《コキュートス》のカレー
4月7日。
この休日は、菓子の試作に費やした。
細かい分量を調整し、仕上がった菓子は、素晴らしい出来映えだった。
細工屋に頼んだ器と匙もぴったりで、俺はとても満足した。
菓子のコンテストに出す料理は出来上がった。
あとは、当日を待つばかりである。
4月8日から4月13日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
特筆することもなく、時間は過ぎ去っていった。
4月14日。
リリアとの逢い引きの日である。
午前11時の鐘が鳴り、リリアがやってきた。
「お待たせ、キョウスケ。行こうか」
「うん。今日も可愛いよ、リリア」
俺達は手をつなぎ、道を歩いた。
「あのね、《相良亭》の店主に会ったでしょ。わたしたちも心配で先週も食べに行ったの。キョウスケの料理を褒めていたよ」
「そっか。4月は予定が詰まってるんで、待って貰ってるんだ。俺さ、4月21日に開催される菓子のコンテストに出るんだよ。もし優勝したら、領主様にお会いするかもしれないんだ。だから、予定を空けておきたいんだよ」
「菓子のコンテストって、町民会館でやるやつでしょう? 仲間と見に行くよ! 4月21日だね。わかった!」
「だから、逢い引きの予定も立てられないんだ。本当にごめんね」
「良いよ、大丈夫。キョウスケはきっと、優勝する。領主様にお会いするなんて、凄いねぇ」
「精一杯頑張るよ。機会があれば、リリアにも食べて貰いたいな」
「うん。嬉しい。楽しみにしてるね」
リリアの笑顔が眩しい。
本当に、良い子だよなぁ。
「到着! ここが、《コキュートス》」
「へえ、結構大きな店だねえ」
俺達は店に入り、給仕に案内されて、テーブル席に座った。
「献立にカレーがあるよ。肉料理は、揚げ物で良いかな?」
「うん。宜しくね」
「すいませーん! カレーを2つと、兎肉とディラーの揚げ焼きを2つ、お願いします!」
「かしこまりました」
給仕がお茶を置いて、下がっていく。
「どんな料理か楽しみだね」
「ん。美味しいといいな」
お茶を飲んで喉を潤す。
リリアは瞳を輝かせている。
「そうだ。カトリーヌがね、リーズヘッグに甘味屋をねだってたんだ。誕生日の祝いの品として、甘味屋が欲しいってね。うまくいくと、俺の味の甘味屋が今年中に出来上がるよ」
「えーっ! 絶対行く! 《銀の匙》は今、改装中なんだよね」
「へえ。そうなんだね。俺も開店したら、一度は行きたいかな」
「5月1日に開店するって聞いたから、来月に行こうね。うーん、楽しみだなぁ」
リリアが笑顔なので、こっちも嬉しい気持ちになる。
「お待たせ致しました」
料理が届き、配膳される。
カレーは普通の色合いだったので、安心して食べさせて頂いた。
カレーをすくって食べると、細かく刻まれた野菜が口に入った。
お肉はゴロゴロ入っており、大きめだ。
野菜は基本の3種に加え、キャベツのごときノーマ、ホウレンソウのごときテーペが刻まれている。
辛さは中辛程度で、食べやすい。
「カレーが美味しいね」
「ん。具材が刻まれていても、カレーは美味しい」
次は肉料理だ。
兎肉とパプリカのごときディラーが揚げ焼きにされた料理だ。
肉は少し黒胡椒がききすぎている。
パプリカのごときディラーは、甘くて美味しい。
「肉料理は、もう少し黒胡椒を控えると美味しそうだ」
「なるほど。こういう味付け、結構ある」
「そうなんだね。巷の人達は、これが美味しいんだね」
「わからない。他を知らないだけかもしれない」
まあ、問題なく完食できる味わいだ。
俺はカレーと共に、肉料理を食べた。
食後に店を出ると、リリアが宣言した。
「甘味屋へ行く!」
「うん、行こうか。今日はどんな菓子に出会えるか楽しみだよ」
俺達は手をつないで、ゆっくり歩いた。
20分程歩いて、大きなお店に到着した。
「ここは、《星くずの道》」
俺達は店に入り、給仕に案内されて、テーブル席に座った。
「わたしのおすすめで良い?」
「うん。宜しくね」
「すいませーん! お茶を2つと、星くずの団子を2つ、お願いします!」
給仕はすぐにお茶を持ってきてくれた。
「ここの菓子は、菓子のコンテストで優勝した事があるの。今回も参加するかもね」
「へえ。有名なお店なんだね」
「団子が有名なの。品数も豊富」
リリアの瞳の輝き具合からして、きっと美味しいんだろう。
俺も目いっぱい期待させて頂く事にした。




