《相良亭》の店主
次のテーブルには、リーズヘッグとカトリーヌ、プリムとジュレが座っている。
「やあ、リーズヘッグ。ラーメンのお味はどうだったかな?」
「美味かった。ユーカンの味が一番好きだ」
カトリーヌは何やら思案顔である。
「時間が出来たらサフア屋に売りに来なさい。このコシのある麺は、買うべきだとわたしの勘が告げているの。高値で買い取ってあげるわ」
「フランスパンで忙しいのに、ありがとうございます。じゃあ、4月28日にお伺いするよ」
プリムとジュレは、瞳を輝かせている。
「もうね、すっごく美味しかった! トーテムの味が1番好き!」
「ぼ、僕は辛いラーメンが気に入りました。でも、全部美味しかったです」
「ありがとう。苦労した甲斐があるよ」
お次のテーブルは、ファナとユーゴ、アディス、リエルと仕事を終えたアイロスだ。
「ラーメンっていう料理、全部美味しかったよ! 1つは選べないなぁ」
「どれも美味で驚きました。全て美味しかったです」
ファナとユーゴが、感想を述べた。
「俺も全て、美味しかったですねぇ。ユーカンのラーメンが好きでした」
アディスが、そう感想を述べた。
「意外と繊細な料理だな。俺はウルドゥのラーメンが1番口に合った」
「どれも素晴らしく美味しかったです!」
アイロスとリエルが、そう感想を述べた。
俺はウィルのテーブルに戻った。
「やあ、ウィル。考えはまとまったかい?」
「2番目に食べたラーメンにする。料理帳を売ってくれ!」
「トーテムラーメンだね。ただ、4月は予定がいっぱいなんだ。5月の7日まで、待てるかい?」
「良いぜ。俺も露店について、調べておく。調理場を貸し出している場所も目星がついてるんだ。あとは、店番を頼める人間を探すよ」
「うん。わかった。じゃあ、5月7日に、また会おう」
これでウィルのお悩みも一段落だ。
俺はリーズヘッグの元へ、解散を伝えようと思い、足を運んだ。
「どうしてもか?」
「ええ、どうしても欲しいの!」
「リーズヘッグとカトリーヌ、どうしたんだい?」
「カトリーヌが、誕生日の祝いの品として、甘味屋を希望してきてな」
「サフア屋としてではなく、あなたの未来の嫁として、どうしてもやりたいの! 人材と店はわたしが用意するわ! あとはキョウスケが料理帳を伝授すればいいようにしておくから!l
「お話はわかりました。甘味屋が欲しい理由でもあるんですか?」
「キョウスケは菓子のコンテストに参加するんでしょう? 優勝するに決まっているもの」
「それはまだわかりませんが……」
「キョウスケの菓子を食べれる場所がないのよ! これは由々しき問題よ。リーズヘッグだって、いつかは甘味屋を作る気だったでしょう。ねえ、良いでしょう?」
「あくまで、俺の店というわけなんだな?」
「勿論よ。わたしのお願いを聞いて頂戴、リーズヘッグ」
「では、菓子のコンテストで、キョウスケが優勝したら、店を作ろう」
「嬉しい! 店の場所は西地区にしましょう。ダンジョンが近いから、人通りが多いわ」
「土地代が高いだろう」
「わたしが出資するわ。ああ、楽しみよ。良い場所を買わなくっちゃ!」
まだ優勝してないのに、物凄い喜びようである。
「とにかく、ウィルは料理帳を買うことに決めたよ。一度お開きにすべきだと思うんだけど、どうかな?」
リーズヘッグは立ち上がり、店の中央へ歩み出た。
「今日の試食会はお開きとする! 今日はご苦労だった。みんな、気をつけて帰ってくれ」
俺はリリアに一声かけておくことにした。
「リリアもお疲れ様。気をつけて帰ってね」
「ん。これから、甘味屋へ行く。またね、キョウスケ」
俺はリリア達を見送り、調理場に入った。
俺はまだ昼食を食べていないのである。
自分の為に麺を茹でながら、俺はウィルの露店が成功するように、祈るのだった。
3月29日から4月6日まで、平穏に営業する事が出来た。
露店も全て売り切っており、順調である。
ダビとルルイエ、リリアと仲間達、ローガン率いる騎士達などの常連も、食べに来てくれた。
ある日、リーズヘッグに呼ばれてお客さんに挨拶をすると、それは《相良亭》の店主だった。
店が潰れそうで、料理帳を買うかもしれないという話であるはずだった。
「初めまして、《相良亭》の店主のロイと申します。この1週間、通わせて頂きました。あなたの腕は本物だ。俺もここの料理を美味いと思います。知り合いの財宝漁りに言われて始めたカレーは凄い人気なんです。あとは肉料理を何とかしたい。どうかお助け下さいますか?」
「頭を上げて下さい。料理帳を買われるのであれば、じっくりお教え致します。ただ、予定が詰まってまして、5月までお待ち頂けますか?」
「ずっと待ちます。どうか宜しくお願い致します。この店は菓子も美味くて、羨ましいです。では、また5月にお伺いします」
「宜しくお願いします」
《相良亭》の店主ロイは、会計をして帰っていった。
5月の予定は、まだ決められない。
菓子のコンテストで、優勝するつもりだからだ。
領主様にお会いする日程を空けておくべきだろう。
俺は予定でいっぱいの4月を、思い悩むのだった。




