誕生日祝いの晩餐
「もし、俺の料理帳を買うっていうのなら、まずは俺の料理を美味しいと思うかどうか、確認するべきだね」
「ん。そうだね。わかった。そう伝える」
「《竜の跳ね鳥亭》へ来てくれるようなら、俺を呼んで欲しいと伝えてくれるかい? 一度話してみたいんだ」
「わかった。伝えておく。潰れそうなお店の名前は、《相良亭》という。店主は男性」
「わかった。覚えておくよ」
それからも雑談を楽しみ、あっという間に時間が過ぎた。
午後3時の鐘が鳴ったので、帰り支度をする。
「調理に時間を貰いたいから、《竜の跳ね鳥亭》へ戻っていいかな?」
「うん。勿論だよ」
俺達は手をつないで、ゆっくり歩いた。
20分程歩いて、《竜の跳ね鳥亭》へ帰ってきた。
俺は調理場に入り、リリアはカウンターに座る。
俺達はお喋りを楽しみながら、調理を進めていった。
午後5時の鐘が鳴った。
晩餐の開始である。
「リリア、お酒も飲む?」
「飲む!」
「わかった。今日はペリルで割っているよ」
俺はお茶とお酒をまず、配膳した。
その次に、前菜の皿を配膳する。
俺も酒杯を持って、お祝いの言葉を述べる。
「リリアの19歳の誕生日を祝って。女神アウローシアの加護に!」
「乾杯!」
「前菜は兎肉とビトーの肉まんだよ。美味しい包子を作るって、約束したからね」
俺も肉まんを食べ始める。
ふわふわの生地をかじると、兎肉とナスのごときビトーが、醤油のごときユーカンと赤唐辛子のごときチコの実で味付けしたものが顔を出す。
辛さは、結構辛い。
「辛みを強めにして作ってみたんだ。お味はどうだい?」
「ものすごく美味しい。わたし好みの味」
「そっか。嬉しいよ」
二人の皿が空いたら、野菜料理だ。
「野菜料理は、ジェランとセルルのエビチリだよ。ゆっくり召し上がれ」
アスパラガスのごときジェランと、ブロッコリーのごときセルルを入れたエビチリである。
こちらも辛みは強めだ。
俺も美味しく食べながら、リリアの様子を窺う。
「とっても美味しい。この煮汁が好き」
「チリソースがお気に召したかな。じゃあ、次の料理はどうだろうね」
俺は調理場に戻り、パスタを茹で上げた。
仕上げをして、サフア料理を配膳する。
「お待たせ。サフア料理は、イノッサとウルドゥのパスタだよ。ごゆっくりどうぞ」
パスタは、トマトのごときイノッサと、豆板醤のごときウルドゥで真っ赤だ。
具材は、ベーコンとナスのごときビトーとアスパラガスのごときジェランである。
辛みは強めだが、多めに振りかけた乾酪と混じり合い、深みを演出している。
俺にとっては、美味いと思えるパスタだ。
「辛い料理が続いちゃったけど、大丈夫かい?」
「ん。とっても美味しい。これ位辛い料理がとても好き」
「お口に合って嬉しいよ。じゃあ、次の料理を持ってくるね」
俺は汁物料理を盛り付け、二人分、配膳した。
「汁物料理は辛口カレーだよ。どうぞごゆっくり」
カレーの具材は、基本の3種に加えて、ナスのごときビトー、アスパラガスのごときジェラン、ホウレンソウのごときテーペも加えている。
辛さは、辛口だ。
「ものすごく美味しい。具材も煮汁も、とっても美味しい。カレーは至高」
「喜んで貰えて、嬉しいよ。じゃあ、次の料理を持ってくるね」
俺は調理場に戻り、肉料理を盛り付けた。
素早く戻り、二人分、配膳する。
「肉料理は、デミグラスソースの煮込みハンバーグだよ。ごゆっくりどうぞ」
俺の渾身のデミグラスソースで煮込んだハンバーグ。
それが、俺の選んだ主菜であった。
肉を噛むとほろほろと崩れる。
肉の旨みとデミグラスソースの濃厚さが、素晴らしい調和を成している。
付け合わせのサラダも、さっぱりして美味しい。
リリアは全て食べきってから、口を開いた。
「すっごく美味しかった。キョウスケは天才だと思う」
「俺は凡才だよ。辛い料理が良いかな、とも考えたんだけど、今夜は煮込みハンバーグにしたよ。気に入って貰えたかな?」
「勿論、気に入った。お店で出してない味?」
「うん。まずはリリアに食べて欲しくてね。今後は店でも出すかもしれない」
「すごく喜ばれるよ。すごく美味しいから!」
リリアは無邪気に笑って、俺の心を満たしてくれた。
「最後に、菓子だよ。メリボーのゼリー。ごゆっくりどうぞ」
マンゴーのごときメリボーのゼリーは、濃厚で甘く、さっぱり食べられる。
ミキサーが大活躍した一品である。
「すっごく美味しい。6種の料理、全部美味しかった。最高だった」
「お口に合ったなら嬉しいよ。じゃあ、ちょっと待っていてね」
俺は調理場に置いておいた贈り物を、そっと手に取り、戻ってきた。
「婚約の証に、これを贈るよ。19歳の誕生日、おめでとう」
「えっ、贈り物……?」
「うん。開けてみておくれよ」
リリアは、震える指でリボンをほどいた。




