カレーと塩味の肉野菜炒めを2つずつ、注文させて頂きますよ」
「わかりやした。では、宜しくお願いします。こっちへどうぞ」
「はい。リリア、ちょっと行ってくるね」
「ん。頑張ってね」
調理場は、思っていたより広かった。
「これが野菜です。ノーマとファンを切ってあります」
「十分です。では、鉄鍋にマオマオの油を熱して、兎肉を入れていきましょう」
手つきもスムーズだし、さすがの手際だ。
「色が変わってきたので、野菜を入れます。肉をひっくり返して、木べらで攪拌します」
「まだ塩は入れねぇんで?」
「具材に火が通ったら、塩と黒胡椒をひとつまみ、振りかけます。ひとつまみですよ。ええ、それ位で結構です」
「随分薄味ですねぇ」
「これで出来上がりです。味見をしてみましょう」
味見した肉野菜炒めは、文句なく美味しかった。
「どうでしょう?」
「随分味が変わりましたね。こりゃあびっくりだ」
「ちょっと薄味だけど、美味しいねえ、あんた。これならお客も満足するかもしれないねえ」
「ところで、お節介ついでに、牛の乳と砂糖とサフアはありますか?」
「へえ。ありますよ」
「そこに蒸し器がありますから、簡単な菓子もお教えしましょう」
「そりゃあ、ありがたいですが、料理は仕上がりましたぜ? お連れさんもお待ちでしょう」
「材料を混ぜて蒸すだけです。すぐに出来ますよ」
「じゃあ、お願いいたします」
俺はプリンの作り方を教えて、席に戻った。
すぐに料理が運ばれてくる。
「お待たせ、リリア。食べ終わったら、菓子もあるからね」
「ん。楽しみ」
俺達は一斉に食べ始めた。
カレーは基本を守って作られている。
肉野菜炒めも、美味しい。
「すごい。味が全然違う。すごく美味しい」
「そっか。良かったよ」
「仲間も心配してたから、きっと喜ぶ。キョウスケ、ありがとう」
「どういたしまして。料理帳を教えるのはこれからだけど、《相良亭》はきっと大丈夫さ」
俺達は雑談しながら、料理を食べ終えた。
すると、給仕の女性が、プリンを運んできた。
「このプリンってやつは美味しいねえ。これからも店で出していいのかい?」
「ええ。どんどん出しちゃって下さい。美味しい料理の後は、美味しい菓子が欲しくなりますからね」
プリンを食べてリリアも大喜びだ。
「とっても美味しい。毎日売るべき」
リリアはそう主張していた。




